アナザー・デイズ 1977

kenji sugiuchi

第4章  〜 1 ジノ・バネリとマイケル・ジャクソン(5)

 1 ジノ・バネリとマイケル・ジャクソン(5)



「まあさ、分からないけど、そんなのが少しだけ、彼、気になったのかな……」
 決して「怒った」とか「ムカついた」とかそういうのじゃないし、あくまでも勝手な推測なんだと千尋は言って、
「でも、とにかく知り合いにはなったんだから、次はちゃんと会って、例の話をすればいいじゃない?」
 上目使いに達哉を見つめ、ニコッと笑った。
 親と八雲に住んで、なんの苦労もしないで大学に通うヤツが、親に買って貰ったステレオでレコードを聴き、捨てようと思っていたポータブルプレイヤーを千尋のアパートに持ち込んだ。
 ――それで、家にはセパレートステレオもあるぞって、自慢したって、ことか……」
 こんなの自慢か?……などと思いつつも、はっきり言って、これは〝ヤバイ〟って本気で思った。
 それでも千尋の言うように、怒ったってわけじゃきっとない。
 もちろん自慢されたから、気分を害したなんてことでもないだろう。
 ただ少なくとも彼の方には、達哉について、思うところがきっと少しはあったのだ。
 ――ま、そりゃ、そうかもな……。
 まるで異なる環境に暮らす達哉に何かを感じて、距離を取ろうとしたのかもしれない。
 だからって、ここで諦めるわけにはいかないし、千尋が言うように前に進むしか道はなかった。
 

 2 超能力



「じゃあいい? 六時頃にはお店に行くから、その時までに二、三杯くらい飲んでなさいよ。ちょっと酔ってた方が、なんかさ、真実味あるでしょ? あ、一番奥のテーブルだからね……そこんとこ、よろしく!」
 確かに、千尋はこう言って、達哉に笑顔を見せたのだった。
 だから達哉は、一番奥のテーブルに六時頃だと、頭にしっかり刻み込んだ。
 そうして当日、頭にあった通り向かっていると、ずっと前の方から見覚えのあるシルエットが目に入る。
 ――え? もう来たのかよ!?
 と思ったところで気が付いた。
 時計を見ればほぼほぼ六時。
 今頃は、もう二、三杯は飲んどけってことだった。
 そんな事実を知った頃には、やたらノッポのシルエットの横で、明らかに千尋の顔が唖然としている。
 ――どうしよう?
 そう思っているうちに、彼女は一気に顔付きを変え、こちらに大きく手を振った。

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