【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを
出会いはケアハウス15
「起きた?」
男性の声がした。
目を開ければ見慣れない室内で、車椅子の男性が腕枕をしてくれていた。
灯里は目をまんまるくした。
状況が読めない。
「ここ、ラブホ」
男性に言われて、ガバリと身を起こした。
くらりとして額を抑える。
「あぶねっ」
よろけた体を男性がとっさに腕を伸ばして支えてくれて、もう一度マットレスに寝かしつけられた。
「悪いことをするつもりで連れ込んだんじゃないよ。だから焦らないで」
何か言ってくれているが、男性の言葉は灯里の耳を素通りしている。
既視感。
いつだったか、体を起こされたが自分で支えきれなくて、こんなふうに抱き止められたことがある。
どこで。
誰に?
耳元で声がした。
「聞こえてる? 君は運転しながら貧血起こしたんだ。覚えてる?」
灯里はうなずいた。
なにかを考えている途中に、手足がすうっと冷たくなっていったことを覚えている。
……自分は運転中になにを考えていたのだろうか。
自分の胸元を見れば、胸元のボタンが外されていた。
ブラジャーが見える。
ゆったりしているのは、おそらくブラジャーのホックも外されているからだろう。
男性は、灯里が呼吸がしやすいように緩めてくれたのだ。
「ご迷惑をおかけしました」
あまり頭を下げるとまた眩暈がするかもしれない。言葉だけでも、男性は灯里が感謝しているのをわかってくれたようだ。
「なんの。元々、こっちがヒッチハイクさせてもらったんだし。乗りかかった船っていうか」
ニコ、と笑ってくれた。
なんだろう、この人の笑みはとても安心できる。
ずっと見ていたい。
灯里は視線を男性から外せなかった。
すると、居たたまれなくなったようで男性がモジモジしだした。
悪いと思いつつ、じっとみつめてしまう。
プルルル。
突然鳴り出した音に、体が飛び上がりそうになった。
音が出るものを探せば、ベッドボードに設置されている電話が光っている。
もう、この部屋を出る時間なのだろう。
まだ、一緒にいたいのに。
男性がホッとしたようにみじろぎする。
「帰れそう? 大丈夫?」
「……じゃない」
「え?」
帰りたくない。
貴方と離れたら、全然大丈夫じゃない。
「ちょ、……っン!」
とまどうような男性の言葉はわりと近くから聞こえてきた。
そうだ。
自分の唇とくっついている、彼の唇のあたりから。
吸い寄せられるように灯里は何度も男性の唇にキスしていた。
それから彼の太い首にかじりついた。
「探してたの」
灯里は、彼の耳に息を吹き込んで分厚い胸に自分のふくらみを押しつけながらささやいた。
「なにを、ンぅ」
うるさいことを言いそうな口をふさぐ。
ぷは、と息を吸う時に一息に言った。
「会いたかった。ずっと探してた」
――潜ってないから、肺活量が落ちてる。
それでも、素人より長くキスをしてやったのに、男性はまったく息を切らしてない。
「…………えーと。どこかで、お会いしましたっけ……?」
ようやく男性が、モゴモゴとつぶやく。
「確か初対面、むぐ」
なにか言いたそうに唇を開けたりするから悪い。
彼女はお邪魔します、と呟きながら男性の唇を舌で割って並びのいい歯を舐めた。
電話が急かすように鳴り続けるなか、灯里はキスを繰り返した。
何度目かのキスをしようとした灯里の口を男性の手のひらが塞ぐ。
「俺も男だからさ、こんなことされると本気になるんだけど」
男性の目が男になりつつあった。
灯里はにこりと微笑んだ。
「なって」
男性の声がした。
目を開ければ見慣れない室内で、車椅子の男性が腕枕をしてくれていた。
灯里は目をまんまるくした。
状況が読めない。
「ここ、ラブホ」
男性に言われて、ガバリと身を起こした。
くらりとして額を抑える。
「あぶねっ」
よろけた体を男性がとっさに腕を伸ばして支えてくれて、もう一度マットレスに寝かしつけられた。
「悪いことをするつもりで連れ込んだんじゃないよ。だから焦らないで」
何か言ってくれているが、男性の言葉は灯里の耳を素通りしている。
既視感。
いつだったか、体を起こされたが自分で支えきれなくて、こんなふうに抱き止められたことがある。
どこで。
誰に?
耳元で声がした。
「聞こえてる? 君は運転しながら貧血起こしたんだ。覚えてる?」
灯里はうなずいた。
なにかを考えている途中に、手足がすうっと冷たくなっていったことを覚えている。
……自分は運転中になにを考えていたのだろうか。
自分の胸元を見れば、胸元のボタンが外されていた。
ブラジャーが見える。
ゆったりしているのは、おそらくブラジャーのホックも外されているからだろう。
男性は、灯里が呼吸がしやすいように緩めてくれたのだ。
「ご迷惑をおかけしました」
あまり頭を下げるとまた眩暈がするかもしれない。言葉だけでも、男性は灯里が感謝しているのをわかってくれたようだ。
「なんの。元々、こっちがヒッチハイクさせてもらったんだし。乗りかかった船っていうか」
ニコ、と笑ってくれた。
なんだろう、この人の笑みはとても安心できる。
ずっと見ていたい。
灯里は視線を男性から外せなかった。
すると、居たたまれなくなったようで男性がモジモジしだした。
悪いと思いつつ、じっとみつめてしまう。
プルルル。
突然鳴り出した音に、体が飛び上がりそうになった。
音が出るものを探せば、ベッドボードに設置されている電話が光っている。
もう、この部屋を出る時間なのだろう。
まだ、一緒にいたいのに。
男性がホッとしたようにみじろぎする。
「帰れそう? 大丈夫?」
「……じゃない」
「え?」
帰りたくない。
貴方と離れたら、全然大丈夫じゃない。
「ちょ、……っン!」
とまどうような男性の言葉はわりと近くから聞こえてきた。
そうだ。
自分の唇とくっついている、彼の唇のあたりから。
吸い寄せられるように灯里は何度も男性の唇にキスしていた。
それから彼の太い首にかじりついた。
「探してたの」
灯里は、彼の耳に息を吹き込んで分厚い胸に自分のふくらみを押しつけながらささやいた。
「なにを、ンぅ」
うるさいことを言いそうな口をふさぐ。
ぷは、と息を吸う時に一息に言った。
「会いたかった。ずっと探してた」
――潜ってないから、肺活量が落ちてる。
それでも、素人より長くキスをしてやったのに、男性はまったく息を切らしてない。
「…………えーと。どこかで、お会いしましたっけ……?」
ようやく男性が、モゴモゴとつぶやく。
「確か初対面、むぐ」
なにか言いたそうに唇を開けたりするから悪い。
彼女はお邪魔します、と呟きながら男性の唇を舌で割って並びのいい歯を舐めた。
電話が急かすように鳴り続けるなか、灯里はキスを繰り返した。
何度目かのキスをしようとした灯里の口を男性の手のひらが塞ぐ。
「俺も男だからさ、こんなことされると本気になるんだけど」
男性の目が男になりつつあった。
灯里はにこりと微笑んだ。
「なって」
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