【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

蒼人一色の日々14

 蒼人は大丈夫だろうか。
 彼は出港しない、無事だ。

 灯里は言い聞かせて電話をとり続けた。

 休憩時間になると、灯里は携帯を確認する。
 しかし、蒼人からの連絡はない。
 不安で不安で胃が痛くなりそうだった。
 実際、キリキリとしてきた。

 鶴亀はホワイト企業だから、具合が悪いと言えばビル内にある診察室に行くことも可能だ。
 しかし、上司である清水達も電話をとっているなか、『付き合っている人が心配なので』と仕事を中断するわけにも行かない。

 PTSDを発症した時に処方されたクスリを灯里は飲んでやり過ごす。

 昼休みというか、あと五分で十七時という頃合いに灯里はようやく昼食にありつけた。

 食べるのもとりあえず、灯里は携帯の電源をオンにする。

『心配しないで』

 一言だけだったが、蒼人からメッセージが入っていた。
 携帯を握りしめた。
 大変だろうに、忙しいだろうに灯里を思い出してくれたことがどうしようもなく嬉しい。

 ホッとしたあまり泣きそうになり、慌ててくしゃみをしたフリをして誤魔化す。

 灯里は携帯の画面を撫でた。

「会えたら、たくさん話をしようね」

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