辺境伯に嫁いだけど、自宅裸族なのを隠したい
39話 私からフォーに抱き着きにいくけど
「駄目か?」
今の状態でもほとんど抱きしめられているようなものだと思うけど? でもそれ言っても納得しなさそう。
縦に頷くしかなかった。
オイルランタンが照らす彼の瞳が嬉しそうに細められる。
「ひょえ」
腰に手をかけ浮かせてきたと思ったら、そのまま体の向きを変えられて、彼の足の間に座らされる。
そして有言実行、後ろから腰に腕を回され、肩口に顔を寄せて抱きしめられた。
覆うようにかたくて広い身体が密着してくる。添い寝や満月の時に抱きしめられることはあるし、こういう抱き方だって初めてじゃない。でもあえて言わせて。
なにこの状況? どういうことなの?
「レイオン」
「あたたかいな」
安心したかのような息が首にかかる。それだけで身体がぞくぞくした。
落ち着こう。どうして彼がいきなりこんなことを言ってきたのか考えてみよう。腰に回った手に自身の手を重ねると思っていたよりも冷たかった。
「もしかして、寒かったの?」
避暑地の夜はかなり冷え込む。膝と身体にかける物を持ってきたけど、レイオンは些か軽装な気もした。
「君とこうして並んで座っていると、抱きしめてないと落ち着かない」
「なんで?」
並んで地べたに座るなんて初めてキスした時くらいじゃなくて?
しょっちゅうしてないよね? してたとしても抱きしめてないよね?
私のその気持ちが伝わったのか、レイオンは些か納得いかない雰囲気を出して囁いた。
「いつも君から抱きしめてくるくせに」
「はい?」
いつも? 何度も言うけど並んで地べたに座ったことは数えるほどしかしていない。
秘密基地ではよく並んで座っては私からフォーに抱き着きにいくけど、今隣にいるのはフォーじゃない。
え、なに? 強がってる? 寒いなんて認めたくない? 男性の沽券に関わるというやつ?
んー、それなら仕方ないのかな。納得いかない雰囲気でいる以上、追及したら可哀想な気もする。
「なら好きなだけどうぞ」
「ああ」
風邪でも引かれたら困るしね。満足そうだし、これでいいはずだ。
「ねえレイオン」
「どうした?」
二人きりなら聞いても問題ないだろうと踏んで思い切った。
「お義姉さんとこの子、どの子に継いでもらうの?」
「は?」
おっと、トーンが下がった。今する話題ではなかったかな。話題振った手前、続けるしかないけど。
「セリスィは長男だから伯爵家を継ぐでしょ? そしたらオリゴロゴスかパンタシア?」
背後でぐっと喉を鳴らす。
「…………継がせない」
「え?」
ひどく不機嫌な声音だった。少しだけ腕に力が入る。
「彼らは駄目だ」
「なんで?」
貴族院に入ってないから、彼らがどの程度素質があるかは分からない。義姉の子と考えるとしっかり領主やってくれそうな気がするけど、レイオンとしては認められない要素があるようだった。
「継ぐとなったら、家に来るんだろう?」
「まあ養子にするってなったら、一緒に住むと思うけど」
どちらでも仲良くできそうだから私はありかな。
当の領主様は到底認められそうにない喉の鳴らし方をした。
「嫌だ」
「そしたら外から?」
「……」
「レイオン?」
ぎゅっと抱いてくる腕に力が入る。
度々唸りながら、苦しそうに囁いた。
「君との時間を邪魔されたくない」
「え?」
義姉の子を引き取るにしても、全く別の場所から養子をとったとしても、私とレイオンだけの家族から変化してしまう。それが彼にとって許しがたい。
「君を独占したい」
「んん」
どうしよう。滅茶苦茶懐かれている。
私の視線が自分以外に向けられるのが嫌だとレイオンは加えて言った。
「焼きもち?」
「……そう、だろうな」
少なくとも今は考えたくないらしい。
きかなければよかった。話題振りとしては失敗かあ。ちょうど会えたから話盛り上がると思ったけど、思ってもみない解答がきて心臓に悪い。蛍鑑賞会に集中した方がよさそう。
「恐らくだが」
「うん」
「君との間に子供が出来ても、同じように思う」
「ふお」
ちょっともうやめようか、この話題!
たとえ偽りの結婚条件だったとしても、子作りの話はまだすべきじゃない。それは愛し愛される夫婦が話す話題だから!
「メーラ」
「な、なに? ちょっとごめん、少し時間ちょうだい」
えらい言葉を聞いてしまった。
いくら無表情の中に小さい機微が見えるようになったといえ、言葉にされると準備してない心にはダメージが大きすぎる。
私も彼と同じで嫉妬するだろうか? レイオンと私の間に子供がいてにこやかにしている図を想像した。あ、悪くない。いやいやいやちょっと待って、なにその悪くないって。
「メーラ?」
「ふわあい!」
色々すみません! と同時に謝ってしまう。
背後で見えないレイオンが首を傾げてる雰囲気がした。
今の状態でもほとんど抱きしめられているようなものだと思うけど? でもそれ言っても納得しなさそう。
縦に頷くしかなかった。
オイルランタンが照らす彼の瞳が嬉しそうに細められる。
「ひょえ」
腰に手をかけ浮かせてきたと思ったら、そのまま体の向きを変えられて、彼の足の間に座らされる。
そして有言実行、後ろから腰に腕を回され、肩口に顔を寄せて抱きしめられた。
覆うようにかたくて広い身体が密着してくる。添い寝や満月の時に抱きしめられることはあるし、こういう抱き方だって初めてじゃない。でもあえて言わせて。
なにこの状況? どういうことなの?
「レイオン」
「あたたかいな」
安心したかのような息が首にかかる。それだけで身体がぞくぞくした。
落ち着こう。どうして彼がいきなりこんなことを言ってきたのか考えてみよう。腰に回った手に自身の手を重ねると思っていたよりも冷たかった。
「もしかして、寒かったの?」
避暑地の夜はかなり冷え込む。膝と身体にかける物を持ってきたけど、レイオンは些か軽装な気もした。
「君とこうして並んで座っていると、抱きしめてないと落ち着かない」
「なんで?」
並んで地べたに座るなんて初めてキスした時くらいじゃなくて?
しょっちゅうしてないよね? してたとしても抱きしめてないよね?
私のその気持ちが伝わったのか、レイオンは些か納得いかない雰囲気を出して囁いた。
「いつも君から抱きしめてくるくせに」
「はい?」
いつも? 何度も言うけど並んで地べたに座ったことは数えるほどしかしていない。
秘密基地ではよく並んで座っては私からフォーに抱き着きにいくけど、今隣にいるのはフォーじゃない。
え、なに? 強がってる? 寒いなんて認めたくない? 男性の沽券に関わるというやつ?
んー、それなら仕方ないのかな。納得いかない雰囲気でいる以上、追及したら可哀想な気もする。
「なら好きなだけどうぞ」
「ああ」
風邪でも引かれたら困るしね。満足そうだし、これでいいはずだ。
「ねえレイオン」
「どうした?」
二人きりなら聞いても問題ないだろうと踏んで思い切った。
「お義姉さんとこの子、どの子に継いでもらうの?」
「は?」
おっと、トーンが下がった。今する話題ではなかったかな。話題振った手前、続けるしかないけど。
「セリスィは長男だから伯爵家を継ぐでしょ? そしたらオリゴロゴスかパンタシア?」
背後でぐっと喉を鳴らす。
「…………継がせない」
「え?」
ひどく不機嫌な声音だった。少しだけ腕に力が入る。
「彼らは駄目だ」
「なんで?」
貴族院に入ってないから、彼らがどの程度素質があるかは分からない。義姉の子と考えるとしっかり領主やってくれそうな気がするけど、レイオンとしては認められない要素があるようだった。
「継ぐとなったら、家に来るんだろう?」
「まあ養子にするってなったら、一緒に住むと思うけど」
どちらでも仲良くできそうだから私はありかな。
当の領主様は到底認められそうにない喉の鳴らし方をした。
「嫌だ」
「そしたら外から?」
「……」
「レイオン?」
ぎゅっと抱いてくる腕に力が入る。
度々唸りながら、苦しそうに囁いた。
「君との時間を邪魔されたくない」
「え?」
義姉の子を引き取るにしても、全く別の場所から養子をとったとしても、私とレイオンだけの家族から変化してしまう。それが彼にとって許しがたい。
「君を独占したい」
「んん」
どうしよう。滅茶苦茶懐かれている。
私の視線が自分以外に向けられるのが嫌だとレイオンは加えて言った。
「焼きもち?」
「……そう、だろうな」
少なくとも今は考えたくないらしい。
きかなければよかった。話題振りとしては失敗かあ。ちょうど会えたから話盛り上がると思ったけど、思ってもみない解答がきて心臓に悪い。蛍鑑賞会に集中した方がよさそう。
「恐らくだが」
「うん」
「君との間に子供が出来ても、同じように思う」
「ふお」
ちょっともうやめようか、この話題!
たとえ偽りの結婚条件だったとしても、子作りの話はまだすべきじゃない。それは愛し愛される夫婦が話す話題だから!
「メーラ」
「な、なに? ちょっとごめん、少し時間ちょうだい」
えらい言葉を聞いてしまった。
いくら無表情の中に小さい機微が見えるようになったといえ、言葉にされると準備してない心にはダメージが大きすぎる。
私も彼と同じで嫉妬するだろうか? レイオンと私の間に子供がいてにこやかにしている図を想像した。あ、悪くない。いやいやいやちょっと待って、なにその悪くないって。
「メーラ?」
「ふわあい!」
色々すみません! と同時に謝ってしまう。
背後で見えないレイオンが首を傾げてる雰囲気がした。
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