【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

蒼人一色の日々17

 玄関で繋がり達した二人は息がととのうと、灯里のベッドに向かう。
 蒼人は片手に杖をつき、灯里が彼のもう片方の杖がわりに男を支えた。

 彼女は玄関からベッドまでをそっと目で確認した。
 せまいワンルームだ、十メートルも距離があるわけではない。
 ――なのに、ベッドまでたどり着けなかったなんて。

 どれだけ二人はがっつきあっていたのか。
 ともあれ互いにむさぼりあい、満足した。

 蒼人がよろける。

「大丈夫?」
「……じゃない」

 灯里が気がかりそうに聞くと、蒼人は答えた。
 え、と灯里が蒼人を見つめる。
 すると彼はいやに真剣な顔でつぶやいた。

「俺、もうクタクタ。でも、まだ足りないんだ」

 灯里は彼の言葉を噛み締めて、理解してから真っ赤になった。

「……私も……」

 小さな呟きだったが、蒼人にしっかりと聴こえたようで、灯里に触れている男の体にぐ、と力が入る。

 が。
 聞いた方も答える方も、かすれ声だった。
 原因について思いいたって、灯里は赤面した。
 ふと見れば、蒼人も同様らしい。

「ちょっと激しい運動・・だったかな」

 蒼人が照れくさそうに言う。

「そう、だね」

 灯里の返事も我ながら消え入りそうだ。

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