『原作小説』美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!
87『軍内疑心暗鬼計画ぅ!』
ゾライヤ帝国の遠征軍の内部、下級の兵士たちの間で交わされる話、それは決して上層部へは漏らさない事が暗黙の了解になっていた。
いくら自分達が貴族や皇族にとってとるに足らない消耗品だったとしても理不尽な扱いを受ければ鬱憤は溜まるもので日々の不満は下級の兵士達の中で噂と言う娯楽が広がる。
アラン様は不平不満の中から改善出来るものは改善してくれていたので、次第に皆もダメもとで相談を持ちかけるようになっていった。
「おい、聞いたか? イーサン殿下が本国へ帰るって話」
「あぁ、あれだろう。 皇太子殿下と陛下が不自然に相次いで亡くなったってやつだろ?」
「そうそう! んでなそれがアラン様のせいだって言って拘束しちまったんだとよ」
「おめぇ、あのアラン様がそんなことできるかよ。 イーサン殿下じゃあるめぇし」
「アラン様がいなくなったらまた死ぬまで空腹と泥水生活か?」
「あぁ!? またあの生活をしろってか! 冗談じゃねぇぞ!」
「しっ! 声がでかいって!」
そこここで交わされる話は人を介す度に歪にねじ曲がり、噂の的が兵士達に長らく苦役を強いてきた悪名高い第二皇子なら尚更だった。
軍の下級兵士は先のフレアルージュ王国との戦いで碌な策もなく、イーサン殿下の命令で盾代わりに散っていった仲間達を知っているし、アラン殿下が従軍される前の悲惨としか言いようがない遠征を経験済だった。
満足な食事も与えられず、怪我をすればまた打ち捨てられるだろう恐怖は、一度解放されたからこそ膨れ上がり根深く浸透していくと言う負の連鎖!
うっし、完璧。 ノアさんの流した情報が良い感じで軍内部に尾ひれ付で出回った結果、見事にイーサン殿下に対して兵士達が疑心暗鬼になってますねぇ。
しかもアラン様を救出した日に大規模な火災があり何名もの死傷者が出たようで、普段ならアラン様が陣頭指揮をとるため大事には至らないんですが、酔っ払い集団が期待通り見事に杜撰な対応をしてくれました。
しかし死傷者がでるような火災って一体ディオンは何をしたんだろう。
「おい! 囚人は居たか!?」
「どこにもいません!」
「早く捜し出せ! 監視のものは一体何をしていたんだ!」
眼前で唾を飛ばす勢いで、イーサン殿下の私兵が血眼になって消えた囚人を探してます。
アバヤを纏って静々と軍内部の情報収集をしていたら、胸元に腕を回されるようにして物陰に引きずり込まれた。
「お嬢……何してんのこんなところで」
疲れた顔をしたディオンが咎めるようにして私を見詰めてくる。
「ディオンお疲れ様! ソルティス兄様と連絡取れた?」
アラン様が目を覚ました事もあり、今後私達だけでは心許ないため、ディオンにはすぐに近くまで来ているだろうソルティス兄様に繋ぎをとってもらうことにして、私は水汲みがてらに軍の内部にノアさんの流した噂が、きちんと定着しているか偵察に来ています。
そう、偵察です! て・い・さ・つ! 誰だ今迷子だって思ったのは!?
「えぇ、取れましたよ。 取れましたけど、なんで勝手にフラフラ出歩いてるんですか!?」
「えっ、偵察よ。 水汲みがてら」
「水汲みがてらですか……、水汲みに出たら帰れなくなって聞き耳を立てながらフラフラ歩き回っていた迷子ですよね。 絶対!」
なぜに言い切れる!? ちょっと、ちょっとだけ寄り道をしていただけだもの。
「そっ、そんなことより兄様よ。 元気だった?」
ソルティス兄様なら私の居場所がわかり次第自ら乗り込んでくるかと思っていたけど、ディオンの後ろには居ないみたい。
「お元気ですよ。 ゾライヤ軍に戻るのに一緒に付いてくるって聞かなくて、若を宥めるの大変だったんですから」
ちなみに若って言うのがソルティス兄様を指してます。
いつからそうなったのかわからないけど、気が付けばなぜかダスティア公爵家の影さん方がロベルト父様をボス、長男ソルティス兄様が若、次男ソレイユ兄様をボン、ドラグーン王国に嫁いだ長女のアリーシャ姉様をアネサン、私がお嬢で定着してました。
あんまり気にしてなかったけどさ、ここが乙女ゲームの世界に類似してるって気が付いた今なら分かる。
何故にその名称を持ってきた!? と言うよりも一体誰が持ち込んだの!? もしやどこかに転生者が居るのでは?
言っときますがうちは公爵家で影さんも雇ってるけど、由緒正しい堅気の人間ですよ。
「お疲れ様。 それで兄様はなんて?」
「『袋はきっちり閉めて置くから、思いっきり遊んでやれ』って」
ディオンが兄様の言葉を復唱してくれた。 うん、兄様がにっこり微笑みながら父様顔負けの黒いオーラ飛ばしてるのが目に見えるようですわね。 おほほほほっ!
劣悪な労働環境を強いてくれた私怨!ここできっちり倍にして返しておかなきゃね。 うふっ!
私の満面の笑みを見たディオンが失礼にも逃げをうつ
「……リアル般若がでた……」
なにおう! 二本角も無ければ口も裂けてないわ!
あれ? この世界に般若なんて鬼女が出てくる話あったっけ?
いくら自分達が貴族や皇族にとってとるに足らない消耗品だったとしても理不尽な扱いを受ければ鬱憤は溜まるもので日々の不満は下級の兵士達の中で噂と言う娯楽が広がる。
アラン様は不平不満の中から改善出来るものは改善してくれていたので、次第に皆もダメもとで相談を持ちかけるようになっていった。
「おい、聞いたか? イーサン殿下が本国へ帰るって話」
「あぁ、あれだろう。 皇太子殿下と陛下が不自然に相次いで亡くなったってやつだろ?」
「そうそう! んでなそれがアラン様のせいだって言って拘束しちまったんだとよ」
「おめぇ、あのアラン様がそんなことできるかよ。 イーサン殿下じゃあるめぇし」
「アラン様がいなくなったらまた死ぬまで空腹と泥水生活か?」
「あぁ!? またあの生活をしろってか! 冗談じゃねぇぞ!」
「しっ! 声がでかいって!」
そこここで交わされる話は人を介す度に歪にねじ曲がり、噂の的が兵士達に長らく苦役を強いてきた悪名高い第二皇子なら尚更だった。
軍の下級兵士は先のフレアルージュ王国との戦いで碌な策もなく、イーサン殿下の命令で盾代わりに散っていった仲間達を知っているし、アラン殿下が従軍される前の悲惨としか言いようがない遠征を経験済だった。
満足な食事も与えられず、怪我をすればまた打ち捨てられるだろう恐怖は、一度解放されたからこそ膨れ上がり根深く浸透していくと言う負の連鎖!
うっし、完璧。 ノアさんの流した情報が良い感じで軍内部に尾ひれ付で出回った結果、見事にイーサン殿下に対して兵士達が疑心暗鬼になってますねぇ。
しかもアラン様を救出した日に大規模な火災があり何名もの死傷者が出たようで、普段ならアラン様が陣頭指揮をとるため大事には至らないんですが、酔っ払い集団が期待通り見事に杜撰な対応をしてくれました。
しかし死傷者がでるような火災って一体ディオンは何をしたんだろう。
「おい! 囚人は居たか!?」
「どこにもいません!」
「早く捜し出せ! 監視のものは一体何をしていたんだ!」
眼前で唾を飛ばす勢いで、イーサン殿下の私兵が血眼になって消えた囚人を探してます。
アバヤを纏って静々と軍内部の情報収集をしていたら、胸元に腕を回されるようにして物陰に引きずり込まれた。
「お嬢……何してんのこんなところで」
疲れた顔をしたディオンが咎めるようにして私を見詰めてくる。
「ディオンお疲れ様! ソルティス兄様と連絡取れた?」
アラン様が目を覚ました事もあり、今後私達だけでは心許ないため、ディオンにはすぐに近くまで来ているだろうソルティス兄様に繋ぎをとってもらうことにして、私は水汲みがてらに軍の内部にノアさんの流した噂が、きちんと定着しているか偵察に来ています。
そう、偵察です! て・い・さ・つ! 誰だ今迷子だって思ったのは!?
「えぇ、取れましたよ。 取れましたけど、なんで勝手にフラフラ出歩いてるんですか!?」
「えっ、偵察よ。 水汲みがてら」
「水汲みがてらですか……、水汲みに出たら帰れなくなって聞き耳を立てながらフラフラ歩き回っていた迷子ですよね。 絶対!」
なぜに言い切れる!? ちょっと、ちょっとだけ寄り道をしていただけだもの。
「そっ、そんなことより兄様よ。 元気だった?」
ソルティス兄様なら私の居場所がわかり次第自ら乗り込んでくるかと思っていたけど、ディオンの後ろには居ないみたい。
「お元気ですよ。 ゾライヤ軍に戻るのに一緒に付いてくるって聞かなくて、若を宥めるの大変だったんですから」
ちなみに若って言うのがソルティス兄様を指してます。
いつからそうなったのかわからないけど、気が付けばなぜかダスティア公爵家の影さん方がロベルト父様をボス、長男ソルティス兄様が若、次男ソレイユ兄様をボン、ドラグーン王国に嫁いだ長女のアリーシャ姉様をアネサン、私がお嬢で定着してました。
あんまり気にしてなかったけどさ、ここが乙女ゲームの世界に類似してるって気が付いた今なら分かる。
何故にその名称を持ってきた!? と言うよりも一体誰が持ち込んだの!? もしやどこかに転生者が居るのでは?
言っときますがうちは公爵家で影さんも雇ってるけど、由緒正しい堅気の人間ですよ。
「お疲れ様。 それで兄様はなんて?」
「『袋はきっちり閉めて置くから、思いっきり遊んでやれ』って」
ディオンが兄様の言葉を復唱してくれた。 うん、兄様がにっこり微笑みながら父様顔負けの黒いオーラ飛ばしてるのが目に見えるようですわね。 おほほほほっ!
劣悪な労働環境を強いてくれた私怨!ここできっちり倍にして返しておかなきゃね。 うふっ!
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