【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

蒼人一色の日々32

 デート兼用リハビリを続けるうち、蒼人は休まずに歩ける距離が長くなってきた。

 杖ももう使っていない。
 相変わらず、灯里の家にくる時には懸垂と腕立て伏せと腹筋をするが、それぞれ百回はするようになった。

 蒼人の顔は明るくなっていき、灯里も喜んだものの彼女の心の中にはどんどん不安のようなものが育っていった。

 そんな中。

「灯里。今度うちにきてみる?」

 リハビリデートのあと、灯里の部屋でくつろいでいると、蒼人から珍しく誘われた。

「いいのっ?」

 灯里は目をキラキラさせて聞き返した。

 彼の部屋に行った時のことを想像する。
 男っぽいんだろうか、シンプルなんだろうか。
 部屋はベッド? 畳? 
 あんまり古いと、激しく動いたときに下の階に響かないだろうか。 

 ……ちょっと妄想がすぎて灯里は赤面した。

「蒼人の家ってどんな感じ?」

 見た目は団地だという。

「帰って寝るだけだからね、布団とテーブルがあるくらいかな。……あれ、カーテンあったかな」

 慌てたように蒼人が言い出した。
 雨戸があるのかと思ったら、そんなものもないらしい。
 だとすると。

「え? カーテンなくて眠れるの?」

「ん。玄関のドアを開けたら真っ暗だから、そのまま」

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