堕ちる雫
episode.0 雨が頬を撫でる
ザァァァァァァ…
憎い、憎い、憎い。
小さいながらに感じたその思いは留まることを知らなかった。
奴らは去った。冷たくなった両親を抱え、泣き叫ぶ。その大声は家の中にこだまし奴らには届かない。
辺りには血の匂いと雨の匂いが充満していた…
知人が不慮の事故で亡くなったと知らせを受け、葬儀の場へと向かった。
葬儀の場は騒がしく、人が亡くなったとは思えないほどであった。
「酷い有様だったらしいわ」
「本当子供一人残して〜」
「それでこの子は誰が引き取るんだ?」
「私は娘も息子もいるから子持ちでない姉さんが引き取ったら?」
「嫌よ!この子の目怖いもの!」
「確かに子供のする目じゃないよね」
「この子が殺したんじゃない?」
(騒ぎの原因はあの子か…)
騒ぎの中心には一人の男の子が居た。大勢の大人たちに囲まれ、大人たちは誰がこの子を引き取るのかと、その事について話していた。
(親が死んだ子供の前で嫌な話を…)
ふと少年と目が合う。いや、目が合ったのではない。その目に私が引き寄せられた。
彼の目には憎しみと言うドス黒い感情が渦巻き、暗く、黒く、とても子供のする目とは思えない物であったからだ。
(この子…まさか…見たのか!?)
この子の両親は損傷が酷くとても見せられるものではなかった。故に直ぐに火葬された。それは不慮の事故などではない。それはなんらかの生物による食事行為。
(普通なら憎悪ではなく恐怖の目になる物をこの子は…)
すぐにその子に近寄る。周りの大人たちは騒めき出す。
「なんだ君は!?」
「私はこの子の親の友達です。この子は私が引き取りましょう。その方が皆様何かと都合がよろしいのではと」
大人たちはそれならと面倒事を押し付けるように退散していく。人情なんてものは無い。元々彼の両親は親戚に好かれておらず彼もまたその親の子であるが故、好かれてはいなかった。
「子供の目の前で腫れ物扱いとは心底呆れる。本当にあの人と血の繋がった人間なのかな?」
「おじさん…?」
「ん、どうしたんだ?」
「おじさんはあの化け物について知ってる?」
(やっぱりか…)
それは異形、人ならざるもの。人を喰らい、知識を蓄え、強くなる。普通の人間なら太刀打ちすることすら叶わない化け物。
彼の目線に合わせて屈みやはりと思いながら答える。
「うん。知ってるよ」
短く、簡潔に。彼はそれ以上の言葉を望まないだろう。何故ならこの後彼から私に一つの提案をしてくるはずだから。それは…
「俺に戦い方を教えて」
まだ小さなその手に力が籠る。奴らが人を襲うところを初めて目の当たりにし、奴らが人を喰らうところを生で感じた。ならば、話は早い。彼にはその資格がある。
「言っておくけど私は少し厳しいよ?」
そう言い頷くその子の手を取る。手はまだ小さく彼がまだ子供だと言うことを改めて感じさせる。
「それじゃあ今日から私たちは家族だ。よろしくね、えっ〜と〜名前なんだっけ?」
(やっべ、この子の両親に名前聞くの忘れてた…)
「いと…夜屍魁斗」
「魁斗か、これからよろしくな」
歩む先は地獄、でも彼の成長次第で何通りもの道になることを知っている。故に彼に影響を与える身近な人間、この男の匙加減が最も大事である。
そして、その頃から10年の年月が過ぎる…
憎い、憎い、憎い。
小さいながらに感じたその思いは留まることを知らなかった。
奴らは去った。冷たくなった両親を抱え、泣き叫ぶ。その大声は家の中にこだまし奴らには届かない。
辺りには血の匂いと雨の匂いが充満していた…
知人が不慮の事故で亡くなったと知らせを受け、葬儀の場へと向かった。
葬儀の場は騒がしく、人が亡くなったとは思えないほどであった。
「酷い有様だったらしいわ」
「本当子供一人残して〜」
「それでこの子は誰が引き取るんだ?」
「私は娘も息子もいるから子持ちでない姉さんが引き取ったら?」
「嫌よ!この子の目怖いもの!」
「確かに子供のする目じゃないよね」
「この子が殺したんじゃない?」
(騒ぎの原因はあの子か…)
騒ぎの中心には一人の男の子が居た。大勢の大人たちに囲まれ、大人たちは誰がこの子を引き取るのかと、その事について話していた。
(親が死んだ子供の前で嫌な話を…)
ふと少年と目が合う。いや、目が合ったのではない。その目に私が引き寄せられた。
彼の目には憎しみと言うドス黒い感情が渦巻き、暗く、黒く、とても子供のする目とは思えない物であったからだ。
(この子…まさか…見たのか!?)
この子の両親は損傷が酷くとても見せられるものではなかった。故に直ぐに火葬された。それは不慮の事故などではない。それはなんらかの生物による食事行為。
(普通なら憎悪ではなく恐怖の目になる物をこの子は…)
すぐにその子に近寄る。周りの大人たちは騒めき出す。
「なんだ君は!?」
「私はこの子の親の友達です。この子は私が引き取りましょう。その方が皆様何かと都合がよろしいのではと」
大人たちはそれならと面倒事を押し付けるように退散していく。人情なんてものは無い。元々彼の両親は親戚に好かれておらず彼もまたその親の子であるが故、好かれてはいなかった。
「子供の目の前で腫れ物扱いとは心底呆れる。本当にあの人と血の繋がった人間なのかな?」
「おじさん…?」
「ん、どうしたんだ?」
「おじさんはあの化け物について知ってる?」
(やっぱりか…)
それは異形、人ならざるもの。人を喰らい、知識を蓄え、強くなる。普通の人間なら太刀打ちすることすら叶わない化け物。
彼の目線に合わせて屈みやはりと思いながら答える。
「うん。知ってるよ」
短く、簡潔に。彼はそれ以上の言葉を望まないだろう。何故ならこの後彼から私に一つの提案をしてくるはずだから。それは…
「俺に戦い方を教えて」
まだ小さなその手に力が籠る。奴らが人を襲うところを初めて目の当たりにし、奴らが人を喰らうところを生で感じた。ならば、話は早い。彼にはその資格がある。
「言っておくけど私は少し厳しいよ?」
そう言い頷くその子の手を取る。手はまだ小さく彼がまだ子供だと言うことを改めて感じさせる。
「それじゃあ今日から私たちは家族だ。よろしくね、えっ〜と〜名前なんだっけ?」
(やっべ、この子の両親に名前聞くの忘れてた…)
「いと…夜屍魁斗」
「魁斗か、これからよろしくな」
歩む先は地獄、でも彼の成長次第で何通りもの道になることを知っている。故に彼に影響を与える身近な人間、この男の匙加減が最も大事である。
そして、その頃から10年の年月が過ぎる…
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