私のわがままな自己主張 (改訂版)

とみQ

「ただいま~」


 帰宅した私を出迎える人は誰もいない。
 唯一一緒に暮らしている家族である母親は、毎日仕事仕事仕事。とにかくほとんど家にいないのだ。
 だけど別に恨んだり、寂しいなんて思わない。女手一つでこんな私を育ててくれて、ちゃんと学校にも行かせてくれる彼女には感謝しかないからだ。
 私はかばんをテーブルに置いて、その足で布団にぱたりと横たわり大きくため息をつく。
 そして思った以上に大きなため息をついてしまった自分にほんの少しだけ驚く。そしてそのため息を取り消すように布団に顔をうずめた。 
 私はため息なんかついてちゃだめな人間なのだ。
 いつでもどんな時でも楽し気で、笑顔でいなくちゃならない。少なくとも私はそう思っている。
 なのにこのため息は何よ。
 さっきまであんなに楽しい時間を過ごしていたじゃない。
 友人と皆で遊んで、勉強して、恋を応援したりして、こんなに人生で恵まれていると思えている時間は無いんじゃないかってくらいに毎日が目まぐるしくて、楽しくて。
 最近の私は以前と比べて心の底から笑える瞬間が増えたように思う。
 うわべの笑顔じゃなくて、心からの笑顔。
 それはきっと、私の周りにいる人たちのお陰。
 本当に大切に思える友人が出来て、ほんの少し浮かれてしまっているのだろう。
 私は親友である彼女の顔を心に思い浮かべる。
 彼女の事を思い出すだけで温かい気持ちになる。
 彼女は本当に優しい娘で、可愛くて、愛くるしくて。本当に大切な友達。
 私は足をばたばたとさせながら冷めた布団の感触に熱を帯びた身体を押しつける。そうでもしないと胸の疼きが止まらなくなりそうだから。
 彼女が好き。本当に大好き。私の大切な一番の親友。
 そんなだから彼女が彼の事を好きだと気づいた時は嬉しかった。
 彼女の好意を目の当たりにする時、私はこの娘の喜ぶ顔が見たいって思ったから。すぐさま応援しようって素直に思えたんだ。
 彼の事を話す彼女の表情が羨ましくて、本当に可愛くて。
 だから私は私のやりたいと思う事をやりたいようにやる。彼女の事を応援する。ただそれだけ。
 彼にあんな事を言ってしまったけれど。
 今この瞬間もこれで良かったんだって思えてるから大丈夫。
 彼にあんな顔をさせてしまったけれど。
 最後はきっとみんな笑っていられると思うから。
 きっと、大丈夫。

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