【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

蒼い悪夢5

 第三菅区 海上保安本部横浜海上保安部。

 世界有数の混雑海域である東京湾、海の難所である鹿島灘・遠州灘を管轄地域に内包している。

 また、マリンレジャーが盛んなマリーナも数多く存在する。そのため事故も、事件も多い。 

 船舶安全航行だけではなく、災害防除(事故災害対策、油防除活動など)及び環境保全、海難救助に尽力している。

「クォラ、蒼人っ! なに見とるんだ!」

 申し送りが終わり、次の班へ当直ワッチを無事に引き継いだので前日まで宿直だった蒼人は油断していた。

 脱衣所で同じ隊の先輩に、思い切り頭を叩かれる。加減のない力に、しゃがみ込んで頭を抑える。 
 それでも携帯を離さないのはさすがだ。

「いやー……。そろそろ彼女にプロポーズしようかな、なんて」

 はにかんで呟いたのが運の尽き。
 わらわらと男どもが湧いて出てきた。
 一体、どこにそんなに隠れていたのか。

「合コンで知り合ったていう、色っぽいオネーちゃんかっ」

 船長にはがいじめされて頭のてっぺんを拳でぐりぐりされた。
 運用指令センターでの後輩が目を輝かせる。

「確か、うちにイタ電かけてきたおねーさんですよね?」

「間違い電話だっ」

 じろっと蒼人がにらむが、そんなことで怯む男はこの基地にはいない。

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