【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

蒼人一色の日々6

 待機している間に、うつらうつら船を漕いでいるのがバレるのは非常に恥ずかしい。

 かと言って、清水のように「暇なくらいならクレームの電話がきた方が目が覚めるし、あっという間に時間が経っていいわー」などと豪胆な発言はできない。

 クレームに巻き込まれるくらいなら暇でいい。
 それにアイドリングタイムこそ、自社の商品チェックをして顧客からのどんな質問にも答えられるようにしておきたい。
 ついでに言うなら、お腹を満たして昼寝したいという生理的欲求にあてたい。   

 ……なのだが。

「却下」

 灯里の主張は残り四人から反対されてしまった。 

「はーい、四対一ね。あんた達、十一時半ぴったりにはパソコンをオフにするのよ?」

 上司命令であるので、メンバーがはぁーいといい返事をする。

 こっそり逃げちゃおうかな。
 考えを見透かされたように、清水にジロリと睨まれた。

「美咲ちゃん、わざと二分前の電話を取らないようにね」

 なぜか鶴亀通販コールセンターは終業二分前に電話が必ず鳴る。
 そしてその電話は大抵長引くのだ。

 うへえ、という顔をしたメンバーをよそに、灯里だけはチェ、と思った。

 ――今日だけは面倒くさい電話、大歓迎だったのに。

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