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私のわがままな自己主張 (改訂版)

とみQ

 次の日。早速朝から椎名と工藤が勉強会について絡んできた。


「ほら! やっぱりこういうことは美奈が頼むのが一番なのよ!」


 椎名は何故か自信満々のご満悦といった表情で、腰に手を当ててビシッと私の方を指差した。その決めポーズみたいなものは一体何なのか、妙に腹立たしく感じる。


「確かに、俺たちだと既に言質取っているとはいえ、うだうだと渋られる可能性が高いもんな! その点高野なら安心だぜ! 高野ってこう守ってあげたくなるというか、頼まれると断れないというか、とにかく放ってはおけない存在だもんな!」


 工藤も何故か納得した感じでうんうんと頷いている。というかそんな事をさらっと言ってしまって大丈夫なのだろうか。それも本人の前で。当の高野はというと、聞いているのかいないのか、二人の後ろで若干もじもじしている。ふと高野がちらとこちらを見た。その拍子に目が合って、頬が朱に染まっている。


『ごめんね?』


『いや、別に……』


 高野の仕草に反射的に口がそう動いて私達二人だけの会話が成立してしまう。何だか不思議な感覚だ。今ここ場には四人がいて話しているというのに、二人だけで会話するなどとは。


「え? 何それ。ちょっと気持ち悪いわよ工藤くん。ちょっと、気持ち悪いわよ。」


「ちょっ! 2回も言うんじゃねーよ! 傷つくだろーが!」


 工藤の頬にもほんのり赤みが差している。恥ずかしがるなら言わなければいいのにと思わなくも無いが、自分もつい最近似たような経験があるので工藤の言動にも遺憾ながら頷けてしまうのだ。
 そう思うと途端に私も恥ずかしくなった。


「あのっ、とにかく話を進めようよ。えっと、勉強会の日はとりあえず今度の土曜日でいいかな?」


 高野は自分の事を話題に挙げられて、顔を真っ赤にしながら話題を変えようとする。


「まあ曜日はそこでいいのではないか? 後言っておくが当然私は一人しかいない。三人同時にあれもこれもと教えている時間は無いのだ。よってその日までに特に苦手な所に絞って、質問するのはせいぜい一人二、三箇所に厳選してしておいてほしいのだ。出来れば一教科に絞ってもらうのがベストだな」


 それでも質問でかなりの時間が取られるかもしれないが、まあその辺は勉強会という名目上しょうがあるまい。
 私はその話を聞いて絶句している工藤と椎名には気づかない振りをして顔を背けた。
 そのタイミングでチャイムが鳴り、同時に教室に先生が入ってくる。


「では細かいことは放課後にでも決めるとしよう」


「そうね、私も工藤くんも今日から部活もテスト休みにだから時間もあるし」


「おー、そーだな! じゃ、また後で!」


 そう言って席へと戻っていく三人。最後に高野がぺこりと頭だけでお辞儀をして微笑んだ。少し戸惑ったが何もしないのも感じが悪いので私も頭だけ下げておく。
 中間試験と違って期末試験は合計九教科。部活のテスト休みも中間は土日だけだったのに対し、一週間程取られるのだ。
 学生の本分は学業なのだからそれは当然の処置と言えるだろう。
 私はふと四人共比較的時間が空いている日々が続くのだな、などとぼんやりと思いながら外の景色を眺めた。
 今日は朝からどんよりと曇り空だ。昼間は雨が降るらしい。ここを抜ければ梅雨も開けて、いよいよ夏本番となるのだろうか。

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