【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

連れ出したくて、付き合いたかった13

 蒼人にとって自分は特別な存在のようで嬉しくなる。
 彼が灯里の顔を覗き込んできた。
 いやに真剣な顔である。

「なあ、俺達。出会えて再会して。かなり『運命の人』っぽくない?」

 蒼人が自分と同じようなことを考えてくれたので、灯里は微笑んだ。
 彼は灯里の笑みを誤解したようだ。

 蒼人は灯里の双眸をのぞき込んだ。

「気障とか、ナンパとか思ってる? でも、俺真剣に思ってて」

 自分に誤解されたくないと思っている必死さが伝わってきて、嬉しい。

「うん」

 じつは灯里も合コン場所で彼を見つけてから『運命』かと考えていた。
 名前も連絡先も知らない人間同士が再会したのだ、そう思っても不思議はない。

 灯里は幸せな思いに浸りながら、私もそう思っていたの、とささやいた。

 蒼人がほっとしたような笑顔になって言う。

「大事にするよ、灯里」

 言いながら、蒼人は唇を重ねてきた。

「私も。……ん、やあ、蒼人…」

 キスを交わしながら蒼人の手がけだるい余韻を抱えた体の上を這い回り、快楽の熾火を発火させていく。

「ごめん、もう一回」
「無理しちゃ、だめ……」

 男の首を抱き寄せながら出した甘ったるい声は、我ながら全く抑止力がない。

「大丈夫だから、な?」

 恋人の甘いねだりに、明日が休みな灯里は断る理由がなかった。

「ん……」




 フロントから時間終了の電話が鳴った時、二人は連絡先を交換した。
 灯里が駅まで車椅子を押しながら尽きることなく話し合った。
 

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