【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

蒼人一色の日々18

 今日はここまで。
 灯里は考えた。
 迫ってこないところを見ると、蒼人もそう思っているのだろう。 

 ……本音のところは欲しくてたまらない、全然足りない。
 けれど明日も仕事で、実際のところは体力の限界である。

 灯里は冷蔵庫から二本のスポーツドリンクを取り出し、一本を蒼人に渡した。
 栓をひねると、蒼人はぐいぐいと飲み出した。
 ごくごくと嚥下していく喉仏がセクシーで灯里は見惚れてしまう。

 蒼人は一口でほぼ半分以上を飲み干してから、プァっと息を吐いた。

「生き返ったァー」

 にっこりと笑う。あまりに綺麗な笑顔にしばし、見惚れた。

「灯里、この家に俺のもの持ち込んでいい?」

 真顔で聞かれた。
 は、と我にかえる。
 ということは。

「いい、けど」

 灯里は面映く感じながら答える。

「けど?」

 彼女を見つめる男の目はとても真剣で。

「蒼人の方が仕事大変でしょ? 私が蒼人の家に泊まりに行こうか」

 おずおずと提案してみたら、破顔された。

「いつでも来ていいよ。合鍵を作っておく。でも、夜こんな風に会いたくなった時は女の子に外を歩かせるわけに行かないから。俺が来ていい?」

「ん」

 灯里も微笑んだ。
 自分のことを気遣ってくれる男を嬉しく思う。

 それはそうと始発が動くまであと、数時間もない。
 少しでも寝ないと、体がもたない。

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