【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

蒼い悪夢11

 灯里は不安な目で周りを見渡した。
 ベッドの横にはバラの花束が置いてある。

 壁に取り付けてあるランプ、丸い舷窓。
 優しく揺すぶられ、チャプチャプという音。

 蒼人の口が恐ろしい答えを言おうとしている。
 聞いたのは自分だ。 
 けれど、もしやと思っていることを確定したくない。

 言わないで。
 しかし、蒼人は言葉を発した。

「ヨットの中」
「あ、あ、あぁぁぁ」

 灯里は悲鳴をあげた。

「灯里っ」

 水は揺籠、母なるものであり親友であったのに、ああの一瞬で変貌した。

 油断した途端、水色でスカイブルーで青い水の牢獄が灯里を捕まえる。

 必死でもがくのに、そのあぎとは彼女に食らいついて離さない。

 息が出来ない。
 目が回る。
 キリキリ舞させられて圧倒的な水圧が彼女を捩じ切ろうとする。 


 死ぬ。


 深淵なる死が彼女を飲み込もうとする。
 その死への喉元はやはり限りなく青い。

 だが、本当の恐怖と絶望はそれからだった。

 気がつけば空の青さと海の蒼さに灯里は閉じ込められていた。

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