私のわがままな自己主張 (改訂版)
 終業式も粛々と終わりを迎え、クラスの面々もいつもとは違う賑やかさを見せている。明日からの大型連休の予定に思いを馳せつつ浮き足立つ者。今日これからの部活の日々に愚痴を溢す者。明日からも暫く補習があり、いつもと変わらぬ様相を呈している者などだ。
 私はそれらのように特にこれといった予定がひしめいている訳でも無く、至っていつも通りに教室を出て行こうとする。
 椎名と工藤はホームルームが終わるや否やあっさりとした捨て台詞を残して早々と教室を去っていっていた。二人は立場的にもこれから部活の中心的役割を担うのだろう。多少気合いが入っているように見えた。
 なので教室に残っていても別段やる事がある訳も無く。さざめき立っている他のクラスメイトを残し、ゆるりゆるりとこの場を去る。
 その途中、廊下側、後ろから二番目に位置する席に座る生徒も徐に立ち上がり、ぱらぱらと二人順番に教室を出ていく。
 一階の下駄箱へと続く職員室の手前の廊下を歩いている頃には自然と横並びになり、お互い何を言うでもなく靴を履き替え、一緒に校庭へと歩を進める。
 何というか本当に当たり前になったものだ。
 もうすっかり一緒に帰ることにも慣れてしまった高野との下校時間。私は一学期の終わりという事もあり若干感慨深い気持ちになっていた。
 人はどうしても区切りとか終わりとか始まりとか、そういった気持ちの切り替わりが必要になるようなタイミングでは昔やこれからに思いを馳せてしまうものなのだろうか。
 この二人での下校も暫くは無くなる事になるのだ。
「今日で一学期も終わりだな。早いものだ。」
「うん……。そうだね。」
「図書委員の当番も夏休みは一人ずつだ。夏休みはあまり顔を合わさないかもしれないな。」
「うん……。そうだね。」
「……??」
 ふと高野の様子に違和感を覚える。
 いつもより口数が少ない。それに何処か上の空で話していてもうまく会話になっていないような。
 確かに校内を歩いている時はいつも静かなのだが、校庭を出る頃には割と笑顔でよく喋る方なのだという印象をこれまでで持っていた。
 だが今の高野はこの下校の時間、ずっと下を向いている。
 何か落ち込んでいるのかとも思ったが、どちらかと言えばそわそわするような、落ち着きの無い感じだ。
 強いて言うなら言いたい事でもあるような。
 
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 何だかあまりこれと言った会話も無いまま、あっという間に魚住駅まで到着してしまった。その間やはり高野は終始上の空という感じ。
 流石にここまで会話が盛り上がらないと少々キツいものがある。
 せっかく一学期最後の下校だというのに、それがこんなでは後味が悪くなってしまう。いや、そんな事よりも単純に私は嫌なのだ。高野に終始今のような対応をされてしまっている事が。会話がこう、うまく続かない事に何故か焦ってしまっているのだ。
 ここまでの高野の反応に私は正直打ちのめされていた。
 今まで彼女とは割と接しやすく、お互いいい距離感を保てていると思ってしまっていた。だが実際はそうでは無かったのだ。私の思い過ごし。自身の買い被り。驕り昂った些末で見苦しい感情だったのだ。
 寧ろこれまで気を使わせていたのだろうか。大して接しやすくも無かったのにわざわざ一緒にいてくれていたのだろうか。
 そんな事を考えると胸がざわついた。苦々しくて、苦しくて。歩く度に揺れる指先は実は今小刻みに震えていて。それを隠すようにいつもより少し大きく腕を振りながら歩くのだ。
 それが少しでも高野に自分の気持ちを悟られないようにする免罪符だと知りながら。
 私は今、この気持ちがどうしようも無い程に悲しさという感情なのだと自覚する。
 日の光は未だ高く、こんなにも明るく自分達を射し照らしているというのに。
 私の心は今、海の底よりも薄暗く、蒼く、濁り、揺蕩っている。
 私はそれらのように特にこれといった予定がひしめいている訳でも無く、至っていつも通りに教室を出て行こうとする。
 椎名と工藤はホームルームが終わるや否やあっさりとした捨て台詞を残して早々と教室を去っていっていた。二人は立場的にもこれから部活の中心的役割を担うのだろう。多少気合いが入っているように見えた。
 なので教室に残っていても別段やる事がある訳も無く。さざめき立っている他のクラスメイトを残し、ゆるりゆるりとこの場を去る。
 その途中、廊下側、後ろから二番目に位置する席に座る生徒も徐に立ち上がり、ぱらぱらと二人順番に教室を出ていく。
 一階の下駄箱へと続く職員室の手前の廊下を歩いている頃には自然と横並びになり、お互い何を言うでもなく靴を履き替え、一緒に校庭へと歩を進める。
 何というか本当に当たり前になったものだ。
 もうすっかり一緒に帰ることにも慣れてしまった高野との下校時間。私は一学期の終わりという事もあり若干感慨深い気持ちになっていた。
 人はどうしても区切りとか終わりとか始まりとか、そういった気持ちの切り替わりが必要になるようなタイミングでは昔やこれからに思いを馳せてしまうものなのだろうか。
 この二人での下校も暫くは無くなる事になるのだ。
「今日で一学期も終わりだな。早いものだ。」
「うん……。そうだね。」
「図書委員の当番も夏休みは一人ずつだ。夏休みはあまり顔を合わさないかもしれないな。」
「うん……。そうだね。」
「……??」
 ふと高野の様子に違和感を覚える。
 いつもより口数が少ない。それに何処か上の空で話していてもうまく会話になっていないような。
 確かに校内を歩いている時はいつも静かなのだが、校庭を出る頃には割と笑顔でよく喋る方なのだという印象をこれまでで持っていた。
 だが今の高野はこの下校の時間、ずっと下を向いている。
 何か落ち込んでいるのかとも思ったが、どちらかと言えばそわそわするような、落ち着きの無い感じだ。
 強いて言うなら言いたい事でもあるような。
 
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 何だかあまりこれと言った会話も無いまま、あっという間に魚住駅まで到着してしまった。その間やはり高野は終始上の空という感じ。
 流石にここまで会話が盛り上がらないと少々キツいものがある。
 せっかく一学期最後の下校だというのに、それがこんなでは後味が悪くなってしまう。いや、そんな事よりも単純に私は嫌なのだ。高野に終始今のような対応をされてしまっている事が。会話がこう、うまく続かない事に何故か焦ってしまっているのだ。
 ここまでの高野の反応に私は正直打ちのめされていた。
 今まで彼女とは割と接しやすく、お互いいい距離感を保てていると思ってしまっていた。だが実際はそうでは無かったのだ。私の思い過ごし。自身の買い被り。驕り昂った些末で見苦しい感情だったのだ。
 寧ろこれまで気を使わせていたのだろうか。大して接しやすくも無かったのにわざわざ一緒にいてくれていたのだろうか。
 そんな事を考えると胸がざわついた。苦々しくて、苦しくて。歩く度に揺れる指先は実は今小刻みに震えていて。それを隠すようにいつもより少し大きく腕を振りながら歩くのだ。
 それが少しでも高野に自分の気持ちを悟られないようにする免罪符だと知りながら。
 私は今、この気持ちがどうしようも無い程に悲しさという感情なのだと自覚する。
 日の光は未だ高く、こんなにも明るく自分達を射し照らしているというのに。
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