『原作小説』美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!
25『学力テストの試験的導入』
「採点終わりました」
年若い教師がカイザール様の採点済みの問題用紙を持って教卓にやって来た。
「こちらも終了です」
クリスティーナ様の採点も終わったみたいで教卓まで届けられました。
「これでよろしいですかな?」
最後に学院長が椅子に座ったまま告げたので取りに向かう。
仮にも世継ぎ筆頭の王子様。 その方の問題用紙をその扱いは不味いでしょ。
少し振り返るか気配を察する危機管理の威力があれば貴方の後ろで様子を伺っていた父様の極悪不機嫌オーラに気が付いたろうに。
実際父様の部下や察しの良い教師は我先にと父様の側から脱走済みです。
「それでは発表させていただきます」
三者とも結果が出揃ったようなので発表となるわけですがまぁ個人情報もなにもないのでさくっと発表しちゃいましょうか。
「試験結果の発表は学院では上位三十名のみ書面に順位と点数を記載して貼り出します。 また全教科の順位も総合点として三十名貼り出します。 学力と順位は各地の保護者に送付します。 採点済みの用紙は点数の脇に教科ごとの順位を記入して本人に返します」
カイザール様の前に移動して用紙を手渡した。
「おめでとうございます。 今回の試験の首位ですわ。 基礎計算、学院で習った応用力での出題も問題ありません。 ですが実務型基礎と実務応用は外れてしまわれました」
「七十二……」
自分の答案を食い入るように見詰める。
×印のついた項目を睨み付けながらブツブツ言っているけどとりあえず放置することにした。
「クリスティーナ様」
「はい!」
名前を呼ぶと勢いよく立ち上がり恐る恐る問題用紙を受け取った。
「計算基礎はできてますけど所々に計算間違いがありましたわ。 応用もまずまずです」
受け取ったテストにははっきりと五十六点と書いてあった。
「頑張ったんですが五十六ですか。 カイザール様凄いですね」
「ありがとうございます。 いえ、まだまだですねこの点数では……」
カイザール様の解答と自分の解答を見比べながら解き方を話し合ったりしている。
テスト後に良くある答え合わせ。 美形二人で顔を付き合わせているのは見応えあるわぁ、混ざりたくはないけど。
「おいっ、早く寄越せ!」
「はぁ、待ても出来ないんですか。 はいはい」
ぞんざいに差し出された用紙を引ったくるようにして自分の答案を奪うと何やらプルプル震えだした。
「よっ、四十八だとっ……!」
あらまぁ半分以下ですか。
「まぁ赤点じゃなくて良かったですね」
と言うわけで一位カイザール様、二位クリスティーナ様、ビリケツルーベンス殿下となりました。
順当でしょうね、日頃から努力を怠らない者とリア充して勉強をさぼった人の差かしら。
「ちなみに四十点以下は問答無用で留年。 六十点以下は補習、それ以上が進級目安ですかね。 問題の解説も返却後に行うと言うことでいかがでしょう」
父様を見上げれば頷かれたので目安として承認されたと思って良いでしょう。
「どうでしたでしょうか? 学院の皆様。 すぐれた生徒を輩出する学院ですからきっと素晴らしい優秀な成績を修めて頂けることでしょうな? 学院長殿?」
黒い笑みを浮かべて学院長様に話を向けると白いレースのハンカチで額から吹き出す汗を拭う。
「そっ、そうですな。 わが校の生徒はこの国を支えていく者たちです。 きっと良い成績を修めてくれるでしょう」
視線をさ迷わせながら必死に頷く学院長殿。
「そうですね。 この試験は優秀な教師の皆様の力量も問われますし、結果を陛下と楽しみにしています。 それでは皆様本日は御足労ありがとうございました」
「かっ、帰って試験の準備をするぞ!」
意気込む学院長の後を追ってゾロゾロと教師陣が退出した後、父様の部下の人も出ていった為、室内には私と殿下とカイザール様、クリスティーナ様、それに父様の五人だけが残された。
「ルーベンス殿下。 リシャーナとカイザール殿が殿下の指導役としてドラクロアへ同行致します。 又陛下の指示がありクリスティーナ嬢も同行致します」
父様はまだ自分の点数による衝撃から立ち直れない殿下を無視してサクサクと話を進めていく。
「宰相閣下、一つ宜しいでしょうか? 私の召喚期日はまだ二日ほど先だったはずです。 なぜこんなにも急に召喚されたのでしょうか」
笑顔が黒いっす。 どれだけ早く喚ばれたのが気にくわなかったのか。
「すまんな。 実は今王城にドラクロアに降嫁されたセイラ夫人が滞在していてな。 その帰領にあわせて送還の予定を立てていたんだが、今朝がた明日には領へ向けて出発されることにきまったのだ。 その為に急遽学院へ迎えに走らせた。すまない」
「あぁ、それでは仕方がありませんね。セイラ様は大変天真爛漫な方だと聞き及んでおります」
「そうですね、親子ほどに年の離れたドラクロア殿を宣言通りに落として仕舞われた。 有り余る行動力は周囲に時として予想外の波紋を産みますが」
どこか遠い所をみてますが、一体何があったのですか父様! 先日の陛下の反応と言いセイラ様は一体何をしたんだろう。
「出発は明日明け方だ。 ドラクロアまではそう遠くないので夜には着けるだろう。 カイザール殿、クリスティーナ殿。 リシャーナはこの通り無鉄砲に突進していく悪癖があり御迷惑をお掛けすると思うが、宰相としてではなく父として娘を頼みます」
「父様……」
深々と御二人に向かい頭を下げた父様にクリスティーナ様も頭を下げる。
「いえ、こちらこそいつもリシャーナ様に助けられてばかりで、私に出来ることであれば全力でお力になれるように頑張ります」
「ありがとうございます! クリスティーナ様!」
心強い宣言にクリスティーナ様に抱き付いた。
「うふふっ。 こちらこそいつもありがとうございます」
お返しですと言ってギュぅぅっと抱きしめられる。
「私もリシャーナ様をできうる限り御守りすると誓いましょう。 閣下には色々と恩がありますからこれを機に返させていただきます」
カイザール様の言葉に頷くと父様はルーベンス殿下を立ち上がらせた。
「さぁ殿下、お部屋に戻りますよ?」
「部屋!」
父様の部屋と言う単語に一気に浮上したのか嬉しそうなルーベンス殿下は次の発言に一気に床へ座り込んだ。
「えぇ、地下の立派なお部屋に戻りますよ」
「自分の部屋に戻れると喜んだのに……もう鼠と一緒に寝るのはイヤだぁ!」
年若い教師がカイザール様の採点済みの問題用紙を持って教卓にやって来た。
「こちらも終了です」
クリスティーナ様の採点も終わったみたいで教卓まで届けられました。
「これでよろしいですかな?」
最後に学院長が椅子に座ったまま告げたので取りに向かう。
仮にも世継ぎ筆頭の王子様。 その方の問題用紙をその扱いは不味いでしょ。
少し振り返るか気配を察する危機管理の威力があれば貴方の後ろで様子を伺っていた父様の極悪不機嫌オーラに気が付いたろうに。
実際父様の部下や察しの良い教師は我先にと父様の側から脱走済みです。
「それでは発表させていただきます」
三者とも結果が出揃ったようなので発表となるわけですがまぁ個人情報もなにもないのでさくっと発表しちゃいましょうか。
「試験結果の発表は学院では上位三十名のみ書面に順位と点数を記載して貼り出します。 また全教科の順位も総合点として三十名貼り出します。 学力と順位は各地の保護者に送付します。 採点済みの用紙は点数の脇に教科ごとの順位を記入して本人に返します」
カイザール様の前に移動して用紙を手渡した。
「おめでとうございます。 今回の試験の首位ですわ。 基礎計算、学院で習った応用力での出題も問題ありません。 ですが実務型基礎と実務応用は外れてしまわれました」
「七十二……」
自分の答案を食い入るように見詰める。
×印のついた項目を睨み付けながらブツブツ言っているけどとりあえず放置することにした。
「クリスティーナ様」
「はい!」
名前を呼ぶと勢いよく立ち上がり恐る恐る問題用紙を受け取った。
「計算基礎はできてますけど所々に計算間違いがありましたわ。 応用もまずまずです」
受け取ったテストにははっきりと五十六点と書いてあった。
「頑張ったんですが五十六ですか。 カイザール様凄いですね」
「ありがとうございます。 いえ、まだまだですねこの点数では……」
カイザール様の解答と自分の解答を見比べながら解き方を話し合ったりしている。
テスト後に良くある答え合わせ。 美形二人で顔を付き合わせているのは見応えあるわぁ、混ざりたくはないけど。
「おいっ、早く寄越せ!」
「はぁ、待ても出来ないんですか。 はいはい」
ぞんざいに差し出された用紙を引ったくるようにして自分の答案を奪うと何やらプルプル震えだした。
「よっ、四十八だとっ……!」
あらまぁ半分以下ですか。
「まぁ赤点じゃなくて良かったですね」
と言うわけで一位カイザール様、二位クリスティーナ様、ビリケツルーベンス殿下となりました。
順当でしょうね、日頃から努力を怠らない者とリア充して勉強をさぼった人の差かしら。
「ちなみに四十点以下は問答無用で留年。 六十点以下は補習、それ以上が進級目安ですかね。 問題の解説も返却後に行うと言うことでいかがでしょう」
父様を見上げれば頷かれたので目安として承認されたと思って良いでしょう。
「どうでしたでしょうか? 学院の皆様。 すぐれた生徒を輩出する学院ですからきっと素晴らしい優秀な成績を修めて頂けることでしょうな? 学院長殿?」
黒い笑みを浮かべて学院長様に話を向けると白いレースのハンカチで額から吹き出す汗を拭う。
「そっ、そうですな。 わが校の生徒はこの国を支えていく者たちです。 きっと良い成績を修めてくれるでしょう」
視線をさ迷わせながら必死に頷く学院長殿。
「そうですね。 この試験は優秀な教師の皆様の力量も問われますし、結果を陛下と楽しみにしています。 それでは皆様本日は御足労ありがとうございました」
「かっ、帰って試験の準備をするぞ!」
意気込む学院長の後を追ってゾロゾロと教師陣が退出した後、父様の部下の人も出ていった為、室内には私と殿下とカイザール様、クリスティーナ様、それに父様の五人だけが残された。
「ルーベンス殿下。 リシャーナとカイザール殿が殿下の指導役としてドラクロアへ同行致します。 又陛下の指示がありクリスティーナ嬢も同行致します」
父様はまだ自分の点数による衝撃から立ち直れない殿下を無視してサクサクと話を進めていく。
「宰相閣下、一つ宜しいでしょうか? 私の召喚期日はまだ二日ほど先だったはずです。 なぜこんなにも急に召喚されたのでしょうか」
笑顔が黒いっす。 どれだけ早く喚ばれたのが気にくわなかったのか。
「すまんな。 実は今王城にドラクロアに降嫁されたセイラ夫人が滞在していてな。 その帰領にあわせて送還の予定を立てていたんだが、今朝がた明日には領へ向けて出発されることにきまったのだ。 その為に急遽学院へ迎えに走らせた。すまない」
「あぁ、それでは仕方がありませんね。セイラ様は大変天真爛漫な方だと聞き及んでおります」
「そうですね、親子ほどに年の離れたドラクロア殿を宣言通りに落として仕舞われた。 有り余る行動力は周囲に時として予想外の波紋を産みますが」
どこか遠い所をみてますが、一体何があったのですか父様! 先日の陛下の反応と言いセイラ様は一体何をしたんだろう。
「出発は明日明け方だ。 ドラクロアまではそう遠くないので夜には着けるだろう。 カイザール殿、クリスティーナ殿。 リシャーナはこの通り無鉄砲に突進していく悪癖があり御迷惑をお掛けすると思うが、宰相としてではなく父として娘を頼みます」
「父様……」
深々と御二人に向かい頭を下げた父様にクリスティーナ様も頭を下げる。
「いえ、こちらこそいつもリシャーナ様に助けられてばかりで、私に出来ることであれば全力でお力になれるように頑張ります」
「ありがとうございます! クリスティーナ様!」
心強い宣言にクリスティーナ様に抱き付いた。
「うふふっ。 こちらこそいつもありがとうございます」
お返しですと言ってギュぅぅっと抱きしめられる。
「私もリシャーナ様をできうる限り御守りすると誓いましょう。 閣下には色々と恩がありますからこれを機に返させていただきます」
カイザール様の言葉に頷くと父様はルーベンス殿下を立ち上がらせた。
「さぁ殿下、お部屋に戻りますよ?」
「部屋!」
父様の部屋と言う単語に一気に浮上したのか嬉しそうなルーベンス殿下は次の発言に一気に床へ座り込んだ。
「えぇ、地下の立派なお部屋に戻りますよ」
「自分の部屋に戻れると喜んだのに……もう鼠と一緒に寝るのはイヤだぁ!」
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