【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

見合い相手は誰?7

 灯里は呆然とした。
 なにがあったのだろう。

「……もしかしたら。蒼人は私のこと、彼と付き合っているのに蒼人のお兄さんと見合いをしたと思い込んでる?」

 彼から見たらひどい裏切りだ。

 けれど、誰が蒼人に今日の見合い話を教えた?
 付き合ってから、蒼人に兄がいるとは聞いていた。

 蒼人と初めて会ったケアハウスは老人専用の施設だから普通に考えると、肉親が入所しているはずだ。

 先ほどは舞い上がってしまって、自分に都合のいい妄想をしてしまったが、ケアハウスの住人に蒼人の名前は口に出してはいない。

 ケアハウスの住人は灯里が今日の見合いをする事と場所は知っている。
 しかし御曹司相手とは言ってあるが、UNNO海運とは言っていない。

 だとすると。
 ――御曹司だ。

 蒼人が兄だと言った男が、弟に伝えた。

 どう伝えたのかわからないが、蒼人は自分と兄を疑った。

 水温の低い海に潜った時のように、心臓が冷たいなにかに掴まれ手足が冷たくなる。

「誤解なのに」

 断ろうと思って来たのだ。
 蒼人を追いかけねばと思うものの、考えがまとまらず体が動かない。

 彼が気を変えて戻ってきてくれないかとも考えたが、襖は一ミリも動かない。
 

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