【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

蒼人一色の日々4

 でも、彼は車椅子を使うような大怪我をしたのだから、治ったとしても船上勤務は免除されるかもしれないと考え直す。

 陸だったら、異動先がどこでも自分は行く。

 耳の向こうで、あ、と息を呑む声が聞こえた。
 時間を確認したのかもしれない。

『そろそろ休憩時間終わりだ。また連絡する』
「待ってる」

 そして、通話は終わった。

 はあー。
 幸福に塗れた息を吐き出す。
 けれど。

「ずっと陸上勤務だったらいいのに」

 彼女の唇は知らず、つぶやいていた。



 翌日。
 出勤した途端、灯里は合コンのメンツに囲まれた。なぜか、清水も当然のように混ざっている。

「まさか開始一時間もしないうちにお持ち帰りされるなんて!」

「首尾はっ」

 目をキラキラさせて迫ってくるメンバーに、灯里は黙ってVサインをした。

 耳が赤くなるのがわかる。

 とてもではないが、誰の顔も見ることができず床に目を落とした。

 きゃあああっと歓声に包まれる。
 清水にがしっ!と首へ腕を回された。

「今日は美咲ちゃんに焼肉定食を奢ってもらうしかないわねぇー」

 うんうん、とメンバーもうなずいている。
 なぜに、と思うが抗うすべはない。

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