『原作小説』美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!
5『工作(イタズラ)って楽しいよね』
まーぜてかまして、まーぜてかまして。 ふんふふん。
「あの~、リシャーナ様。 治療院で一体何をされているのでしょうか?」
ためらいがちに声を掛けてきたクリスティーナ様は私の手元を覗き込んでます。
手元の鍋には本日のお料理……違うなぁ食べないから。 ドロドロの図画工作中の物体かな。
さながら魔女が秘薬でも作ってるようですね。
「うふふっ、出来てからのお楽しみですわよ。 クリスティーナ様」
深鍋の中のドロドロ物体をさらしに掬って、水分を搾っていきます。
出来るだけ完成速度を上げるために固く搾りますよ。
「うんいい感じ」
程よく水分の抜けた物をおもむろに部屋の硝子に塗りたくっていきます。
「まあ、リシャーナ様! お部屋が汚れてしまいますわ!」
小さな悲鳴を上げて右往左往するクリスティーナ様を手招いた。
「大丈夫ですわ。 乾燥すれば綺麗に剥がれて来ますから」
意外と楽しいのよ? なんか悪いことしてるみたいで。
「えっ!? そうなんですの? で、でも部屋を清潔に保ってくれている使用人に悪いのでは……」
自分の生活を使用人や侍女が支えてくれている事を理解した上での発言、真面目におバカルーベンスにはもったいない!
「それじゃぁ終わったら自分達でお掃除すれば大丈夫ですよ」
「お掃除、リシャーナ様がなさるんですか!?」
「えー、お掃除くらいしますよ? 汚す方が得意ですけど」
「……驚きました。 リシャーナ様は公爵家のご令嬢、お掃除まで出来るなんて!」
 うっ、まぶしい! なんで掃除ごときでそんなキラキラした視線を送れるんですか!?
おーい、このゲーム設定考えたプログラマー。 完全に人選ミスでしょ。
「と、とにかく。 これもルーベンス様の為のものですから、クリスティーナ様も手伝って頂けますか?」
「ルーベンス様の為、わかりました。 お手伝いさせていただきます」
うっ、よくもまぁ。 あんな目に遇わされたのにそれでもこの反応。
感心を通り越して頭痛がしてきた。
「と、とにかくやってしまいましょう!」
「はい!」
元気よく返事をして隣に立ったクリスティーナ様に物を渡すと恐る恐る指で突つき、手にとって私が塗りたくった場所と繋げるようにして硝子に塗り付け始めた。
「うふふっ、本当に楽しいのですね!」
うおぃ、いい笑顔。
いくらぼんくらでも王族の婚約者、今まで淑女としての振る舞いを求められることも多かったに違いないので、こういったことはしてこなかったのだろう。
まぁ、私は末っ子ですので公爵家ではそれなりにイタズラさせて頂きましたよ?
一番上のソルティス兄様のブーツにミミズさんを入れたり、二番目のソレイユ兄様のポケットを縫い付けて使えなくしたり?
「さてと、あとは乾くのを待つだけですわ。 クリスティーナ様宜しければ一緒にお茶をしましょう?」
捲り上げた長袖を下ろしながら、治療院付きの侍女に手を洗うための水と、紅茶と菓子を頼む。
部屋を訪れた侍女は、窓硝子に塗り付いた謎の物体に一瞬怯んだものの流石はプロ、直ぐに自分を取り戻してお茶やお菓子の用意を整えていく。
「あの塗り付けたものはいつ頃出来上がるんですか?」
ほわほわと湯気が立ち上る白磁のカップを口に運びながらクリスティーナ様は窓を見詰めていた。
「そうですわね、水分はかなり抜きましたから、天気も良いですし早ければ夕刻には乾くと思います」
少し厚みと強度が足りなそうだけど、まぁ、第一号なら仕方がないよね。
「そうですわ、クリスティーナ様今日は寮に戻りますか? 私はこちらに泊めて頂く手筈になっておりますの」
見れば、先程までの笑顔が嘘のように翳っていく。
「リシャーナ様の御迷惑でなければ私もこちらに一晩泊めて頂く訳にはいけませんでしょうか……寮は確かに男子禁制となっていますが、私はひとりになるのが怖いのです」
自分よりもはるかに体格の良い男性に集団で囲まれれば嫌でもトラウマになると言うものでしょう。
「光栄ですわ、ただしベッドがひとつしかありませんから同衾ですわよ?」
冗談混じりに言ってみれば、クリスティーナ様はしばしの無言の後で内容に思い至ったのか真っ赤に赤面してぼそぼそ言ってます。
「……わたし、あの、リシャーナ様となら……」
「うっ、冗談ですわ。 女同士ですもの何も問題ないですわね」
あまりの赤面具合にいたたまれなくなり、前言を否定すると何故か落胆したように見えるのは気のせいですよね?
「……今の私じゃ相手にされないのね……」
何に? と怖くて聞けない私を許してくださいな。
と、とにかく目下は、おバカをまともな王子に戻すことが先。
「さっ、さぁ。 おかわりでもいかがですか?」
「えぇ頂きますわ」
色々な意味で先行きに不安はあるものの、回避できないならせめて前向きに向き合おう。
まぁ、なんとかなるさ~。
「あの~、リシャーナ様。 治療院で一体何をされているのでしょうか?」
ためらいがちに声を掛けてきたクリスティーナ様は私の手元を覗き込んでます。
手元の鍋には本日のお料理……違うなぁ食べないから。 ドロドロの図画工作中の物体かな。
さながら魔女が秘薬でも作ってるようですね。
「うふふっ、出来てからのお楽しみですわよ。 クリスティーナ様」
深鍋の中のドロドロ物体をさらしに掬って、水分を搾っていきます。
出来るだけ完成速度を上げるために固く搾りますよ。
「うんいい感じ」
程よく水分の抜けた物をおもむろに部屋の硝子に塗りたくっていきます。
「まあ、リシャーナ様! お部屋が汚れてしまいますわ!」
小さな悲鳴を上げて右往左往するクリスティーナ様を手招いた。
「大丈夫ですわ。 乾燥すれば綺麗に剥がれて来ますから」
意外と楽しいのよ? なんか悪いことしてるみたいで。
「えっ!? そうなんですの? で、でも部屋を清潔に保ってくれている使用人に悪いのでは……」
自分の生活を使用人や侍女が支えてくれている事を理解した上での発言、真面目におバカルーベンスにはもったいない!
「それじゃぁ終わったら自分達でお掃除すれば大丈夫ですよ」
「お掃除、リシャーナ様がなさるんですか!?」
「えー、お掃除くらいしますよ? 汚す方が得意ですけど」
「……驚きました。 リシャーナ様は公爵家のご令嬢、お掃除まで出来るなんて!」
 うっ、まぶしい! なんで掃除ごときでそんなキラキラした視線を送れるんですか!?
おーい、このゲーム設定考えたプログラマー。 完全に人選ミスでしょ。
「と、とにかく。 これもルーベンス様の為のものですから、クリスティーナ様も手伝って頂けますか?」
「ルーベンス様の為、わかりました。 お手伝いさせていただきます」
うっ、よくもまぁ。 あんな目に遇わされたのにそれでもこの反応。
感心を通り越して頭痛がしてきた。
「と、とにかくやってしまいましょう!」
「はい!」
元気よく返事をして隣に立ったクリスティーナ様に物を渡すと恐る恐る指で突つき、手にとって私が塗りたくった場所と繋げるようにして硝子に塗り付け始めた。
「うふふっ、本当に楽しいのですね!」
うおぃ、いい笑顔。
いくらぼんくらでも王族の婚約者、今まで淑女としての振る舞いを求められることも多かったに違いないので、こういったことはしてこなかったのだろう。
まぁ、私は末っ子ですので公爵家ではそれなりにイタズラさせて頂きましたよ?
一番上のソルティス兄様のブーツにミミズさんを入れたり、二番目のソレイユ兄様のポケットを縫い付けて使えなくしたり?
「さてと、あとは乾くのを待つだけですわ。 クリスティーナ様宜しければ一緒にお茶をしましょう?」
捲り上げた長袖を下ろしながら、治療院付きの侍女に手を洗うための水と、紅茶と菓子を頼む。
部屋を訪れた侍女は、窓硝子に塗り付いた謎の物体に一瞬怯んだものの流石はプロ、直ぐに自分を取り戻してお茶やお菓子の用意を整えていく。
「あの塗り付けたものはいつ頃出来上がるんですか?」
ほわほわと湯気が立ち上る白磁のカップを口に運びながらクリスティーナ様は窓を見詰めていた。
「そうですわね、水分はかなり抜きましたから、天気も良いですし早ければ夕刻には乾くと思います」
少し厚みと強度が足りなそうだけど、まぁ、第一号なら仕方がないよね。
「そうですわ、クリスティーナ様今日は寮に戻りますか? 私はこちらに泊めて頂く手筈になっておりますの」
見れば、先程までの笑顔が嘘のように翳っていく。
「リシャーナ様の御迷惑でなければ私もこちらに一晩泊めて頂く訳にはいけませんでしょうか……寮は確かに男子禁制となっていますが、私はひとりになるのが怖いのです」
自分よりもはるかに体格の良い男性に集団で囲まれれば嫌でもトラウマになると言うものでしょう。
「光栄ですわ、ただしベッドがひとつしかありませんから同衾ですわよ?」
冗談混じりに言ってみれば、クリスティーナ様はしばしの無言の後で内容に思い至ったのか真っ赤に赤面してぼそぼそ言ってます。
「……わたし、あの、リシャーナ様となら……」
「うっ、冗談ですわ。 女同士ですもの何も問題ないですわね」
あまりの赤面具合にいたたまれなくなり、前言を否定すると何故か落胆したように見えるのは気のせいですよね?
「……今の私じゃ相手にされないのね……」
何に? と怖くて聞けない私を許してくださいな。
と、とにかく目下は、おバカをまともな王子に戻すことが先。
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