『原作小説』美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!

紅葉ももな(くれはももな)

46『なんでこんなところに!?』

 ルーベンス殿下を生け贄にして町のなかを移動中迷わないように真っ直ぐ進んでいると大きなバスケットを持ったクリスティーナ様とアロが手を振りながらこちらに向かって走ってくる。


 金色の髪が朝日にキラキラと光を撒き散らしながら走り寄るなりクリスが抱きついて来た。


 うん、今日も相変わらずの立派な質量に顔が埋まります!


「リシャ、お仕事ご苦労様です。 朝食をお持ちしましたぁ」


「やったぁ! クリスありがとぅ、お腹すいてたの!」


 天使だ! いや、女神様がいる! 朝早くから起き出して動いたお陰で空腹で空腹でひもじかったのよ。


「なぁ、リシャ姉。 ルーベンス兄は?」


 クリスに背中から抱き締められながら受け取ったバスケットを開く。


 うひょー、サンドイッチ! 野菜とハム入り! 玉子入りもある! こっちはジャムだ!


「頂きます!」


「はい、召し上がれ」


 空腹に堪えかねて一つ手にとりかぶり付く。


 くぅ~、美味い幸せぇ~。


「リシャは本当に美味しそうに食べてくれるから作りがいがありますね」


 えぇ、美味しいですもの。 美味しいですものは正義ですわ!


「う~ん、食い意地が張ってるのは認めるわ。 リシャ姉、ルーベンス兄の分は残しててね」


 一つ目を完食し二つ目に手を伸ばすと、アロに釘を指された。


「大丈夫! 流石にこの量はこなせないわよ」


「あらリシャったら、うふふっ。 口許にソースが付いてますわ」


 口の端に付着したトマトベースのソースをクリスティーナ様が拭き取ってくれた。


 うおっ、顔が近い! 相変わらず睫毛長いなぁ。


「クリス姉……甘やかしすぎ」


「そう? だって可愛らしいんですもの!」


 うーん、確かに最近至れり尽くせりでクリスティーナ様が側に居るのが当たり前になりつつあるなぁ。


 前ほどクリスティーナ様のスキンシップに抵抗がなくなってる気がする。


「はいはい、それよりもリシャ姉なんで一人で歩いてたんだよ、また迷うぜ?」


「石鹸の売れ行きがすごくって、追加を取りに来たの」


「えっ、まじで売れたの!?なら 俺戻って取ってくるよ!」


 そう言って、キラキラと瞳を輝かせながら踵を返して教会へ向けて走り出してしまった。


「リシャ姉はクリス姉と一緒にルーベンス兄に、朝食を持っていってあげて!」


「あっ、アロ危ない!」


 こちらを振り返りながら走るアロは路地裏から出てきた人物に気が付かず、そのままの勢いで激突し折り重なるように倒れ込んだ。
 
「「アロ!?」」


 出会い頭の追突事故は重傷になることも多い、急いで二人に駆け寄ると私はアロを抱き起こした。


「クリス、もしかしたら頭を打ち付けている可能性も有るからなるべく動かさないでね!」


「えぇ、わかったわ」


 クリスは被害者であるローブを纏った人物に駆け寄ると大丈夫ですかと声を掛けている。


「痛って~!」


「ちゃんと前をみて走らないからそうなるのよ。 怪我はない?」


 ざっと怪我の有無を確認したが良かった、アロは追突したさいに被害者がクッションになって衝撃をあまり受けずに済んだらしい。


「りっ、リシャ! この人!」


 クリスティーナ様が被害者である人物を覗き込みながら焦ったようにこちらを手招いている。
 
「もしかして知り合い?」


「うん、マジェンタ、マリアンテ? 何だっけ?」


 誰だそれ。


 ローブの帽子からピンクゴールの髪が一房溢れていた。


「えっ、まさか!?」


 いや、彼女がこんな国境地にいるはずがない。


 学院で攻略対象者達と逆ハーレムを築き上げ、髪と同じく桃色な毎日を謳歌しているはずなのだから。


 ピンクゴールの髪をした別人の可能性を期待したが、アロから離れて被害者の顔を確認して絶句した。


 なぜ彼女がここに居るのかとか、どうやってここまでやって来たのかとかわからないことが多く、また旅をしてきたせいか、かなり汚れてはいるが。
 
 元々細い肢体は痩せ、それとは対照的に不自然なほど膨らんだ腹部がローブを押し上げている。


 彼女はこの場に居てはいけない人、ルーベンス殿下を始めこの国の次代を担う若者を短期間で次々と攻略し国内を混乱に陥れた張本人。
 
 そしてクリスティーナ様がドラクロアに来る最大の原因となった人物が目の前で気を失い倒れていた。
 
「マリアンヌ様!?」


 彼女の名前はマリアンヌ・カルハレス準男爵令嬢。


 この乙女ゲームの世界のヒロインとの再会だった。



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