【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

連れ出したくて、付き合いたかった8

 ボソボソとつぶやく灯里になにを思ったのか。

「……その男と付き合いたかったりする?」

 海野が静かに聞いてきて、灯里は数秒経ってから首を横に振った。

 海野と会うまではそうだった。
 けれど、今の自分は『もう、貴方のことしか考えられないのだ』と言いたい。

 でも、初めて逢った日に淫らなことをしてしまった女がそんなことを言ってしまったら、軽いと思われるかもしれない。

 手遅れかもしれないが、信じてほしい。
 貴方に夢中なのだと。

 体から始まる恋は、持て余した欲と火照った体を恋の熱だと自分に言い聞かせるような、嘘くささがある。

 それでも、自分の秘するところを見られた男と一緒に眠ってしまえば、体だけではなく心も彼に対して開け放たれてしまう。

 止めようとしてもどうしようもない気持ちは、少なくとも本物だということを彼にわかってほしい。

 どう言えばいいのだろう。
 考えていて、俯いてしまっていると。

「美咲さんの彼氏に立候補するの、俺じゃだめ?」

 信じられないことを言われた。

 ビッチと思われているのかと考えていた。
 蔑ずまれて劣情だけ示されるのかと思っていたのに。

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