『原作小説』美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!

紅葉ももな(くれはももな)

79閑話『薔薇保護親衛隊隊長は見た! 悪役令嬢は……』

 私の名前はマーサ、サンセット侯爵家の長女です。


 婚約者の暴挙から団結し自分達の身を護る薔薇保護親衛隊の隊長を勤めさせていただいております。


 軍閥で有名なクワトロ侯爵家の長男イザーク・クワトロの婚約者をしておりましたが、イザーク様がマリアンヌ嬢へフラフラと行ってしまいましたのでこの度、脳筋バカより解放された上で歳上の魅力的な殿方を紹介していただきました。


 数ヵ月前にローズウェル王国第三王子ルーベンス殿下と名立たる名家の御子息を巻き込んだマリアンヌ・カルハレス準男爵令嬢への度重なる苛めを敢行したとしてご自分の婚約者であるクリスティーナ・スラープ伯爵令嬢を断罪する騒動がありました。


 その後ルーベンス殿下が突如留学されたのを皮切りに何名もの生徒が学園から姿を消しました。


 退学者の中には学力試験で成績が著しく低い者や、賄賂を渡して不正を犯したものもありますが、やはり初めに学院から出られた五名は社交界の話題を拐いました。


 まず一人目はもちろんルーベンス殿下。


 行き先は公表されることなく、噂好きな御婦人の間ではお亡くなりになったのではないかとまで影で噂されております。


 二人目はルーベンス殿下の婚約者クリスティーナ様。


 ルーベンス殿下及び私たちの婚約者様たちで結成されたマリアンヌ嬢の取り巻き達によって断罪と言う晒し者にされた一件は、リシャーナ様を筆頭に事実確認とこうなることを予期して互いに自衛を行ってきた薔薇保護親衛隊の証言もあり、冤罪だった事が正式に発表されました。


 国王陛下より希望があれば婚約を取り下げ、新たな結婚相手を保証するとまで仰られましたが、クリスティーナ様は破棄を望まれず、ルーベンス殿下を支えるべく留学に同行されたとの噂が広がり、断罪があったことなど忘れ去る勢いで近年まれにみる純愛だと話題になっておりました。


 そして我らが薔薇保護親衛隊の盟主である公爵令嬢のリシャーナ・ダスティア様と、カイザール・クラリアス伯爵子息はそんなお二人の支えとなるために同行されたとのこと。


 忠臣の鏡ですわ。


 それから暫くしてマリアンヌ嬢が謎の失踪したことでマリアンヌ嬢の取り巻き達が王都内を自ら徘徊し捜索に当たったそうです。


 権力や財力を使って捜索することもできたのでしょうが、噂ではそれぞれのご実家が許さなかったとか。


 今も何名かがマリアンヌ嬢を捜し続けておりますが、当時取り巻きだった令息のほとんどがご自分の婚約者に謝罪をし、許しを経て今では真面目に勉学に励まれております。


 もちろん余所見をした婚約者を見限り、リシャーナ様の御兄様であるソルティス様の一押しの将来性の高い実力派騎士様に乗り換えたご令嬢もいましたが、それぞれが幸せそうなので問題ありませんね。


 さてこの度クリスティーナ様が学院へ復帰なさいました。


 隣国のフレアルージュ王国がゾライヤ帝国と開戦となり、ルーベンス殿下がフレアルージュ王国へ援軍を率いて向かわれたとのこと。


 学院からもフレアルージュ王国と領地を接する子息の数名が遠征のため休学されたようですから事実なのでしょう。


 クリスティーナ様は学院へ戻られてから、随分と窶れ勉学にも身が入らないご様子。


「クリスティーナ様……少し御休みになられた方が……」


「心配をかけて御免なさい。 でも私にはあの方のご無事を祈ることしかできないから……」


 いまにも倒れそうなご様子でそのように話される姿は痛々しくクリスティーナ様のお身体が心配でなりません。


 今日も学院内の聖堂で我が国の国教である双太陽神教主神、姫神と王子神を模した神像を前に絶えず祈りを捧げておいでです。


 ちなみに双太陽神教とは世界を創った神様がお姫様と王子様の双子神にこの世界の統治をたくし治めていたが、地上におりた姫神が人と恋に落ち子を授かるが、双子の王子神に地上に降りることを禁じられてしまいます。


 ただ神の国に住むことが出来ない半神半人の子供を地上に残して全く会えなくなってしまうのは可哀想だと感じた王子神は、年に一度だけ親子で過ごす事を赦したそうです。


 常に出ている太陽が生者の国を統治する王子神、しかし年に一度だけ七日間のみ死者の国を統治する姫神がかわりに登り我が子の亡くなった子孫を迎えに来るそうです。


 又、死後の世界では生者の世界での行いによって待遇が違うという宗教。


 姫神が登る季節は神が地上に降りる為、その年の善行と悪行で持って次の年の豊穣や幸福、災厄等を決定するとされており、幸福を祈る祭が催されます。


 クリスティーナ様が聖堂で祈りを捧げている姿はまるで聖女のように清らかで、薔薇保護親衛隊の皆はクリスティーナ様の祈りが通じるようにと願うばかりです。


 これほどまでに慕ってくれる婚約者がいるにも関わらずルーベンス殿下がマリアンヌ嬢へ恋慕し、大衆の前でおろかにも冤罪の公開処刑をしたのだと思うと同じ女性として怒りを覚えます!


 この上戦争で負傷等されもしクリスティーナ様を悲しませるようなことになれば只ではおきませんわよ!


 薔薇保護親衛隊の隊長として、盟主リシャーナ様が戻られるまでクリスティーナ様を確りとお支えしなければ!




******


 今日もいつも通り神像の前に膝をつき両掌を組んで目の前の二人の神像へ祈りをかける。


「神様、どうかリシャーナ様を無事に御返しください! お願いいたします! 他は取り合えずどうでも良いです! リシャーナ様の行く手を遮る愚か者に七難八苦を与えたまえ~!」

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