『原作小説』美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!
38『顔面偏差値が平均的な異性が良いの!』
前を走るアロの後ろをカイザール様、私、ルーベンスの順番で民家の路地裏を走る。
賑やかだったギルド会館や商店街とはまた違った趣のある街並みは柱や壁に過多なほどの装飾が施されていた。
どうやらこの通りは夜の街、一夜の愛を求め、ロマンと天国と地獄が交差する一画のようだ。
夜には人出で混雑するこの道は、昼過ぎだと言うのに人の気配があまりなく、通り全体が眠りについているかのような静けさが漂っている。
そんな色街の最奥にジャグラーファミリーのねぐらは存在していた。
通りにそぐわない年齢の私達は早足で色街を抜けて建物の角を利用して百歩ほど離れた場所にある一際派手な建物を確認すると、見覚えのある青年がこちらに気付き駆け寄ってくる。
「これはルーベンス殿下。ダスティア公爵令嬢、クラリアス伯爵子息。この度は私どもが護衛としてついておりましたのに、このような事態になり申し訳しようもございません」
護衛につけられていた一人なのだろう。良く見れば教会に野菜を届けに来ていた露店の店主だった男性だ。
ルーベンスやカイザール様と同じ様なデザインの服を着ているが、ルーベンスを見付けるなり無駄のない動きで片方の膝を地面に着けて頭を垂れる。
腰には普段身に付けていなかった武骨な飾り気のない剣を佩いていた。
「良い、頭をあげよ。今はクリスティーナの救出が急務だ、無事に救出出来れば此度の不始末は不問とする。必ず救い出せ」
「はっ! 現状のご報告を致します! 現在護衛の者が三名で救出に向かっております!」
「そうか、引き続き救出に全力を尽くせ」
「御意!」
そう言ういい放つ姿は腐っても王族なのだろう。どうしてそれが学院で発揮できなかったのか。
いや、間違った方向には発揮してたかな。
「アロ、あの建物で間違い無いんだな?」
「うん、カイ兄あれがジャグラーファミリーの本拠地だよ」
カイザール様の問いかけにアロが肯定すると潜入していた護衛の一人がこちらへ走ってきた。
「状況を説明せよ」
中から走ってきた護衛、衣類を扱う露店の年配の女将さんは私の上をいくそのふくよかな身体からは想像出来ないほど身軽な動きでルーベンスの前に膝をついた。
「はっ、護衛三名にてスラープ伯爵令嬢の救出に向かいましたが、建物内を確認しましたところスラープ伯爵令嬢はいらっしゃらず中にこのような物がございました」
そう告げて差し出されたのは薄い板だった。
『クリスティーナと言う名前のお嬢さんは保護している。ブラックパピオンに来られたし』
達筆としか言い様のない流麗な文字で綴られた置き手紙? 板だから手板? を読み終えると、ルーベンスはカイザール様に手渡した。読み進めたカイザール様の眉間に皺がよる。
「どう見る?」
「難しいところですね……しかしここにいないなら、ここに書いてあるブラックパピオンと言う所に行くよりないのではないでしょうか」
カイザール様の言うとおりそれ以外に有効な選択肢はない。
それならなら動くのみ、行ってみてから考えろ!
「まぁ悩んでも仕方がないですわ。ブラックパピオン行きましょうか!」
歩き出した私の襟首をガッシリと掴まれて引き戻された。
ぐぇ! しっ、死ぬぅタップタップ!
「そっちじゃない」
いやね、ルーベンス目が据わってますことよ?
「リシャはいい加減に自分が壊滅的な方向音痴だって自覚しましょうか」
にっこり微笑むカイザール様の麗しいご尊顔が黒い。
「リシャ姉、今はボケるのやめようね?」
アロにまであきれられた!? うわーん、涙でそう。
「ほら、助けに行くんだろう?」
そう言ってルーベンスがこちらに右手を差し出した。
「なんですかその手は!」
「また迷われても厄介だからな、仕方がないから手を貸してやろう」
はぁ!? 何で上から。
「誰が繋ぐかぁ!?」
バシッ! っとルーベンスの差し出した手を叩き落とす。
「はぁ、しかたがありませんねぇ」
溜め息をつきながらなぜかカイザール様が手を差し出してきた。
「結構です!」
ベシッ! とカイザール様の手を叩き落として、有無を言わさずアロの手を握った。
「アロいこう!」
「はぁ、なんて勿体無い。女って美形好きなんじゃないの? 二人ともなかなか居ない位の色男なのに一体何が不満なの?」
二人に聞こえない程度の声量でアロが聞いてきた。
そう、アロの言うとおりルーベンスは攻略対象だけに美形だし、カイザール様もモブにあるまじき美丈夫だ。
なんでこれでモブなんだか、他の攻略対象者よりよほど攻略対象者っぽいよ。
 
「美しい生き物は受け付けません! 私は顔面偏差値が平均的な異性が良いの!」
はぁ、どこにいるのかしら、私の理想の男性は。
アロは国中の美女に対して百戦錬磨だったろう美男子が、そろって叩き落とされた手を見詰めたまま動かない姿に嘆息した。
「リシャ姉悪女だ」
「ん? なんか言った?」
「なんでもないよ! さぁクリス姉を助けにブラックパピオンへ行こう!」
ぼそりと呟かれた言葉を聞き逃してしまいアロの顔を見ると、満面の笑顔で元気良く答え私の手を引いて機嫌良く進んでいく。
「やっぱりリシャ姉は面白いね。見ていてなんだかスカッとするよ!」
「んー、良く分かんないけどスッキリしたなら良かったわ。二人とも!さっさと来ないと置いていきますからねー!」
私の言葉に硬直が解けたのか並んでこちらに来る二人に溜め息をついた私の様子にアロが震えながら顔を伏せた。
「やっ、やべー。リシャ姉強ぇ!美形形無し!」
おうよ!美形なんて厄介な生き物はなるべく関わらない方が平和なのよ。
存在事態がトラブルメーカーなんだから!
賑やかだったギルド会館や商店街とはまた違った趣のある街並みは柱や壁に過多なほどの装飾が施されていた。
どうやらこの通りは夜の街、一夜の愛を求め、ロマンと天国と地獄が交差する一画のようだ。
夜には人出で混雑するこの道は、昼過ぎだと言うのに人の気配があまりなく、通り全体が眠りについているかのような静けさが漂っている。
そんな色街の最奥にジャグラーファミリーのねぐらは存在していた。
通りにそぐわない年齢の私達は早足で色街を抜けて建物の角を利用して百歩ほど離れた場所にある一際派手な建物を確認すると、見覚えのある青年がこちらに気付き駆け寄ってくる。
「これはルーベンス殿下。ダスティア公爵令嬢、クラリアス伯爵子息。この度は私どもが護衛としてついておりましたのに、このような事態になり申し訳しようもございません」
護衛につけられていた一人なのだろう。良く見れば教会に野菜を届けに来ていた露店の店主だった男性だ。
ルーベンスやカイザール様と同じ様なデザインの服を着ているが、ルーベンスを見付けるなり無駄のない動きで片方の膝を地面に着けて頭を垂れる。
腰には普段身に付けていなかった武骨な飾り気のない剣を佩いていた。
「良い、頭をあげよ。今はクリスティーナの救出が急務だ、無事に救出出来れば此度の不始末は不問とする。必ず救い出せ」
「はっ! 現状のご報告を致します! 現在護衛の者が三名で救出に向かっております!」
「そうか、引き続き救出に全力を尽くせ」
「御意!」
そう言ういい放つ姿は腐っても王族なのだろう。どうしてそれが学院で発揮できなかったのか。
いや、間違った方向には発揮してたかな。
「アロ、あの建物で間違い無いんだな?」
「うん、カイ兄あれがジャグラーファミリーの本拠地だよ」
カイザール様の問いかけにアロが肯定すると潜入していた護衛の一人がこちらへ走ってきた。
「状況を説明せよ」
中から走ってきた護衛、衣類を扱う露店の年配の女将さんは私の上をいくそのふくよかな身体からは想像出来ないほど身軽な動きでルーベンスの前に膝をついた。
「はっ、護衛三名にてスラープ伯爵令嬢の救出に向かいましたが、建物内を確認しましたところスラープ伯爵令嬢はいらっしゃらず中にこのような物がございました」
そう告げて差し出されたのは薄い板だった。
『クリスティーナと言う名前のお嬢さんは保護している。ブラックパピオンに来られたし』
達筆としか言い様のない流麗な文字で綴られた置き手紙? 板だから手板? を読み終えると、ルーベンスはカイザール様に手渡した。読み進めたカイザール様の眉間に皺がよる。
「どう見る?」
「難しいところですね……しかしここにいないなら、ここに書いてあるブラックパピオンと言う所に行くよりないのではないでしょうか」
カイザール様の言うとおりそれ以外に有効な選択肢はない。
それならなら動くのみ、行ってみてから考えろ!
「まぁ悩んでも仕方がないですわ。ブラックパピオン行きましょうか!」
歩き出した私の襟首をガッシリと掴まれて引き戻された。
ぐぇ! しっ、死ぬぅタップタップ!
「そっちじゃない」
いやね、ルーベンス目が据わってますことよ?
「リシャはいい加減に自分が壊滅的な方向音痴だって自覚しましょうか」
にっこり微笑むカイザール様の麗しいご尊顔が黒い。
「リシャ姉、今はボケるのやめようね?」
アロにまであきれられた!? うわーん、涙でそう。
「ほら、助けに行くんだろう?」
そう言ってルーベンスがこちらに右手を差し出した。
「なんですかその手は!」
「また迷われても厄介だからな、仕方がないから手を貸してやろう」
はぁ!? 何で上から。
「誰が繋ぐかぁ!?」
バシッ! っとルーベンスの差し出した手を叩き落とす。
「はぁ、しかたがありませんねぇ」
溜め息をつきながらなぜかカイザール様が手を差し出してきた。
「結構です!」
ベシッ! とカイザール様の手を叩き落として、有無を言わさずアロの手を握った。
「アロいこう!」
「はぁ、なんて勿体無い。女って美形好きなんじゃないの? 二人ともなかなか居ない位の色男なのに一体何が不満なの?」
二人に聞こえない程度の声量でアロが聞いてきた。
そう、アロの言うとおりルーベンスは攻略対象だけに美形だし、カイザール様もモブにあるまじき美丈夫だ。
なんでこれでモブなんだか、他の攻略対象者よりよほど攻略対象者っぽいよ。
 
「美しい生き物は受け付けません! 私は顔面偏差値が平均的な異性が良いの!」
はぁ、どこにいるのかしら、私の理想の男性は。
アロは国中の美女に対して百戦錬磨だったろう美男子が、そろって叩き落とされた手を見詰めたまま動かない姿に嘆息した。
「リシャ姉悪女だ」
「ん? なんか言った?」
「なんでもないよ! さぁクリス姉を助けにブラックパピオンへ行こう!」
ぼそりと呟かれた言葉を聞き逃してしまいアロの顔を見ると、満面の笑顔で元気良く答え私の手を引いて機嫌良く進んでいく。
「やっぱりリシャ姉は面白いね。見ていてなんだかスカッとするよ!」
「んー、良く分かんないけどスッキリしたなら良かったわ。二人とも!さっさと来ないと置いていきますからねー!」
私の言葉に硬直が解けたのか並んでこちらに来る二人に溜め息をついた私の様子にアロが震えながら顔を伏せた。
「やっ、やべー。リシャ姉強ぇ!美形形無し!」
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