乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

158話 イザベラの嫌がらせ

 イザベラがアリシアを罵倒した。
 エドワード王子と談笑していたことを咎められたアリシアは、顔を青ざめさせる。
 イザベラの表情には悪意しか感じられなかった。

「……ごめんなさい」

 アリシアはその謝罪の言葉を述べると、逃げるようにその場を離れた。
 階段を下りていくその足取りは重く、今にも倒れてしまいそうだ。
 イザベラはそんな彼女を目で追う。

(ふんっ。ただ去るだけで許されるはずがないでしょう? 報いを与えてあげますわ)

 彼女はアリシアに勘付かれないように、魔力を練る。
 そして――

「きゃあっ!?」

 ドンガラガッシャーン!
 階段から足を滑らせたアリシアは、盛大に転倒してしまった。
 イザベラはその様子を見てほくそ笑む。
 アリシアは痛みに耐えながらも立ち上がろうとするが、上手く身体に力が入らないようであった。

「あら、大丈夫かしら?」

 イザベラは心配そうな表情を作り、アリシアに声をかけた。

「だ、だいじょうぶです……」

 アリシアは弱々しく返事をする。
 その顔色は真っ白で、明らかに痛みに堪えている様子だ。

(ふふっ、いい気味だわ)

 イザベラは嗜虐的な笑みを浮かべると、再び魔力を練り始める。

「私が治療して差し上げましょう。――【ダーク・ヒール】」

「へ? あ、ああああぁ! 痛い、痛いぃ!」

 イザベラが魔法を唱えると、アリシアは絶叫を上げる。
 傷口を焼かれるような激痛に、アリシアは悶絶していた。

「そこで何をしている!」

 いつの間にか近くに来ていたエドワードが、イザベラに向かって声をかける。

「殿下……」

 イザベラは驚きつつも、冷静さを装って答えることにしたのだった。

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