【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

ひきこもりは途方にくれる

 どれだけ閉じこもっていたろう。
 会社には休職すると伝えた。

 清水からは『PTSDについてカウンセリングを受けられる、その援助を会社がしてくれる』と連絡があったが返信をしていない。

 ぶぶ。
 携帯が震えた。

 ぼんやりと見れば、SMSが送られてきた。
 発信元は蒼人と出会ったケアハウスになっている。

『灯里さん? 陽子です。しばらく灯里さんのお顔が見れなくて寂しいわ。お元気かしら』

 あの老婦人なら、自分の苦しみを解ってくれるだろうか。
 灯里はふらふらと、立ち上がった。

「灯里さん!」

 ケアハウスに着くと受付の女性が出迎えてくれた。

「こんなにやつれてしまわれて! こちらです、奥様がお待ちですよ」

 抱きかかえんばかりに連れていってくれた応接室には、陽子が待っていた。

「灯里さん」

 陽子が両手を広げる。 
 灯里は彼女のひざに縋って泣き出した。

「そうなの……遭難した恐怖で、PTSDを発症してしまわれたのね」

 蒼人から報告され、灯里からも申告されて陽子はしみじみとつぶやいた。

「ご存じかしら。灯里さん、私は蒼人の祖母なんです」

 灯里はパッと顔を上げた。

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