アナザー・デイズ 1977
第5章 〜 5 危機一髪(3)
5 危機一髪(3)
「お前さんのお友達が、お宅を探しているんだそうだよ。まああれだ……その彼が、何やらいろいろと、やらかしてくれちゃったみたいでね、申し訳ないが、このままお帰りいただく訳にはいかなくなっちまったよ。残念なんだがね……」
そんな言葉を耳にして、達哉は完全に震え上がった。
それから二、三時間は経過して、再び手首の縄が外され、彼は車の後部座席に押し込められた。
ところがいくら経っても走り出さない。
スーツの男は乗り込もうともせずに、表で煙草をふかしていたりする。
一方ハンバーガーの方は運転席に乗り込んで、たまに後部座席の達哉に目を向けるが、それ以外はほぼほぼ前を向いたままなのだ。
そうしてどのくらいが経ったのか? 辺りがかなり薄暗くなって、車にいても気温がどんどん下がっているのが感じられた。
スーツの男はそれでも車に乗り込まず、もしかしたらどこかへ行ってしまったか……?と、車の周りに達哉が目を向けようとした時だ。
いきなり車内に光が当たった。
驚いてフロントガラスに目をやると、ハイビームで近付いてくる車が一台。
そんな認知とほぼ同時、再びスーツの男が達哉の視界に現れたのだ。
「さあて、そろそろだ……」
「本当に、藤木さんは無事なんでしょうね?」
「この先に、車が一台停まっている。その車の中でピンピンしているはずだ。今のところはな……」
そんな声が合図だったように、突然、車のヘッドライトがハイビームになった。
後部座席から前方を覗き込むと、かなり遠くの方に車らしき影はある。そしてそのまま見ていると、車の前に男が二人立っているのが見えた。
「もちろん、このまま、お宅らを返してやってもいい。終わっちまったことに、二度と首を突っ込まないって、しっかり約束できるならだ。それができないなら、お宅ら二人ともドラム缶に詰め込んで、海に沈んでもらうぞ、冷たいコンクリートと……一緒にな」
――一緒にな。
と言ったところで、男は初めて翔太の顔をちゃんと見た。
男の名前は林田哲朗。
養護施設の頃に嫌と言うほど見た顔だったが、顔は感じが驚くくらいに変化していた。
そののっぺりした顔付きは、どう見たって男前とは言えなかったが、微かに愛らしい印象もどこかに感じられたのだ。
ところが今は、愛らしいなんて感じは綺麗さっぱり消え去っている。
その代わり、〝悪行〟を重ねた結果だろうか……言葉にできない凄みが顔全体に沈着し、のっぺり顔がなんとも恐ろしげに映るのだった。
「お前さんのお友達が、お宅を探しているんだそうだよ。まああれだ……その彼が、何やらいろいろと、やらかしてくれちゃったみたいでね、申し訳ないが、このままお帰りいただく訳にはいかなくなっちまったよ。残念なんだがね……」
そんな言葉を耳にして、達哉は完全に震え上がった。
それから二、三時間は経過して、再び手首の縄が外され、彼は車の後部座席に押し込められた。
ところがいくら経っても走り出さない。
スーツの男は乗り込もうともせずに、表で煙草をふかしていたりする。
一方ハンバーガーの方は運転席に乗り込んで、たまに後部座席の達哉に目を向けるが、それ以外はほぼほぼ前を向いたままなのだ。
そうしてどのくらいが経ったのか? 辺りがかなり薄暗くなって、車にいても気温がどんどん下がっているのが感じられた。
スーツの男はそれでも車に乗り込まず、もしかしたらどこかへ行ってしまったか……?と、車の周りに達哉が目を向けようとした時だ。
いきなり車内に光が当たった。
驚いてフロントガラスに目をやると、ハイビームで近付いてくる車が一台。
そんな認知とほぼ同時、再びスーツの男が達哉の視界に現れたのだ。
「さあて、そろそろだ……」
「本当に、藤木さんは無事なんでしょうね?」
「この先に、車が一台停まっている。その車の中でピンピンしているはずだ。今のところはな……」
そんな声が合図だったように、突然、車のヘッドライトがハイビームになった。
後部座席から前方を覗き込むと、かなり遠くの方に車らしき影はある。そしてそのまま見ていると、車の前に男が二人立っているのが見えた。
「もちろん、このまま、お宅らを返してやってもいい。終わっちまったことに、二度と首を突っ込まないって、しっかり約束できるならだ。それができないなら、お宅ら二人ともドラム缶に詰め込んで、海に沈んでもらうぞ、冷たいコンクリートと……一緒にな」
――一緒にな。
と言ったところで、男は初めて翔太の顔をちゃんと見た。
男の名前は林田哲朗。
養護施設の頃に嫌と言うほど見た顔だったが、顔は感じが驚くくらいに変化していた。
そののっぺりした顔付きは、どう見たって男前とは言えなかったが、微かに愛らしい印象もどこかに感じられたのだ。
ところが今は、愛らしいなんて感じは綺麗さっぱり消え去っている。
その代わり、〝悪行〟を重ねた結果だろうか……言葉にできない凄みが顔全体に沈着し、のっぺり顔がなんとも恐ろしげに映るのだった。
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