辺境伯に嫁いだけど、自宅裸族なのを隠したい
17話 添い寝スタート(裸族レベルが足りない)
「服は脱がなくていいのか?」
「慣れない内はちょっと……」
添い寝習慣が始まった。
まさか夫婦の寝室を一緒に使うことになるなんて思いもしなかったし、添い寝するとも思ってなかった。
レイオンは前と同じ、シャツとパンツで軽装。こちらに入って前触れなくシャツを脱いだ。ソファにシャツを置いて動揺の欠片もなくベッドにやってくる。
そして私が服を着ているのを見ての一言。いや本当は脱ぎたいんだけど、さすがに誰かに見られてるのを実感しながら裸ですごすには私の裸族レベルが足りない。
「変わった夜着だな」
「聖女様ブランドです」
西の隣国シコフォーナクセーから取り寄せたものだ。シコフォーナクセーは現国王が違う世界へ一時的に飛んでしまう迷い人の経験があったのもあり、異世界の技術や商品を全面に押し出して発展を遂げている。
南の隣国パノキカト最後の聖女がシコフォーナクセー第三王子と結婚してからは、国王の後押しもありキャンプ用品に加えて女性のファッションも手掛けた。
私の着ている夜着もその一つで、軽くもふもふの素材で作りつつ、丈の短いショートパンツに同じ素材でてきた短めのキャミソールにカーディガンのオプション付き。なるたけ肌を見せる面積は多めで、初夜を彷彿とさせないものを選んだ結果がこれだ。
女性が集まるパジャマパーティー用で推してたけど使い方はそれぞれということで。
「裸でいられなくて苦しくないか?」
「いえ、大丈夫です」
どうやら私の裸族生活を心配してくれているようだった。この人、裸族に理解ありすぎでしょ。
早速二人ベッドで川の字になる。
微妙な心地だった。誰かが隣で寝るなんて子供の時に数える程しかなく、祖母が一緒に寝てくれた以外は誰ともこうして寝たことがない。朝ちゅんの時は驚きでそれどころじゃなかったけど、実際改めて添い寝となると違和感しかなかった。
「レイオンはベッドに誰かいても寝れるんですか?」
あ、聞き方間違った。単純に女連れ込んでる? みたいにもとれる。けどレイオンは気にせず平坦なままだった。
「幼少期は両親と寝たかもしれないが記憶にない。今までも一人で寝てたから、この前の君とのが初めてだ」
「そうですか」
「……君が隣で寝ていて、誰かと一緒に寝るのも悪くないと思った」
「え?」
横になって彼を見ると天蓋をぼんやり眺めている。
「あたたかくて柔らかくて心地が良かった。久しぶりに良く寝た気がした」
「はあ」
抱き枕としては及第点ということかな? なかなか恥ずかしい。
というか触ってたの。勿論体冷やさないようにだよね? いや考えるのよそう。
「レイオンはかたいですけど」
「え?」
「筋肉ついてて腕枕かたかったです」
「そうか」
柔らかくならないとか、と真面目に言うものだから思わず笑ってしまった。
不思議そうに視線を寄越した後、身体ごとこちらに向けてきた。
「国境警備である程度鍛えてないといけないんですし、かたいままでいいですよ」
「しかし君が心地良くないだろう」
「あー、まー、そうでもないですよ」
手を伸ばして彼の胸に触れてみた。やっぱりかたかった。
「レイオンらしいってことでいいじゃないですか」
「私らしい?」
「格好いいですよ、ってことです」
そこにきてはっと気づく。
許しも得ずにべたべた触ってはしたない。
手を引っ込めて謝った。
「許しも得ずにごめんなさい」
「構わない」
「え?」
彼は驚いたけど嫌ではないと言った。
驚いた素振りがどこにもなかったけどね? 表情とか反応とかもう少し欲しいかな?
まあ寛大な旦那様で良かった。淑女がやる話ではないもの。いやそもそも裸族が淑女としてやる話じゃないわね。
「メーラ」
「え?」
レイオンの手が伸びてきたたと思ったら引っ込んでしまった。
「大丈夫ですよ?」
「え?」
「触ろうとしたのかと思ったんですけど?」
「しかし、」
「レイオンなら大丈夫」
すると彼は無表情のまま無言を貫き、静かに手を伸ばした。
触れた先は私の髪。ベッドに投げ出されていたのを一房手に取り指を通すだけ。随分慎重だ。
「というか、名前」
無意識だったのか彼が首を傾げて衣擦れの音がする。
「メーラって」
呼んでくれたことを伝えると、なぜか謝られた。
この無表情からは読み取れないけど、名前で呼ばないでと言った記憶もないし、結婚の嘘条件にも名前については盛り込んでいない。全然問題ないはず。
「私もレイオンって呼んでるから、メーラって呼んでほしいです」
「いいのか」
「はい」
ついでに敬語もやめますねと伝えると彼は分かったと応える。本当に大丈夫だろうか。いまいち分かりづらい。
「んー、ではこれからよろしく」
「ああ」
初めての添い寝にしては上出来だろう。少しは打ち解けてきてるはずだ。
ここから裸族としてのイロハを学び合う。その為の一歩だ。
「んん」
安心したのか達成感からか眠気が這い上がってきた。
「眠いか」
「ん、そうですね。もう寝ましょうか」
「ああ」
その後は思いの外緊張もなく、するりと寝ることができた。
「慣れない内はちょっと……」
添い寝習慣が始まった。
まさか夫婦の寝室を一緒に使うことになるなんて思いもしなかったし、添い寝するとも思ってなかった。
レイオンは前と同じ、シャツとパンツで軽装。こちらに入って前触れなくシャツを脱いだ。ソファにシャツを置いて動揺の欠片もなくベッドにやってくる。
そして私が服を着ているのを見ての一言。いや本当は脱ぎたいんだけど、さすがに誰かに見られてるのを実感しながら裸ですごすには私の裸族レベルが足りない。
「変わった夜着だな」
「聖女様ブランドです」
西の隣国シコフォーナクセーから取り寄せたものだ。シコフォーナクセーは現国王が違う世界へ一時的に飛んでしまう迷い人の経験があったのもあり、異世界の技術や商品を全面に押し出して発展を遂げている。
南の隣国パノキカト最後の聖女がシコフォーナクセー第三王子と結婚してからは、国王の後押しもありキャンプ用品に加えて女性のファッションも手掛けた。
私の着ている夜着もその一つで、軽くもふもふの素材で作りつつ、丈の短いショートパンツに同じ素材でてきた短めのキャミソールにカーディガンのオプション付き。なるたけ肌を見せる面積は多めで、初夜を彷彿とさせないものを選んだ結果がこれだ。
女性が集まるパジャマパーティー用で推してたけど使い方はそれぞれということで。
「裸でいられなくて苦しくないか?」
「いえ、大丈夫です」
どうやら私の裸族生活を心配してくれているようだった。この人、裸族に理解ありすぎでしょ。
早速二人ベッドで川の字になる。
微妙な心地だった。誰かが隣で寝るなんて子供の時に数える程しかなく、祖母が一緒に寝てくれた以外は誰ともこうして寝たことがない。朝ちゅんの時は驚きでそれどころじゃなかったけど、実際改めて添い寝となると違和感しかなかった。
「レイオンはベッドに誰かいても寝れるんですか?」
あ、聞き方間違った。単純に女連れ込んでる? みたいにもとれる。けどレイオンは気にせず平坦なままだった。
「幼少期は両親と寝たかもしれないが記憶にない。今までも一人で寝てたから、この前の君とのが初めてだ」
「そうですか」
「……君が隣で寝ていて、誰かと一緒に寝るのも悪くないと思った」
「え?」
横になって彼を見ると天蓋をぼんやり眺めている。
「あたたかくて柔らかくて心地が良かった。久しぶりに良く寝た気がした」
「はあ」
抱き枕としては及第点ということかな? なかなか恥ずかしい。
というか触ってたの。勿論体冷やさないようにだよね? いや考えるのよそう。
「レイオンはかたいですけど」
「え?」
「筋肉ついてて腕枕かたかったです」
「そうか」
柔らかくならないとか、と真面目に言うものだから思わず笑ってしまった。
不思議そうに視線を寄越した後、身体ごとこちらに向けてきた。
「国境警備である程度鍛えてないといけないんですし、かたいままでいいですよ」
「しかし君が心地良くないだろう」
「あー、まー、そうでもないですよ」
手を伸ばして彼の胸に触れてみた。やっぱりかたかった。
「レイオンらしいってことでいいじゃないですか」
「私らしい?」
「格好いいですよ、ってことです」
そこにきてはっと気づく。
許しも得ずにべたべた触ってはしたない。
手を引っ込めて謝った。
「許しも得ずにごめんなさい」
「構わない」
「え?」
彼は驚いたけど嫌ではないと言った。
驚いた素振りがどこにもなかったけどね? 表情とか反応とかもう少し欲しいかな?
まあ寛大な旦那様で良かった。淑女がやる話ではないもの。いやそもそも裸族が淑女としてやる話じゃないわね。
「メーラ」
「え?」
レイオンの手が伸びてきたたと思ったら引っ込んでしまった。
「大丈夫ですよ?」
「え?」
「触ろうとしたのかと思ったんですけど?」
「しかし、」
「レイオンなら大丈夫」
すると彼は無表情のまま無言を貫き、静かに手を伸ばした。
触れた先は私の髪。ベッドに投げ出されていたのを一房手に取り指を通すだけ。随分慎重だ。
「というか、名前」
無意識だったのか彼が首を傾げて衣擦れの音がする。
「メーラって」
呼んでくれたことを伝えると、なぜか謝られた。
この無表情からは読み取れないけど、名前で呼ばないでと言った記憶もないし、結婚の嘘条件にも名前については盛り込んでいない。全然問題ないはず。
「私もレイオンって呼んでるから、メーラって呼んでほしいです」
「いいのか」
「はい」
ついでに敬語もやめますねと伝えると彼は分かったと応える。本当に大丈夫だろうか。いまいち分かりづらい。
「んー、ではこれからよろしく」
「ああ」
初めての添い寝にしては上出来だろう。少しは打ち解けてきてるはずだ。
ここから裸族としてのイロハを学び合う。その為の一歩だ。
「んん」
安心したのか達成感からか眠気が這い上がってきた。
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