辺境伯に嫁いだけど、自宅裸族なのを隠したい
71話 朝ちゅん(裸族レベルカンスト)
目が覚めた先はよく見る天井だった。
「生きてる」
薄暗い室内でも光の端が見える。朝方だろうか。起き上がろうとすると妙に身体が重くてできなかった。ついでに言うなら頭もやたらかたい。
「……ひえ」
動けない理由が直ぐに分かる。顔を横に向ければ動けない原因が眠っていた。安らかという言葉がぴったりで、相変わらず私に腕枕をして、あいてる片手を私の腰に回して寝ている。
なんだか以前もこんなことあった気がしたけど深く考えるのはよそう。
「……」
前も寝ている時に幼く見えるなんて思ったけど、彼の場合は無表情が見えない分、可愛らしく見えるからかもしれない。無防備ですやすやしてれば普段凛としてる部分が見えないし。ま、幼さで言うなら満月の時が一際甘えたになって子供みたいだけど。
「レイオン」
一瞬ぴくりとするも起きなかった。規則正しい息遣いが続く。
直近の記憶は川に落ちて大きくなったフォーに助けてもらったとこだったっけ。フォーの背中に乗れるなんて夢にも思わなかったな。どうせならもふもふの上に乗りたかったけど、あの時は生死がかかっていたのだから、そんなこと考えたら不謹慎ね。
うん、色々思い出してきた。
「……んんん」
再び恥ずかしさがぶり返す。川に落ちる前も彼の顔を見られないぐらい恥ずかったから、今起きてなくて本当によかった。ひとまず起きた時の為にこの顔に慣れておこう。
「……」
顔に怪我はないようだった。あの激しい流れの中で、傷一つないまま助かったのは奇跡に等しい。岩場にぶつからなくても水の中に飲まれてそのままという可能性だってあった。レイオンが私を水面に引き上げてくれなければ、最初から私は溺れていただろう。
そして聖女様の力だ。
エピシミア辺境伯夫人の指先に触れただけで、聖女の力が一時的使えるだなんて辞したといえ聖女様すごすぎでしょ。これもう絶対お礼言う案件。
加えてあれが安全祈願の刺繍だったからこそ良い影響が出たのだと思う。教育時代に意味のないことだと思っていた呪(まじな)いが正しいものだったなんて笑えるわね。
レイオンにどう作用したのかは分からないけど、見た限り今の彼に特段変化がないようだから、フォーが大きくなってそれで終わりなのかな。他でなにか影響が残っているかは気になるけど、フェンリルも今だけと言っていたから大丈夫だろう。
「ん?」
ここにきてやっと今の状況が分かった。
いつも通り腕枕をしてもらってるまではいい。その先だ。妙に肌色が多い。私も妙にしっくりした実感があるのと、腰に回るレイオンの腕の感覚がいやにはっきりしていた。
「う、わ」
十中八九私自身は真っ裸だ。聖女様ブランドのパジャマを着てるわけでもない。完全な裸族。
ここまではいい。いくら思い出して恥ずかしさに逃げ出したい気持ちでも、裸族レベルがカンストしてる私にとって、彼の前で完全裸族であることはまったく問題はない。
問題はレイオンの方だ。
今までは上半身だけ裸だった。視線を下げてみるといつもと違う。これは脱いでる。ここにきてレイオンも完全裸族っぽい。なにが起きてここに着地したの。聖女の力効果で裸族のレベルってあがるの?
「……ん」
「!」
レイオンがみじろいで衣擦れの音がする。
あ、起きそう。
できれば、もう少し寝ててほしい。レイオンの完全裸族を落とし込んでからにしてほしいんだけど!
「……」
瞼が細かく震えゆっくり開かれていく。心臓の音がうるさい。妙な緊張感と恥ずかしさに目を逸らせなかった。
「……メーラ」
「レイオン」
「具合は?」
「え?」
彼のあいてる片手が私に伸び、私の頬を包んだ。つい最近まで触れるのすら躊躇っていた手が優しく私の肌を撫でる。
「怪我はなかった」
「え?」
「水を多少飲んだが問題ないと医者は言っていた」
「うん?」
どうやら私の容体のことらしい。そういえば、吐き気や眩暈もないし、よく寝たからかすっきりしている。
それを知るとレイオンは安心したように目を細めて笑う。すっかり彼の感情の機微が分かるようになった。
「レイオンは?」
「私?」
「怪我とか、その聖女の力で変になったとか」
「何もなかった。問題ない」
「そう」
ほっと息を吐く。
ひとまず身体に妙な影響もなくて健康であれば良しだ。
「医者に確認した」
おっとなんか前も似たような会話あった気がする。
「内容を聞いても?」
「裸で寝ても問題ないか」
「やっぱり」
とても冷えていたから、とレイオンが加えた。
「生きてる」
薄暗い室内でも光の端が見える。朝方だろうか。起き上がろうとすると妙に身体が重くてできなかった。ついでに言うなら頭もやたらかたい。
「……ひえ」
動けない理由が直ぐに分かる。顔を横に向ければ動けない原因が眠っていた。安らかという言葉がぴったりで、相変わらず私に腕枕をして、あいてる片手を私の腰に回して寝ている。
なんだか以前もこんなことあった気がしたけど深く考えるのはよそう。
「……」
前も寝ている時に幼く見えるなんて思ったけど、彼の場合は無表情が見えない分、可愛らしく見えるからかもしれない。無防備ですやすやしてれば普段凛としてる部分が見えないし。ま、幼さで言うなら満月の時が一際甘えたになって子供みたいだけど。
「レイオン」
一瞬ぴくりとするも起きなかった。規則正しい息遣いが続く。
直近の記憶は川に落ちて大きくなったフォーに助けてもらったとこだったっけ。フォーの背中に乗れるなんて夢にも思わなかったな。どうせならもふもふの上に乗りたかったけど、あの時は生死がかかっていたのだから、そんなこと考えたら不謹慎ね。
うん、色々思い出してきた。
「……んんん」
再び恥ずかしさがぶり返す。川に落ちる前も彼の顔を見られないぐらい恥ずかったから、今起きてなくて本当によかった。ひとまず起きた時の為にこの顔に慣れておこう。
「……」
顔に怪我はないようだった。あの激しい流れの中で、傷一つないまま助かったのは奇跡に等しい。岩場にぶつからなくても水の中に飲まれてそのままという可能性だってあった。レイオンが私を水面に引き上げてくれなければ、最初から私は溺れていただろう。
そして聖女様の力だ。
エピシミア辺境伯夫人の指先に触れただけで、聖女の力が一時的使えるだなんて辞したといえ聖女様すごすぎでしょ。これもう絶対お礼言う案件。
加えてあれが安全祈願の刺繍だったからこそ良い影響が出たのだと思う。教育時代に意味のないことだと思っていた呪(まじな)いが正しいものだったなんて笑えるわね。
レイオンにどう作用したのかは分からないけど、見た限り今の彼に特段変化がないようだから、フォーが大きくなってそれで終わりなのかな。他でなにか影響が残っているかは気になるけど、フェンリルも今だけと言っていたから大丈夫だろう。
「ん?」
ここにきてやっと今の状況が分かった。
いつも通り腕枕をしてもらってるまではいい。その先だ。妙に肌色が多い。私も妙にしっくりした実感があるのと、腰に回るレイオンの腕の感覚がいやにはっきりしていた。
「う、わ」
十中八九私自身は真っ裸だ。聖女様ブランドのパジャマを着てるわけでもない。完全な裸族。
ここまではいい。いくら思い出して恥ずかしさに逃げ出したい気持ちでも、裸族レベルがカンストしてる私にとって、彼の前で完全裸族であることはまったく問題はない。
問題はレイオンの方だ。
今までは上半身だけ裸だった。視線を下げてみるといつもと違う。これは脱いでる。ここにきてレイオンも完全裸族っぽい。なにが起きてここに着地したの。聖女の力効果で裸族のレベルってあがるの?
「……ん」
「!」
レイオンがみじろいで衣擦れの音がする。
あ、起きそう。
できれば、もう少し寝ててほしい。レイオンの完全裸族を落とし込んでからにしてほしいんだけど!
「……」
瞼が細かく震えゆっくり開かれていく。心臓の音がうるさい。妙な緊張感と恥ずかしさに目を逸らせなかった。
「……メーラ」
「レイオン」
「具合は?」
「え?」
彼のあいてる片手が私に伸び、私の頬を包んだ。つい最近まで触れるのすら躊躇っていた手が優しく私の肌を撫でる。
「怪我はなかった」
「え?」
「水を多少飲んだが問題ないと医者は言っていた」
「うん?」
どうやら私の容体のことらしい。そういえば、吐き気や眩暈もないし、よく寝たからかすっきりしている。
それを知るとレイオンは安心したように目を細めて笑う。すっかり彼の感情の機微が分かるようになった。
「レイオンは?」
「私?」
「怪我とか、その聖女の力で変になったとか」
「何もなかった。問題ない」
「そう」
ほっと息を吐く。
ひとまず身体に妙な影響もなくて健康であれば良しだ。
「医者に確認した」
おっとなんか前も似たような会話あった気がする。
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