辺境伯に嫁いだけど、自宅裸族なのを隠したい
67話 誘拐犯の時間稼ぎ
だってフォーがレイオンで、レイオンがフォーなんだってば。
約一年、私が今までフォーにしたことを思い出すと、今顔を見る事なんて恥ずかしすぎてできるわけないのに!
「……あんた本当暢気だな」
「はっ! 心の声が?!」
「ああ喋ってんぞ」
「おっふ」
今がシリアス真っ只中なのは分かってるし、レイオンは私の心配しかしてないんだろうなと予想もついてる。でも私の気持ちがまだ追いついていない。ああもうよりによって思い出すのはやらかしたことしかないってなんなの。やらかしてない時なかったんじゃないの?
「アパゴギさん、ちょっと時間稼ぎしてきて下さい!」
「馬鹿言ってんじゃねえよ」
呆れて溜息吐かれた。ちょっとショックなんだけど! 分かってよ! 今まで知らなかったの私だけなのに!
「せめて一日頂ければ心の整理がつくかと!」
「悠長すぎんだろ」
立場分かってんのかよとアパゴギが短剣を私に向けた。
急な現実が目の前にやってくる。トラウマはもうなさそうだけど、さすがに刺されたら痛いだろうし。
「あんたは人質だぞ? 自覚しろって」
「……大変申し訳御座いません」
もう一つ溜息を吐かれ、私はアパゴギと共に荷馬車から外に出る。
周囲は騎士たちで囲まれていて、源流を背後にしてレイオンと相対した。
「メーラ」
「うぐぐ」
私を見る彼の顔にはやっぱり心配しかなかった。ああもうでもこっちはちょっと顔見たくない。恥ずかしいじゃないの。
赤面する私を見て、アパゴギが呆れているのが見なくても分かった。ええい、こればかりはもう無理だ。恥ずかしさを抑えられるわけがない。
「随分早かったな坊っちゃん」
「……」
レイオンがアパゴギを睨むも、色んなものがないまぜになった表情をした。困っているようにも見える。
「坊っちゃん、何か仕込んだか?」
レイオンの雰囲気から察したアパゴギが訝しむ。
逃走が許されたのに、追い付き追い詰められるのが早すぎた。手際の良さに怪しむのは当然のことだろう。
あ、やっぱりレイオン見られないわ。視線を逸らして二人のやり取りに耳を傾けることで誤魔化してみよう。当の二人はシリアスに会話を進めてくれる。
「……意図的に逃走経路を作った」
「なんだと?」
最初の誘拐未遂で確証がなかったものの、いつでも捕えることができるよう準備をしていたらしい。その一言に合点がいったのかアパゴギの顔が歪んだ。
「最初からだな?」
「……ああ」
おかげさまで会話だけなら恥ずかしい思いはぶり返さない。そのまま二人の会話を聞くことに専念する。
レイオンは私を誘拐し損ねたのも、両親を殺害したのもアパゴギだと考えていた。
行動や普段の言動から証拠をとれるようパーフォスに監視をさせることを決め、第一分隊に所属させてアパゴギの支持者や仲間を第一分隊に配属させる。この日までパーフォス直轄の精鋭を数名いれ動向を見続けていた。
アパゴギの言う通りわざと泳がせていたけど、アパゴギの考え以上に網を張り続けていたようだ。
「同じ事を行うなら、ここを利用するだろうと考えていた」
その通り、隠れるにはもってこいだ。
保護区域の中で逃走経路を絞らせるよう作り替え、領地巡回を第一分隊にさせて覚え込ませた。
余計な経路はアパゴギが知る前に潰し、別分隊に定期的に巡回させ使用度や分隊に所属していない仲間の配置と人数を把握する。
王都での陛下が聖女候補を陽動にしたことは考えの範囲外だったけど、要塞を襲いパニックを起こさせるのは想定の範囲内。逃がすつもりはなかった。その為の誘導経路がこれだと。
その沢山あるものの最初の一つであっさり囲むことができた。要塞での被害が最小であったこと、要所毎にレイオンとパーフォス直轄の分隊を配置させていたことも成功の一つだと言う。
「外に置いて奴らも」
「捕らえた」
分隊にいたアパゴギの仲間のほとんどが要塞で捕らえることができ、外に潜ませていた仲間はとっくに捕獲済み。
そしたら他の聖女候補たちは?
「なら攫われた令嬢たちも?」
「無事保護した」
私の心配に応えてくれたレイオンの言葉に安堵する。対してアパゴギは憎々しげに唸った。
「嵌められたってわけか」
「……投降を」
じり、と少し後ろに引くアパゴギ。これ以上後ろに下がると崖から源流に落ちてしまう。
丁度岩が密集する場所じゃないから転落しても岩に激突は避けられる。でも雪解けで水位と流れの急な源流に飲まれるのも充分危険だろう。自殺するようなものだ。
「坊っちゃんよ」
「……」
「なんで俺を斬らなかった」
ここにきてまで時間稼ぎ?
要塞の時のように仕込みはないはずだから、ただ逃走を考える為の抵抗のように見えた。
約一年、私が今までフォーにしたことを思い出すと、今顔を見る事なんて恥ずかしすぎてできるわけないのに!
「……あんた本当暢気だな」
「はっ! 心の声が?!」
「ああ喋ってんぞ」
「おっふ」
今がシリアス真っ只中なのは分かってるし、レイオンは私の心配しかしてないんだろうなと予想もついてる。でも私の気持ちがまだ追いついていない。ああもうよりによって思い出すのはやらかしたことしかないってなんなの。やらかしてない時なかったんじゃないの?
「アパゴギさん、ちょっと時間稼ぎしてきて下さい!」
「馬鹿言ってんじゃねえよ」
呆れて溜息吐かれた。ちょっとショックなんだけど! 分かってよ! 今まで知らなかったの私だけなのに!
「せめて一日頂ければ心の整理がつくかと!」
「悠長すぎんだろ」
立場分かってんのかよとアパゴギが短剣を私に向けた。
急な現実が目の前にやってくる。トラウマはもうなさそうだけど、さすがに刺されたら痛いだろうし。
「あんたは人質だぞ? 自覚しろって」
「……大変申し訳御座いません」
もう一つ溜息を吐かれ、私はアパゴギと共に荷馬車から外に出る。
周囲は騎士たちで囲まれていて、源流を背後にしてレイオンと相対した。
「メーラ」
「うぐぐ」
私を見る彼の顔にはやっぱり心配しかなかった。ああもうでもこっちはちょっと顔見たくない。恥ずかしいじゃないの。
赤面する私を見て、アパゴギが呆れているのが見なくても分かった。ええい、こればかりはもう無理だ。恥ずかしさを抑えられるわけがない。
「随分早かったな坊っちゃん」
「……」
レイオンがアパゴギを睨むも、色んなものがないまぜになった表情をした。困っているようにも見える。
「坊っちゃん、何か仕込んだか?」
レイオンの雰囲気から察したアパゴギが訝しむ。
逃走が許されたのに、追い付き追い詰められるのが早すぎた。手際の良さに怪しむのは当然のことだろう。
あ、やっぱりレイオン見られないわ。視線を逸らして二人のやり取りに耳を傾けることで誤魔化してみよう。当の二人はシリアスに会話を進めてくれる。
「……意図的に逃走経路を作った」
「なんだと?」
最初の誘拐未遂で確証がなかったものの、いつでも捕えることができるよう準備をしていたらしい。その一言に合点がいったのかアパゴギの顔が歪んだ。
「最初からだな?」
「……ああ」
おかげさまで会話だけなら恥ずかしい思いはぶり返さない。そのまま二人の会話を聞くことに専念する。
レイオンは私を誘拐し損ねたのも、両親を殺害したのもアパゴギだと考えていた。
行動や普段の言動から証拠をとれるようパーフォスに監視をさせることを決め、第一分隊に所属させてアパゴギの支持者や仲間を第一分隊に配属させる。この日までパーフォス直轄の精鋭を数名いれ動向を見続けていた。
アパゴギの言う通りわざと泳がせていたけど、アパゴギの考え以上に網を張り続けていたようだ。
「同じ事を行うなら、ここを利用するだろうと考えていた」
その通り、隠れるにはもってこいだ。
保護区域の中で逃走経路を絞らせるよう作り替え、領地巡回を第一分隊にさせて覚え込ませた。
余計な経路はアパゴギが知る前に潰し、別分隊に定期的に巡回させ使用度や分隊に所属していない仲間の配置と人数を把握する。
王都での陛下が聖女候補を陽動にしたことは考えの範囲外だったけど、要塞を襲いパニックを起こさせるのは想定の範囲内。逃がすつもりはなかった。その為の誘導経路がこれだと。
その沢山あるものの最初の一つであっさり囲むことができた。要塞での被害が最小であったこと、要所毎にレイオンとパーフォス直轄の分隊を配置させていたことも成功の一つだと言う。
「外に置いて奴らも」
「捕らえた」
分隊にいたアパゴギの仲間のほとんどが要塞で捕らえることができ、外に潜ませていた仲間はとっくに捕獲済み。
そしたら他の聖女候補たちは?
「なら攫われた令嬢たちも?」
「無事保護した」
私の心配に応えてくれたレイオンの言葉に安堵する。対してアパゴギは憎々しげに唸った。
「嵌められたってわけか」
「……投降を」
じり、と少し後ろに引くアパゴギ。これ以上後ろに下がると崖から源流に落ちてしまう。
丁度岩が密集する場所じゃないから転落しても岩に激突は避けられる。でも雪解けで水位と流れの急な源流に飲まれるのも充分危険だろう。自殺するようなものだ。
「坊っちゃんよ」
「……」
「なんで俺を斬らなかった」
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要塞の時のように仕込みはないはずだから、ただ逃走を考える為の抵抗のように見えた。
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