【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

私は貴方の灯台だから5

「どこの海に行っても、灯里のところに真っ直ぐ帰ってくる。君は俺の灯台だから」

 恋人の言葉に初めて灯里は微笑んだ。

「ん。風の日も嵐の日も、蒼人から見えるように明かりを灯してるからね」

 蒼人は笑おうとして、失敗したような顔になった。

「待ってられないことがこれから沢山あると思う。けど、灯里にはどうしても待っててほしいんだ」

 灯里は茶目っ気を起こした。

「あんまり陸に揚がってこないでいると浮気しちゃうからね」

 言った途端、蒼人は血相を変えた。

「絶対だめだ!」

 言うなり、蒼人は彼女の両頬を手で挟むと、情熱的に唇を重ねてきた。

 灯里も積極的に答える。

 二人の唇が何度も触れて離れては、角度を変えて幾度も触れあう。
 舌がどちらからともなく絡まり合った。

 灯里の手が、覚えていようとしているかのように蒼人の耳たぶや顔の輪郭と後頭部を撫ぜる。

 男の手が刻みつけたいとばかりに彼女の体中を這い回る。
 ヒップのあたりに手が回った時、蒼人は彼女を抱え上げた。

 二人はキスをしながらベッドに近づいて行く。
 ドサリと、マットの上に下ろされた。

「帰ってくるよ」

 灯里の恋しい人は天井の照明を背にして彼女にささやく。
 彼女も、蒼人の耳をはみながら返事をする。

「私が待ってられるように、いっぱい抱いて」

 男の目に狂おしいほどの熱情が灯った。

「ああ」

 喘ぎともつかぬ声で蒼人は返事をすると、彼女に体を重ねた。

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