【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

ひきこもりは途方にくれる6

「人間なんて、自分の気持ちすらままならないの。まして他人なんて、息子だろうが夫だろうが私ごときが変えるなんて無理よ」

 でも、と灯里は反発した。

「ずるくないですか。私が蒼人と一緒にいるためには海への恐怖を克服しなくちゃいけない。なのに、蒼人は私と一緒にいるために、陸へ上がってくれないんです!」 

 陽子はぱちんとウインクを投げて寄越した。 

「それこそ、『惚れた者負け』ね?」

 灯里はう、と詰まった。

「海野の男達はね、多分生まれる前から海に恋してきたの」

 自分や灯里こそが、彼らの『恋』に割り込んできた闖入者なのだと陽子は言う。

「あの人達からすると、一〇〇パーセント海のことしか考えてなかった頭に、女の人が割り込んできただけでも、天が轟いて地が裂けるぐらいの心地なのよ」

 ペリーの黒船以上じゃないかしら。

「物事はシンプルなの。灯里さんが蒼人と一緒にいたいか、いたくないか」

 それだけだという。

「そこに蒼人の気持ちを忖度する必要はないの。灯里さんが彼と一緒に時間を過ごしたいか、過ごしたくないか、なのよ」

 決まっている。
 一緒にいたい。

「ですが」

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