【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを
合コン当日2
鏡を見てためいきをついた。
潤んだ瞳。
紅潮した頬。
半開きのしどけない唇。
我ながらこの一週間で一番エロい。
「よりによって海保との合コン当日に」
この情念を封じ込めなければ、フェロモンぷんぷんのエロティックガールになれる。
ワンナイトラブ目的の男性を釣りあげることも可能かもしれない。
けれど、灯里が目指している女ではない。
『あんた達にエロティックとエロの違いがわかるかしら? どこかの男に一度エロ女認定されたら、未来永劫そいつの本命には下剋上しないわよ』
とは、新規システム導入時にいきなりぶちこんできた清水の言葉である。
皆、背筋を伸ばして、ほほうと聞き入る。
女子たるもの、ターゲットを狩る秘訣は聞き逃さない。
聴衆のギラギラな目に上司はうなずいた。
『いいこと? 僕も含めて男って生き物は、出来る女と出来ない女を簡単に、しかも冷酷に見極めてるの』
スタッフから、どういう風に?との質問がとぶ。
『仕事が出来て、セックス出来ない女は高嶺の花。知性があるエロティックはセクシーよね。反対に仕事ができなくてセックスが出来る女は、単なるエロ。ホテルに連れ込んだとしても、自宅にお持ち帰りしないわ』
なるほど、と何人かがうなずく。
おそらく彼女達は、男性にジャッジメントされて冷酷にシャッターを下ろされた瞬間を思い出したのだろう。
上司は寝ぼけていた灯里の額にびし!と指をつきつけた。
『これは男の協定を破ってるの。僕の子分になった子たちだから教えてあげんのよ!』
清水の名言どおり、セクシーを頑張ってもエロは封印する。
それにしても。
はあああああーっ、と灯里は大きなため息をつた。
「今日、ようやく念願の海保との合コンだったのに」
車椅子の男性とのひと時があまりに鮮烈で、あれほど焦がれていた海上保安庁の職員との顔合わせがまったく嬉しくない。
どうして『彼』と出会うのが、合コンの一週間後でなかったのだろうか。
通りすがりの一夜ですらない、二時間余りの邂逅。
『車椅子の男性へ操を立てるなんてナンセンス』と理性は説教を試みるのに、感情となにより体が反発する。
「行きたくない」
仕事は行かないと生活に直結するから仕方なく出勤するが、仕事が終わったらとっとと帰りたい。
正直、さっさと眠って彼との夢に溺れていたい。
自分はどれだけあの男性に溺れてしまったのだ。
馬鹿なことを言っている自覚はある。
「断れないかな」
それなのに、朝食の用意をしながら独り言ちる。
ひどいことを言ってる自覚もある。
なんせ、この合コンを上司を拝み倒してセッティングしてもらったのは、灯里本人なのだ。
それでも気持ちが向かない。
灯里の職場はコールセンターなので、合コンを持ち掛ければ当日でも喜んで代わってくれる女性はたくさんいるのだが。
「……無理」
合コン相手が海保である。
相手側の参加メンバーがどんな職務かは知らないが、もしかすると事故発生時には現場に急行してしまう人達かもしれない。
だとすると、ピンチヒッターを頼んでおきながら、相手側都合によりドタキャンに付き合わせてしまう可能性もある。
いくら会費を灯里が負担しても、非道すぎる。
逆に合コンをしている女性は誘えない。
潤んだ瞳。
紅潮した頬。
半開きのしどけない唇。
我ながらこの一週間で一番エロい。
「よりによって海保との合コン当日に」
この情念を封じ込めなければ、フェロモンぷんぷんのエロティックガールになれる。
ワンナイトラブ目的の男性を釣りあげることも可能かもしれない。
けれど、灯里が目指している女ではない。
『あんた達にエロティックとエロの違いがわかるかしら? どこかの男に一度エロ女認定されたら、未来永劫そいつの本命には下剋上しないわよ』
とは、新規システム導入時にいきなりぶちこんできた清水の言葉である。
皆、背筋を伸ばして、ほほうと聞き入る。
女子たるもの、ターゲットを狩る秘訣は聞き逃さない。
聴衆のギラギラな目に上司はうなずいた。
『いいこと? 僕も含めて男って生き物は、出来る女と出来ない女を簡単に、しかも冷酷に見極めてるの』
スタッフから、どういう風に?との質問がとぶ。
『仕事が出来て、セックス出来ない女は高嶺の花。知性があるエロティックはセクシーよね。反対に仕事ができなくてセックスが出来る女は、単なるエロ。ホテルに連れ込んだとしても、自宅にお持ち帰りしないわ』
なるほど、と何人かがうなずく。
おそらく彼女達は、男性にジャッジメントされて冷酷にシャッターを下ろされた瞬間を思い出したのだろう。
上司は寝ぼけていた灯里の額にびし!と指をつきつけた。
『これは男の協定を破ってるの。僕の子分になった子たちだから教えてあげんのよ!』
清水の名言どおり、セクシーを頑張ってもエロは封印する。
それにしても。
はあああああーっ、と灯里は大きなため息をつた。
「今日、ようやく念願の海保との合コンだったのに」
車椅子の男性とのひと時があまりに鮮烈で、あれほど焦がれていた海上保安庁の職員との顔合わせがまったく嬉しくない。
どうして『彼』と出会うのが、合コンの一週間後でなかったのだろうか。
通りすがりの一夜ですらない、二時間余りの邂逅。
『車椅子の男性へ操を立てるなんてナンセンス』と理性は説教を試みるのに、感情となにより体が反発する。
「行きたくない」
仕事は行かないと生活に直結するから仕方なく出勤するが、仕事が終わったらとっとと帰りたい。
正直、さっさと眠って彼との夢に溺れていたい。
自分はどれだけあの男性に溺れてしまったのだ。
馬鹿なことを言っている自覚はある。
「断れないかな」
それなのに、朝食の用意をしながら独り言ちる。
ひどいことを言ってる自覚もある。
なんせ、この合コンを上司を拝み倒してセッティングしてもらったのは、灯里本人なのだ。
それでも気持ちが向かない。
灯里の職場はコールセンターなので、合コンを持ち掛ければ当日でも喜んで代わってくれる女性はたくさんいるのだが。
「……無理」
合コン相手が海保である。
相手側の参加メンバーがどんな職務かは知らないが、もしかすると事故発生時には現場に急行してしまう人達かもしれない。
だとすると、ピンチヒッターを頼んでおきながら、相手側都合によりドタキャンに付き合わせてしまう可能性もある。
いくら会費を灯里が負担しても、非道すぎる。
逆に合コンをしている女性は誘えない。
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