人から聞いた話 パート2

味噌村 幸太郎

採血の話


 僕は昔から採血が苦手というか、怖いわけではないですが……。
 というのも、採血される際に、腕に血管というのでしょうか?
 あれが浮かびにくい身体でして。
 母がそうらしくて、どうやら遺伝みたいです。

 小さい頃、アトピーが酷くて、その治療法として、食事制限などの治療を主にした病院に行ったとき。
 若い看護婦さんが、採血をしてくれたのですが。(多分新人さん)
 中々、血管に入らなくて、針を刺しちゃ抜いてを繰り返すこと、5回。
 僕は注射などで泣いたこともなかったのですが、さすがに6歳でしたので、号泣してしまいました。

 院長が
「ごめんねぇ。この看護婦さんにさせてあげてねぇ」
 と優しく僕を励ましてくれるのですが、いつになったら、この拷問は終わるのかと恐怖を感じました。
 もちろん、看護婦さんも必死に挑戦してくれていたのですが。
 結局、血管に入るまで、相当刺されました。

 それから、大きくなって。
 僕はたまに看護婦さんから言われます。
「いつもどこから打ちます?」
 このセリフを言われた瞬間、ヤバイかも? なんて不安がよぎります。

 もう大人になったので、泣きはしないのですが……。
 三回打たれて、
「私怖い!」
 なんて逃げ出す人がいるんです。
 そして、別の人にチェンジ。
「ダメですねぇ……」
 酷い時は三人、四人も交代されて。

 上手い人は一発で見つけてくれますが。
「ここにあるじゃない! あんた、打ちなさい」
「ええ、怖い~」
「今ここでしなかったら、トラウマになるわよ!」
「いやぁ、ドキドキするぅ~」
 なんて僕の目の前で言われ、結局、一番最初の人に、僕は実験台みたいに扱われるのです。

 もう慣れっこなので、別にいいのですが。
 とまあ、ここまでが前振りです。

 僕の母の友人に看護婦さんがいて。
「幸太郎ちゃんって注射で泣かない? 大きい男ほど泣くんだよ」
 と煽ってきたので、僕は激怒します。
 散々、採血でたらい回しにあっている身なので。
「はぁ? 泣くわけないじゃん! こちとら、何回も打たれまくってんだから!」
 なんて反論すると、その看護婦さんは「ごめん」と素直に謝罪されたというか、申し訳なさそうにしていました。

 僕の幼馴染に看護学校へ入学した女の子がいます。
 で、卒業となって、一つ不安なことがあると……。

 先ほどの先輩看護婦さんとは、共通の友人関係でして。
 僕の実家に集まった際。
「おばちゃん、私怖いわぁ」
「なにが?」
「注射とか採血。実習してないんよ」
「それは現場で覚えるもんだから、仕方ないよ」
「怖ぁい!」
「恐怖は慣れるしかない。こればっかりは、場をこなすしかないよ」

 一連の会話を聞いていた僕は、おばさんに質問しました。

「あのさ。看護学校で実習って一回もしないの?」
「うん。基本ないね」
「じゃあ職場で覚えるものなの?」
「そうだよ」
「……」

 これは20年ぐらい前のお話です。
 今は実習で覚えているかもしれませんね。

 ちなみにですが、最近血管を出すいい方法を習いました。
 腕を下に降ろして、グーパーを繰り返すと、看護婦さんはやりやすいと聞きました。
 本当に効果があるかは、知りませんが……。

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