【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

御曹司との見合い3

「はあ? こっちはねえ『顧客は神様だ』って毎日言い聞かせてるのに『喧嘩売ります買います』の対応する女を雇ってやってんの」

 痛いところをつかれた。
 客と同じ土俵には登らないと日々思っているのに、つい不機嫌な客とバトルして勝ってしまう。

 ――オペレーターとしては 勝ちではない・・・・・・のに。

「甘いことを言うのは彼氏の惚気だけにしなさいよ」
「はーい……」

 清水の見た目は中性的美男子であるが、中身は辛口。わさびアイスクリームのような人物だ。
 しかし仕事はできる。
 そして、嘘は言わないので、灯里は友人としても上司としても信頼している。
 しかし。

「むーちゃんだって、オペレーターは時代には武闘派だったくせに」

 灯里がにらむと、清水はてへぺろという表情をして見せた。

 彼は入って数日のジュニアスタッフのときから『クレームはスーパーヴァイザーやカスタマーサービスセンターではなく、清水にやらせろ』と上席に言わしめた。
 今でも特級がくれば、清水があたる。

「たしかにねー。話が来たときに、どうして美咲ちゃんなのかしらとは僕も思ったわよ? いいお話過ぎて、詐欺かと思ったもの。僕が見合いしたいくらい」

 本当にこの上司は正直すぎる。

「……むーちゃんが男性だという点は置いておいて、既婚者だからじゃない?」

 きいいっと清水はハンカチを噛み締める真似をした。

「だって、マイワイフとマイベイビーを愛してるんだものっ。いくらイケメンで金持ちでも愛人なんてできないわようっ、はともかくとしてお願い、見合いして!」

 上司はミーティングルームのデスクにがばりと手をついた。

 拝まれましても。

「私に彼氏がいること、むーちゃん知ってるよね?」

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