【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

誤解と怒りと運命の人2

「私はお金目あてじゃないっ、人を馬鹿にするのもいい加減にしてよね!」

 蒼人も蒼人だ。

「ふざけんな、UNNO海運の息子なんて聞いてないっての!」

 前言撤回。
 ムカつくほどそっくりな兄弟だ。

 勿論、お金はあった方がいい。
 けれども灯里は海運会社の息子なんて関係なく、ただの男として蒼人に惹かれていた。

「でも……」

 灯里は気弱な顔になった。

 蒼人のリハビリが完了した。
 確かテストに合格すれば、海に戻ってしまうと言っていなかったか。

 今の蒼人は体力的には遜色ないほど復活したと灯里には思える。
 医療的にも問題ないと確認されてしまえば、いずれ蒼人は自分を恐怖に叩き込んだあの蒼い地獄へ旅立ってしまう。

 自分は震えながら無事を祈るしかない。
 そんな恐ろしいことはできない。

 本音をいえば自分としては蒼人に危険な仕事を辞めてほしい。
 彼の仕事は死と隣り合わせだから。

 櫂斗の申し出は悪魔的に魅力があった。

 彼との結婚を許してもらえ、その上で蒼人が海上保安庁を辞めないまでも陸上職として自分のそばにいてくれたら、どれだけ安心できるだろう。

「けど」

 蒼人は自ら『親父の会社や兄貴を守るため』、海を守るときめた。

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