【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

蒼人一色の日々13

 翌日から、台風の影響で日本は各地で悪天候だった。

 傘がおちょこになる。
 電車が各地で遅延し、コールセンターの出勤スタッフにも何人か出て来れない者がいた。

 必然的に一人が捌く電話の件数は多くなる。
 灯里は地下鉄なので、早めに出勤した。

 長靴のままだとタイル張りの床でキュ、キュ、と鳴って可愛いのでオフィス用においてあるサンダルに履き替える。

「九州全体で遅配が発生しています。また、東名高速も事故で渋滞中。お客様からの『届かない』電話が多くなると思いますので、謝罪を言い忘れないようにしましょう」

 清水が朝礼で言えば、オペレーターの顔がますます厳しいものになった。

 コールセンターと全国の天気は密接な関係がある。

 そもそも悪天候→外出を控える→コールセンターへの電話が増える、に加えて。遅配についての状況確認の入電が増える。

「『風が吹くと桶屋が儲かる』ってまったく昔の人はうまいこと言いやがったもんよね。東北以北はまだ影響ないけど、西は大荒れだから東からもバンバン連絡入るからね!」

 だから、むーちゃん。
 君は三十代なのに言うことが親父……ではなくて渋すぎないだろうか。

 ツッコむまもなく灯里達オペレーターは、対応しても対応しても鳴り響く電話対応に追われた。

 灯里は後処理をしながら、ふと視線を外にやった。

 ざあざあと雨風がコールセンターの窓に叩きつけられている。

 この分では山はおろか、海もさぞ荒れているだろう。

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