【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

御曹司との見合い7

「取引先の御曹司さんはハンサムなの?」

 んー、と灯里は考えこむ。

「遠目にみた感じではそうでしたね。あ、でも彼氏の方が全然素敵ですけどっ」 
 慌ててフォローする灯里に大丈夫、というように陽子がひらひらと手を振った。

「まだ灯里さんは若いのだもの、恋人一筋になることはないのよ」 

 え、と灯里は目を見張った。
 でも……と灯里は言いかけた。
 言葉が最適か頭の中で確認してから、陽子の眼を見てきっぱりと言った。

「私が嫌なんです。お付き合いしている人がいるのに、二股みたいで」

「でもね、隣で見ているの遠くから見てみるのとでは人間は違うものよ」

 陽子は謎めいた微笑を浮かべ、灯里は首をかしげた。

「理想は灯里さんが一歩引いたところから見て、彼氏さんがよりよく見えると嬉しいわよね」

 たしかに。

「けれど、アラが見えるかも。よく言うでしょう、『結婚前は両目で見よ、結婚後は片目をつむれ』って」

 自分は……今、蒼人に盲目だ。
 彼が息をしてるだけで見惚れてしまう。
 話しかけてくれて、触れてくれたら幸せすぎて他には要らないと思える。

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