【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

俺のことを考えて6

 そっぽを向いた耳元が赤い。
 灯里は彼の手を握った。
 蒼人が振り返る。

「楽しもっ」

 灯里が太陽のように笑いかけると、蒼人は嬉しそうに微笑んだ。

「ああ」

 蒼人が行こうと誘ってくれたのはショッピングセンター、ギャラリー、レストランやホテルが入っている複合施設。
 最初は服屋。

「蒼人、これ似合いそー」

 灯里が蒼人をひっぱってはショップの中に連れていく。
 スタイルがよく、姿勢がいいのでカジュアルでもワイルドでもピタリと決まってしまう。
 
 灯里と店員はテンション上がりまくりだった。
 彼女つい、携帯でバシャバシャと写真を撮りまくった。
 すると店員が遠慮しながらも一般モデルとして蒼人の写真を店頭に飾らせてくれないかと訊ねてきた。

 嫌だな。
 我ながら心のせまいことを灯里は考えてしまった。

 蒼人はかっこいいが、万人と共有したくない。
 しかし、彼に対して灯里がそんなことを強制する権利はない。

 ――蒼人はどうするのかな。

 ちら、と彼を見上げれば蒼人はすまなそうに微笑んだ。

「すみません、公務員なもので」
「あ、ハイ」

 店員はぺこりと頭を下げて引き下がってくれた。

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