僕が彼女に執着心を持った時
説得
次の日の昼休み、私は茜ちゃんの説得にかかっていた。
「もし、これから長瀬先輩とお付き合いってことになった時、なんであの時言ってくれなかったの? って長瀬先輩悲しむんじゃないかな。肝心な時に気になったり、好きな子の力になれないのは、男として後悔してしまうって薫さんも言ってたよ。
今後、またお弁当会した時、同じ目に遭うの? また黙ってやられるの?
それより正直に長瀬先輩に話して、長瀬先輩と茜ちゃんと私の3人で、何かしらの対策を考えた方がいいんじゃないかな? その方が、建設的じゃない?」
そう力説すると、茜ちゃんは少し困った顔をしてから、頷いた。
「確かに。映子ちゃん言う通り。
今ね、長瀬さんとラインしてるの。長瀬さん、お弁当会楽しみにしてるって言ってくれてるし、私も同じ気持ち。また同じ目に遭うのは嫌だな。
でも、なんて話せばいいんだろう?」
「大丈夫! 任せて! 私から話しとくよ。
茜ちゃんは安心して、お弁当会楽しみにしててね」
茜ちゃんの顔がパッと笑顔になる。
「映子ちゃん、ありがとう! お弁当のおかず練習して、待ってるね」
なんて健気な茜ちゃん……。
さて、あとはどう長瀬先輩に話すかだなあ。
できれば今日中に話したけれど……。ラインじゃあ、言葉の機微が伝わらないし。やっぱり直接が良いかな。
勤務時間中に長瀬先輩と茜ちゃんについての私事を長々と話すのは気が引けるけれど、勤務にも関わってるしなあ。
「長瀬先輩今日の終業後、少しお時間ありますか?」
隣でパソコンに向かっている長瀬先輩に話しかけると、長瀬先輩は素っ頓狂な声を上げる。
「え? 終業後? うん! どした?」
「茜ちゃんの事です」
私が声を潜めてそう伝えると、顔だけこちらを向いて、身体はパソコンに向かっていた長瀬先輩が、キャスター椅子ごと私に近づいてきた。
「今聞こう!」
「あ、はい。ありがとうございます」
先輩が承諾したんだから、就業時間に話すことを許されたも同然よね。
私は誰にも聞かれない場所で、と提案したら、場所を移そうと提案してくれた。
「給湯室とかどうですか?」と私が尋ねると、「あそこは案外人通りがあって、みんな聞いてるから」と、百貨店のお客様用階段に連れて行かれた。
おお! 本当に人がいない。確かに、お客様はエスカレーターやエレベーターを使うし、さすが長瀬先輩!
「で、どした?」
「いや・・・、実は、気落ちしないでくださいね。茜ちゃんも、それを望んで話すことを承諾してくれたんじゃなくて、今後の対策を講じるために話すんですから」
私は前置きした。
「うん? え? 何? すごく嫌な予感するんだけれど……」
長瀬先輩の表情が強張る。
「その予感、的中です。
お弁当会をした日、茜ちゃんが嫌がらせを受けました。
ロッカーに、紙切れが挟まってたんです。その紙切れは今、私の自宅で塩漬けにしてあります。こんなのです」
小学生の悪口が書かれた紙の画像を、スマホから出して長瀬先輩に見せる。
長瀬先輩の顔色が悪くなり、彼は右手で自分の口元を抑えた。
「多分、俺のせいかも……」
「たまたま通りかかった茜ちゃんの上司も、そう言ってました。
長瀬先輩と親しくした女性社員が受ける、恒例の行事だと。
黒澤さんから、直々に上司に相談してくれるそうです」
そこまで言い終わると、長瀬先輩はその場にしゃがみ込んだ。
「ごめん……、ほんと、ごめん」
長瀬先輩は頭を抱えた。
「大丈夫です、私と黒澤さんで、なるべく茜ちゃんから目を離さないようにしてます。
これは、長瀬先輩のせいではありません。決して、ご自分を責めないでください。茜ちゃんも私も黒澤さんも、長瀬先輩のせいだとは微塵も思ってません。
それと、今回の事で、じゃあお弁当会は諦めよう、という決断はしないでください。
茜ちゃんはそれを望んでません。こんな目に遭っても、お弁当会は楽しみにしてたくらいです。健気におかずの練習して待ってます。私が長瀬先輩に話そうと、説得しました。
それに、長瀬先輩も、この先一生この嫌がらせと付き合って生きてくつもりですか?
対策を考えましょう。茜ちゃんにも言いましたが、建設的にいきましょう」
私が言い終えると、長瀬先輩は顔を上げた。
「もし、これから長瀬先輩とお付き合いってことになった時、なんであの時言ってくれなかったの? って長瀬先輩悲しむんじゃないかな。肝心な時に気になったり、好きな子の力になれないのは、男として後悔してしまうって薫さんも言ってたよ。
今後、またお弁当会した時、同じ目に遭うの? また黙ってやられるの?
それより正直に長瀬先輩に話して、長瀬先輩と茜ちゃんと私の3人で、何かしらの対策を考えた方がいいんじゃないかな? その方が、建設的じゃない?」
そう力説すると、茜ちゃんは少し困った顔をしてから、頷いた。
「確かに。映子ちゃん言う通り。
今ね、長瀬さんとラインしてるの。長瀬さん、お弁当会楽しみにしてるって言ってくれてるし、私も同じ気持ち。また同じ目に遭うのは嫌だな。
でも、なんて話せばいいんだろう?」
「大丈夫! 任せて! 私から話しとくよ。
茜ちゃんは安心して、お弁当会楽しみにしててね」
茜ちゃんの顔がパッと笑顔になる。
「映子ちゃん、ありがとう! お弁当のおかず練習して、待ってるね」
なんて健気な茜ちゃん……。
さて、あとはどう長瀬先輩に話すかだなあ。
できれば今日中に話したけれど……。ラインじゃあ、言葉の機微が伝わらないし。やっぱり直接が良いかな。
勤務時間中に長瀬先輩と茜ちゃんについての私事を長々と話すのは気が引けるけれど、勤務にも関わってるしなあ。
「長瀬先輩今日の終業後、少しお時間ありますか?」
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「え? 終業後? うん! どした?」
「茜ちゃんの事です」
私が声を潜めてそう伝えると、顔だけこちらを向いて、身体はパソコンに向かっていた長瀬先輩が、キャスター椅子ごと私に近づいてきた。
「今聞こう!」
「あ、はい。ありがとうございます」
先輩が承諾したんだから、就業時間に話すことを許されたも同然よね。
私は誰にも聞かれない場所で、と提案したら、場所を移そうと提案してくれた。
「給湯室とかどうですか?」と私が尋ねると、「あそこは案外人通りがあって、みんな聞いてるから」と、百貨店のお客様用階段に連れて行かれた。
おお! 本当に人がいない。確かに、お客様はエスカレーターやエレベーターを使うし、さすが長瀬先輩!
「で、どした?」
「いや・・・、実は、気落ちしないでくださいね。茜ちゃんも、それを望んで話すことを承諾してくれたんじゃなくて、今後の対策を講じるために話すんですから」
私は前置きした。
「うん? え? 何? すごく嫌な予感するんだけれど……」
長瀬先輩の表情が強張る。
「その予感、的中です。
お弁当会をした日、茜ちゃんが嫌がらせを受けました。
ロッカーに、紙切れが挟まってたんです。その紙切れは今、私の自宅で塩漬けにしてあります。こんなのです」
小学生の悪口が書かれた紙の画像を、スマホから出して長瀬先輩に見せる。
長瀬先輩の顔色が悪くなり、彼は右手で自分の口元を抑えた。
「多分、俺のせいかも……」
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長瀬先輩は頭を抱えた。
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