【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

視察2

 灯里は慌てて自分の体を見渡した。
 ワンピースから露出している腕にもキスマークなどついてはいない。

 いかにも情事の痕をさがしていますという風情の彼女の様子に、上司はみるみるへのじに口をひんまげた。

「美咲ちゃん、無自覚すぎ! 大体、いつも首ののびたTシャツにジーンズ女がゆるゆるフワフワの格好して! 髪は巻いたのが取れかかってて、極めつきはお肌が内面から光輝いてるじゃないのよ!」

「やん」

 灯里はパッと両頬に手を当てた。
 以前の彼女にはそんななよやかなリアクションは望めなかった。
 上司は甘すぎて砂を吐きたいという顔をしつつ、目が笑っている。

「そういうとこよ。美咲ちゃん、『男できて、私幸せです』ってオーラを無駄に放散させてんの! ……あー、だから貴女は知らなかったんだ、そーかそーか」

 勝手に納得し出した清水に、灯里は疑問を思い出した。

「私が休みだったこととこの美麗空間、なんか関係ある?」

 聞けば、上司はずいと顔を近づけてきた。

「大ありよ! 昨日、美咲ちゃんが彼ピといやんアハンしてる時にね」

「むーちゃん、さすがにお下品」

 灯里は頬を染めつつ、清水に抗議した。

 その通りだったが首肯するのはさすがに照れくさい。

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