【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

蒼人一色の日々25

 慌てて座り直す。
 ……足の合間が蒼人の太ももに当たっている。
 筋肉が捩れるのも内腿にダイレクトに伝わってしまう。
 灯里は妙な気分になってきた。

 ぐん!
 再び、蒼人が間近に迫ってきた。
 彼の端正な顔が目を閉じろと言っているようで、灯里は目を閉じる。

 男の唇がさっと、彼女の唇に触れていく。

「ん」
「二回」

 蒼人が去っていく。
 風のように触れては、つかまえる前に通り過ぎていく。
 灯里は三回目からは目を閉じ、うっとりした表情でキスを待つ。

 ぐん!
 三十回ほどしたあと、蒼人は起き上がれなくなった。

「うわー、筋肉落ちてる。やばいわ」

 唸っている男がいたが。
 セックスの時のように汗まみれで真剣な顔が近づいてはキスを奪われて、灯里としてはヘロヘロになっていた。

「でも、灯里にキスできるし、真っ赤になった顔が見れるし、なにより太ももの感触が最高」

 キリリとした顔で言われましても。
 本人が多少えっちに楽しみながら筋トレしてるのに。
 灯里は『すっかりやましい気持ちになりました』などとは言えない。

 真っ赤な顔を明後日の方向に向けてしまった灯里を、蒼人はどう思ったのか。

「灯里、仰向けに寝そべって」

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