辺境伯に嫁いだけど、自宅裸族なのを隠したい
73話 秘密基地籠城戦(すぐに終了)
「うわああああああああ」
私の叫びにガチャリと扉が開かれた。
シャツを羽織っただけのレイオンが焦った様子でドアを開け、ばっちり目が合う。
「メーラ、何が」
想いを込めて。
聖女様の綺麗な字が私の脳内を巡る。
余計に顔が熱くなった。
「ま、まだ着替えてない!」
「え?」
「戻って!」
「あ、ああ」
私の叫びによく分からない様子のまま再びドアを閉めた。
扉越しに本当に大丈夫かと問われたので大丈夫と元気に返した。いいって言うまで入ってこないでと伝えると渋りながらも了承する。
フォーがレイオンだって言うのも気持ち的に清算できていない。そこに追い討ちをくらったのだから、少しは一人の時間を寄越してくれてもいいと思う。
「だ、だめ、無理、ほんとむりっ」
急いで着替えてメモを書き残す。
次にシーツを何枚かしばって繋いでバルコニーにしっかり結び巻き、それをつたって外に出た。はしたなかろうが関係ない。私には今一人になる時間が必要だ。
『気持ちが落ち着くまで一人にさせて。夜までには戻る』
そう書き残して走った。
とは言っても、行く場所は一つだけ。秘密基地のある泉だ。
「……」
膝を立てて座り顔を埋めて火照る熱を逃がそうと必死になる。フォーがレイオンだっていう事実に加えてエピシミア辺境伯夫人がとどめを刺してきた。
恥ずかしいを超えたんじゃないの。そもそも私ってば、なんで聖女候補なんてやってたのよ。もうそこから問題だった。自分の中に力がなくても、他者から受け取って力として使えるなんてどうなのよ。そんな特殊能力あるなんて思わないでしょ。
「……」
暫くして、土を踏みしめる足音が聞こえた。
もう誰が来るかなんて分かりきってる。
「メーラ」
「……」
来ると思っていた。
だからタープの形を変えて、完全に目の前を塞いだ。オープン状態からクローズ状態へチェンジだ。
「メーラ」
「入ってこないで!」
祖母が倒れた時、雪の重みで下がった草木が目の前の視界を塞いでいたのと同じように正面を完全に封鎖した。ここまでやれば入らないでという意思表示も伝わるだろう。言葉でも伝えたしね。絶対侵入許すまじだ。
「メーラ」
再度呼んでくるのを無視した。せめて来るにしても、もっと時間経ってから来てほしかったんだけど。
「メーラ」
ざりっと土の擦れる音が近くでしたから顔を上げると、片膝をついて屈んだレイオンが目の前にいた。困った顔をして視線を合わせてくる。
「あ、なんで入って」
「これを抜いて」
「あ、ペグ抜いたの!」
「ぺぐ?」
「タープを固定する時に使う杭」
「成程」
キャンプ道具の名前覚えたわあいみたいな雰囲気出してる場合じゃないでしょ。
「もう……」
「メーラが側にいないと落ち着かない」
直近起きたことが誘拐だったし川にも落ちた。そこに関しては心配性なレイオンのこと、気にすることは分かっている。勝手に出て行って申し訳ないとは思ったけど、それでもやっぱり来るのが早すぎる。
「それに、ここにこうして入りたかった」
「え?」
どういうこと、と問うとレイオンは手にしたペグに視線を落として囁く。
「ペズギア様が倒れた時、ここに君がいるのは分かっていた」
「……」
「けど私はまだここを知らない事になっているし、フォティアとの場所だと思っていたから入れなかった。私が来ても喜ばれないと思って、フォティアを選んだ」
「ああ」
あの日、フォーが来てくれて私を慰め支えてくれた。レイオンではなくてフォーが側にいてくれようとして、嬉しくて抱きしめたことは記憶に新しい。
「本当はこの手で君に触れて、言葉で伝えて安心させてあげたかった」
「っ」
あいている片手で私の頬を包み、あの時フォーが涙を拭ってくれたみたいに目尻を親指で撫でる。
「フォティアではなくて、私がここに入りたかったから……今、それが出来て嬉しい」
「うぐぐ」
真実そう思っているのだろう。嬉しそうに微笑む目元の緩さに何も言えなくなる。ずるい。レイオンてば卑怯だわ。
「もおおおお……恥ずかしいのおさまるまで待っててほしかったのに」
「恥ずかしい?」
「だってずっとフォーだって気づかなかったし」
「ああ」
「色々やらかしてたし」
やらかす? と首を傾げられる。
一年分知らないままフォーに過剰なスキンシップをしていた。レイオンと関係が浅い頃からぐいぐいやってて。さすがに具体的なことは口には出来ない。
「……ずっとフォティアが自分だと言えなかった」
すまなかったとレイオンが謝る。
恥ずかしいだけでレイオンは何も悪くない。この人の謝り癖はまだ治ってないわね。そう言ってくるなら、もちろん返す私の言葉は決まっている。
私の叫びにガチャリと扉が開かれた。
シャツを羽織っただけのレイオンが焦った様子でドアを開け、ばっちり目が合う。
「メーラ、何が」
想いを込めて。
聖女様の綺麗な字が私の脳内を巡る。
余計に顔が熱くなった。
「ま、まだ着替えてない!」
「え?」
「戻って!」
「あ、ああ」
私の叫びによく分からない様子のまま再びドアを閉めた。
扉越しに本当に大丈夫かと問われたので大丈夫と元気に返した。いいって言うまで入ってこないでと伝えると渋りながらも了承する。
フォーがレイオンだって言うのも気持ち的に清算できていない。そこに追い討ちをくらったのだから、少しは一人の時間を寄越してくれてもいいと思う。
「だ、だめ、無理、ほんとむりっ」
急いで着替えてメモを書き残す。
次にシーツを何枚かしばって繋いでバルコニーにしっかり結び巻き、それをつたって外に出た。はしたなかろうが関係ない。私には今一人になる時間が必要だ。
『気持ちが落ち着くまで一人にさせて。夜までには戻る』
そう書き残して走った。
とは言っても、行く場所は一つだけ。秘密基地のある泉だ。
「……」
膝を立てて座り顔を埋めて火照る熱を逃がそうと必死になる。フォーがレイオンだっていう事実に加えてエピシミア辺境伯夫人がとどめを刺してきた。
恥ずかしいを超えたんじゃないの。そもそも私ってば、なんで聖女候補なんてやってたのよ。もうそこから問題だった。自分の中に力がなくても、他者から受け取って力として使えるなんてどうなのよ。そんな特殊能力あるなんて思わないでしょ。
「……」
暫くして、土を踏みしめる足音が聞こえた。
もう誰が来るかなんて分かりきってる。
「メーラ」
「……」
来ると思っていた。
だからタープの形を変えて、完全に目の前を塞いだ。オープン状態からクローズ状態へチェンジだ。
「メーラ」
「入ってこないで!」
祖母が倒れた時、雪の重みで下がった草木が目の前の視界を塞いでいたのと同じように正面を完全に封鎖した。ここまでやれば入らないでという意思表示も伝わるだろう。言葉でも伝えたしね。絶対侵入許すまじだ。
「メーラ」
再度呼んでくるのを無視した。せめて来るにしても、もっと時間経ってから来てほしかったんだけど。
「メーラ」
ざりっと土の擦れる音が近くでしたから顔を上げると、片膝をついて屈んだレイオンが目の前にいた。困った顔をして視線を合わせてくる。
「あ、なんで入って」
「これを抜いて」
「あ、ペグ抜いたの!」
「ぺぐ?」
「タープを固定する時に使う杭」
「成程」
キャンプ道具の名前覚えたわあいみたいな雰囲気出してる場合じゃないでしょ。
「もう……」
「メーラが側にいないと落ち着かない」
直近起きたことが誘拐だったし川にも落ちた。そこに関しては心配性なレイオンのこと、気にすることは分かっている。勝手に出て行って申し訳ないとは思ったけど、それでもやっぱり来るのが早すぎる。
「それに、ここにこうして入りたかった」
「え?」
どういうこと、と問うとレイオンは手にしたペグに視線を落として囁く。
「ペズギア様が倒れた時、ここに君がいるのは分かっていた」
「……」
「けど私はまだここを知らない事になっているし、フォティアとの場所だと思っていたから入れなかった。私が来ても喜ばれないと思って、フォティアを選んだ」
「ああ」
あの日、フォーが来てくれて私を慰め支えてくれた。レイオンではなくてフォーが側にいてくれようとして、嬉しくて抱きしめたことは記憶に新しい。
「本当はこの手で君に触れて、言葉で伝えて安心させてあげたかった」
「っ」
あいている片手で私の頬を包み、あの時フォーが涙を拭ってくれたみたいに目尻を親指で撫でる。
「フォティアではなくて、私がここに入りたかったから……今、それが出来て嬉しい」
「うぐぐ」
真実そう思っているのだろう。嬉しそうに微笑む目元の緩さに何も言えなくなる。ずるい。レイオンてば卑怯だわ。
「もおおおお……恥ずかしいのおさまるまで待っててほしかったのに」
「恥ずかしい?」
「だってずっとフォーだって気づかなかったし」
「ああ」
「色々やらかしてたし」
やらかす? と首を傾げられる。
一年分知らないままフォーに過剰なスキンシップをしていた。レイオンと関係が浅い頃からぐいぐいやってて。さすがに具体的なことは口には出来ない。
「……ずっとフォティアが自分だと言えなかった」
すまなかったとレイオンが謝る。
恥ずかしいだけでレイオンは何も悪くない。この人の謝り癖はまだ治ってないわね。そう言ってくるなら、もちろん返す私の言葉は決まっている。
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