【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

蒼い悪夢8

 デート当日は、自宅で迎えにきてくれる蒼人を待った。

 エンジン音が近づいてきて、車がアパートの前に横付けされた。

「灯里!」

 降りてきた蒼人はサングラスをしている。
 それだけではない、普段ジーンズの男がジャケットとパンツというカジュアルアップしている。

「今日、おしゃれね?」

 見惚れたのを誤魔化すように笑いかけると、蒼人が照れたように笑った。

「灯里もすごく綺麗だ」
「ありがとう」

 肌が真っ黒なときに一目惚れしてしまったラベンダー色のカシュクールのワンピース。
 日焼けしなくなったのと筋肉が落ちたので、なよやかに着こなすことができるようになった。

 歩くたびにワンピースの裾が綺麗に揺れて、蒼人が眩しそうに自分を見つめているのが誇らしい。

「どうぞ、お姫様」 

 蒼人が助手席側のドアを開けてくれる。
 灯里も貴婦人のようにシートへ滑りこんだ。

「車でのデートって初めてじゃない?」

 灯里がはしゃいで話しかける。

「ん。今日は一日休暇だから」

 でもわかっている。
 呼び出しがあれば彼は申し訳なさそうに、でもUターンしてしまうのだろう。

 ずきん。
 灯里を置いて、蒼人が海に行ってしまう。

 鼻歌でも歌いかねないご機嫌な蒼人は、横でうつむいた灯里に気づかなかった。

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