【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

兄からの電話2

「……ああ」

 蒼人は兄の言葉で不快に終わった邂逅を思い出した。

 怪我をして入院し、手術も終わったので退院したと兄にメールを送った。

 兄からいきなり祖母へ顔出しをしろと命令され、押し問答の末しかたなし、共に祖母を見舞った。

 すると、海上保安庁をやめろと言われたのだ。
 陸に揚がって家業を手伝えと。

「あれは兄貴が!」

 怪我は海でしたものじゃない、陸で人助けをした結果だ。
 海の航行は注意している限り、何より安全だ。
 兄貴もわかっているだろう。

 だがお前は海難や事故、海賊を取り締まる仕事だ。
 UNNO海運の御曹司がしていい仕事じゃない。

 だったら兄貴だって、社長の勉強もせずに船乗りをしているじゃないか!

 二人の主張は並行線で、兄は海保をやめろの一点張り。

 蒼人がどんなに、救難についてブリーフィングを重ねているか。二次遭難を出さないよう、いかに細心の注意を払っているか。
 説明をしても、兄は聞く耳を持たない。

 我ながら餓鬼っぽい所業と思いながらも祖母の病室を飛び出した。

『車椅子で玄関で泣きべソかいてると思ったら、女性の車に乗り込んでいたお前をみた』

 見られてたのか。

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