【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

蒼人一色の日々2

 自分は騙し手というか、禁じ手で蒼人の気を惹くことができた。

 確か『デートする女の子を見つけるために陸に上がった』みたいなことを言っていたから、ちょうど恋人がいない時期だったのだろう。

 飽きられないように、多少は努力しなければ。

「『灯里は柔らかくて気持ちいい』って言ってくれたから、そこまでバッキバキにならなくてよし!」

 ふんす、と鼻息荒く思った。とりあえず、腹筋とスクワットと上体捻りだ。

 上腕部のたるんたるんもなんとかしないといけない。

 ……無理は禁物。そう、十回分くらい見劣りしないくらいで。

 肌の透明度を増すための食べ物も摂ろう。
 本当の美女は無理でも素肌美人になら、なれる。  けれど、一日にしてならずだ。

「……蒼人」

 想い人のことを考えてしまったら、もうだめだった。

「あんなにかっこいい人が私の彼氏だなんて」

 カジュアルな装いだったがセンスはよかった。
 まるでドラマの主人公になってしまったみたいだ。

「夢みたい」

 覚めないでほしいと思っているのに、プルルルと携帯のアラームが啼り出した。

 やっぱり夢だったのか。

「あと十分。……あれ?」

 リアルに携帯が鳴っていた。

 拾い上げてみれば、登録したばかりに【海野蒼人】と表示されている。

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