『原作小説』美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!

紅葉ももな(くれはももな)

85『はいはい、そう言う事にしといてあげよう』

 アラン様の手当てをディオンに任せて、そろそろ終わったかなと戻ってみれば、濡れ場でした。


 ディオンを押し倒すようにしてその唇を奪うアラン様を目にしたとき、おぉ! リアルBLじゃんと一瞬ガン見してしまった。


 衆道と言う文化はどこにでもあるし、好きになる対象の性別や年齢、好みは千差万別。


 ディオンは女性らしいナイスバディーな女性が好きなはずだから、アラン様はかなり頑張らない落とせないだろう。


 しかしこれでアラン様の男色は確定だわ。 やっぱりあのキスは嫌がらせだったのね! ぐぬぬぬ、あんにゃろう嫌がらせに人のファーストキスを奪いやがって。


 うほん、やがってではございませんね。 すっかり口が悪くなってしまいましたわ。


 嬉々としてノアさんとゾロさんに目撃した内容を話せば、ノアさんは笑顔で聞いてくれました。


 気持ち笑顔が黒っぽい気もするけど、これから衆道という辛く険しい道のり歩む二人の行く末を私と一緒に応援してくれるそうな。


 取り合えず父様かソルティス兄様に相談してディオンがアラン様の側にいられる時間を増やしてあげよう!


 私とノアさんのやり取りにゾロさんは頭を抱えているけど放置しよう。


 ゾライヤ帝国の帝位継承はあのイーサン殿下かアラン様しかいない以上私はアラン様を推すし、多分父様もアラン様を皇帝に推すでしょう。


 なら帝位に付くまでは護衛は必要よね! ダスティア公爵家と国王陛下にお願いしてアラン様の即位にご助力を願おう。


 ディオンは腕もいいから人選的にも問題なし、全力で二人の距離が埋まるように根回ししよう。


 ここまでお膳立て出来ればあとはアラン様の甲斐性次第よ。


「お嬢!」


「あらお帰りなさい。 早かったわね。 もっと愛を育んで来てよかったのに」 


「愛なんて育んでないし! お嬢、マジでやめて、鳥肌と冷や汗が大変なことになってんだから!」


 天幕に駆け込んできたディオンは私の前までやって来ると捲し立てた。


 そんなに照れなくてもいいのにぃ。心配しなくてもちゃんと全力で応援するわよ、わたし。
  
「ディオンは照れ屋ね? まあ、いやよいやよも好きのうちって言うし?」


「好きじゃない! 俺は女の子が好きなの!」


 はいはい、そう言う事にしといてあげよう。 


「ところでアラン様はどうしたの?」


「うっ、俺返り討ちにしちゃった。 どうしよう、もしかして不敬罪で俺始末される?」


 自分のやったことに気がついたのか顔を青くして、うちひしがれるディオンの様子にゾロさんが慰めに入った。


「大丈夫だ、きっと皇子も忘れたがっているはずだからな」


「えっ、そうなの?」


「当たり前だ! 誰が好き好んで衆道だと誤解を招くような醜聞を流すんだよ」


「えっ、アラン様が男性が好きなのは周知の事実でしょ? 今更じゃない?」


 私だってさんざん男妾だと言われて過ごしてきたんだから。


 お陰で女だと露見せずにすんだのには感謝するけど。


「はぁ、これはあれだな。 完全にアラン殿下の自業自得だ。 ディオン、安心しろ。 アラン様はお前を不敬には問わないだろうからな」 


「……言質は取りましたからね」


 ゾロさんを睨みながら今だに立ち直れないでいるディオンを放置してこれからの事に意識を向けた。


 ゾライヤ帝国とフレアルージュ、ローズウェル両国との戦争はまだ続いている。


 ゾライヤ帝国の遠征軍は帝位継承争いでほぼ瓦解している今、戦争を続けるにしろ停戦に持ち込むにしろ軍を速やかに纏める人材が必須になってくる。


 上が早急に対処すべき事柄、これまではアラン様がほぼすべてやって来た事柄を、アラン様を排除した為に本来在るべき流れが瓦解した。


 今攻めれば確実に軍は統率を失い少なくない被害が出る。


 ソルティス兄様が近くまで来ているはずだし、なんとかイーサン殿下の部下だけを排除できないかしら。


 はぁ、なんか色々考えすぎて頭が痛くなってきた! よし、寝よ。



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