アナザー・デイズ 1977

kenji sugiuchi

第5章 〜 2  行方(3)

 2  行方(3)
 


 施設にいた頃、彼の死を知らされて、施設長にいろいろ質問した時だ。
 ――どうして、長野の山なんかで?
 ――う〜ん、確か、生まれがその辺じゃなかったかな?
 だから死に場所に選んだんだろうと、確かそんなふうに言ってきたのだ。
 ――だから……なのか?
 ――だから、お前は……?
 なんとも言えない奇遇を感じ、彼は徐になだらかな斜面に目を向けた。
 ここに、あいつらが住んでいた……そんな思いに囚われながら、翔太はそこから引き返し、再び一軒一軒、山口の実家だった家を探していった。
 長野県松本市で生まれ、彼が生まれてすぐに母親が他界。父親も物心付く前に失踪してしまい、彼は親戚の住む山奥の村落に引き取られる。
 きっとそこには三つ年上の荒井がいて、一緒に学校などにも通ったろう。
 ――だからあいつは、あの頃、山口まさとを可愛がっていたのか……。
 そんな荒井は生まれ故郷の山で死体となって、一方山口まさとはどこに行ったか分からない。
 ――あいつは本当に、故郷で死のうとしたんだろうか?
 ――いやいや、そんなことするわけないじゃないか!?
 確かに絵里香のことはショックだろう。
 それでも命を絶とうとまでするか?
 こんなことを考えているうちに、彼は荒井の遺体が見つかった現場へどんどん行きたくなっていく。
 山口まさとの実家を確認する時に、そんなところも一応チェックしておいたのだ。
 地図によれば、山の反対側っていうだけで、そうは遠くじゃない筈だった。
 結局、山口の行方は分からないまま、彼は朽ち果てた集落を後にした。それから地図を頼りに荒井の死に場所を目指して歩き始める。
 一度、かなり山を下って、山の反対側へと続くハイキングコース入り口を目指した。
 そんなハイキングコースをずいぶん外れたところで、彼は一人で酒を飲み、酔った状態で川底へと転がり落ちて死んでいた。
 ――あんなところには、普通なら誰も近付きゃしないさ。
 そう言いながら、この辺なんだと取調べ中の刑事がわざわざ話してくれたのだ。
 きっと彼なりに、翔太の無念を察してくれたせいだろう。地図まで引っ張り出して、現場に出向いた警察官の話をいろいろ教えてくれた。

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