僕が彼女に執着心を持った時
20分間
日曜日の18時10分前、映子さんが指定したコンビニの前にシルバーのプリウスを付けた。
僕は酷く緊張している。
会う事に、じゃない。彼女は来るか、来ないか、に。
当日ドタキャンも、十分に考えられた。なので、念のためラインのラリーをあれから切らさないようにして、映子さんから、おやすみなさい、と来たら、次の朝に僕からおはよう、と送るようにしていた。
それに返事は来たし、今日は天気が良いですね、とか、今日は残業になりそうです、とか、それに対して彼女からは、頑張ってくださいね! といつもの彼女がよく使ううさぎのスタンプを添えてくれた。
順調だったように思う。
ただ一点気になる事と言えば、僕は彼女が大学生か社会人か、食事の時にでも聞こうと思っていたが、彼女からもまた、僕の仕事については一切聞いてこなかった。
まあ、僕に対して特に興味がないのだろう。恐らくそんなところだ、とこの時は思っていた。
待ち合わせの時刻5分前になると、コンビニに紺色のレースのスカートに、シフォン素材の白い半袖のトップスの女性が入る姿が見える。
僕の左腕の時計から目線を上げた瞬間だったので横顔しか見えなかったが、あの黒髪のゆるいウェーブは彼女のものだろう。
来てくれた!
僕は彼女と知り合った時のように、心の中で再びガッツポーズをする。
映子さんがコンビニから出て、きょろきょろと辺りを見回してから、僕と目が合う。
彼女は大きな丸い目を半月形にし、口角をキュッと持ち上げた満面の笑みになって、グレーのヒールでこちらへ駆け寄ってくる。
僕はその笑顔を見たとき、自分の鼓動がはね上がるのを感じ、胸の高鳴りを抑えようと、一瞬ギュッと両手でハンドルを握る。
彼女が助手席の前に着いた瞬間、僕は内側からドアを押し開けた。
「お久しぶりです! 遅れてしまってごめんなさい。待ちました? これ、暑いんで良かったら飲んでくださいね!」
彼女はドアの外からこちらを除いて、笑顔でお茶を差し出してきた。
なんて気が利く子だ……。
僕も笑顔で答える。
「お久しぶりです。ううん、僕も今来たとこです。ありがとう。乗って! 今日はよろしくお願いします」
僕がそう言うと、彼女は助手席に乗り込み、また笑顔で言う。
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
彼女の笑顔を初めて見たような気がした。
天使のようだ。背中に羽と、頭に金の輪っかが見えるような気がした。
僕の心は緊張と嬉しさで一杯だ。
「じゃあ、出発しますね」
「はい!」
「お店、予約してくださってありがとうございました」
彼女からの視線を感じてそちらに目をやると、映子さんは微笑んでいた。
「ううん、人気のお店らしいから、念のためね。
映子さん、この間は本当に有難う。助かりました」
僕が運転をしながら一瞬だけ彼女の方を見ると、目が合う。
「いえいえ。特に何もしてませんよ。
よく、具合悪くなってしまうんですか?」
映子さんが心配そうにこちらを見ながら言った。
「あー、うん。たまにね。最近はそうでもなかったんだけど。
たまにぶり返しちゃって」
僕は歯切れが悪く曖昧な答えでお茶を濁した。
僕の微妙な表情からあまり聞かれたくないかもしれないと悟ったのか、彼女は明るく言う。
「じゃあ、今日は美味しいイタリアン食べて、元気付けましょうね!
私、今日すごく楽しみにしてたんです」
お世辞やただの話題の一環だとしても、彼女のその言葉が素直に嬉しかった。
それと同時に、察しの良い子なんだな、と妙に感心する。
「本当? そう言ってもらえると嬉しいな。僕も今日をとても楽しみにしてました。
映子さんも沢山食べてくださいね!」
お店に向かう車内で流していた、maroon5をお互いが聴いていることで会話を楽しんだ。maroon5好きなら、これも好きですか? じゃあ、あれも? と、音楽で聴いているものの趣味が合って嬉しい。
お店に着くまでに20分程ドライブをしていたのだけれど、あっと言う間だった気がした。
僕は酷く緊張している。
会う事に、じゃない。彼女は来るか、来ないか、に。
当日ドタキャンも、十分に考えられた。なので、念のためラインのラリーをあれから切らさないようにして、映子さんから、おやすみなさい、と来たら、次の朝に僕からおはよう、と送るようにしていた。
それに返事は来たし、今日は天気が良いですね、とか、今日は残業になりそうです、とか、それに対して彼女からは、頑張ってくださいね! といつもの彼女がよく使ううさぎのスタンプを添えてくれた。
順調だったように思う。
ただ一点気になる事と言えば、僕は彼女が大学生か社会人か、食事の時にでも聞こうと思っていたが、彼女からもまた、僕の仕事については一切聞いてこなかった。
まあ、僕に対して特に興味がないのだろう。恐らくそんなところだ、とこの時は思っていた。
待ち合わせの時刻5分前になると、コンビニに紺色のレースのスカートに、シフォン素材の白い半袖のトップスの女性が入る姿が見える。
僕の左腕の時計から目線を上げた瞬間だったので横顔しか見えなかったが、あの黒髪のゆるいウェーブは彼女のものだろう。
来てくれた!
僕は彼女と知り合った時のように、心の中で再びガッツポーズをする。
映子さんがコンビニから出て、きょろきょろと辺りを見回してから、僕と目が合う。
彼女は大きな丸い目を半月形にし、口角をキュッと持ち上げた満面の笑みになって、グレーのヒールでこちらへ駆け寄ってくる。
僕はその笑顔を見たとき、自分の鼓動がはね上がるのを感じ、胸の高鳴りを抑えようと、一瞬ギュッと両手でハンドルを握る。
彼女が助手席の前に着いた瞬間、僕は内側からドアを押し開けた。
「お久しぶりです! 遅れてしまってごめんなさい。待ちました? これ、暑いんで良かったら飲んでくださいね!」
彼女はドアの外からこちらを除いて、笑顔でお茶を差し出してきた。
なんて気が利く子だ……。
僕も笑顔で答える。
「お久しぶりです。ううん、僕も今来たとこです。ありがとう。乗って! 今日はよろしくお願いします」
僕がそう言うと、彼女は助手席に乗り込み、また笑顔で言う。
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
彼女の笑顔を初めて見たような気がした。
天使のようだ。背中に羽と、頭に金の輪っかが見えるような気がした。
僕の心は緊張と嬉しさで一杯だ。
「じゃあ、出発しますね」
「はい!」
「お店、予約してくださってありがとうございました」
彼女からの視線を感じてそちらに目をやると、映子さんは微笑んでいた。
「ううん、人気のお店らしいから、念のためね。
映子さん、この間は本当に有難う。助かりました」
僕が運転をしながら一瞬だけ彼女の方を見ると、目が合う。
「いえいえ。特に何もしてませんよ。
よく、具合悪くなってしまうんですか?」
映子さんが心配そうにこちらを見ながら言った。
「あー、うん。たまにね。最近はそうでもなかったんだけど。
たまにぶり返しちゃって」
僕は歯切れが悪く曖昧な答えでお茶を濁した。
僕の微妙な表情からあまり聞かれたくないかもしれないと悟ったのか、彼女は明るく言う。
「じゃあ、今日は美味しいイタリアン食べて、元気付けましょうね!
私、今日すごく楽しみにしてたんです」
お世辞やただの話題の一環だとしても、彼女のその言葉が素直に嬉しかった。
それと同時に、察しの良い子なんだな、と妙に感心する。
「本当? そう言ってもらえると嬉しいな。僕も今日をとても楽しみにしてました。
映子さんも沢山食べてくださいね!」
お店に向かう車内で流していた、maroon5をお互いが聴いていることで会話を楽しんだ。maroon5好きなら、これも好きですか? じゃあ、あれも? と、音楽で聴いているものの趣味が合って嬉しい。
お店に着くまでに20分程ドライブをしていたのだけれど、あっと言う間だった気がした。
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