乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

145話 高飛車で傲慢

「所要時間三秒、打ち込み魔法数は一発……。も、文句無しの最高成績です」

「ふん、当然ですわね」

 イザベラは満足そうな笑みを浮かべる。

「素晴らしい! さすがはイザベラ殿です!!」

「おほほ。まぁ、オスカー様も悪くはありませんでしたわよ。氷魔法に限定すれば、私より優秀かも知れませんわね」

「ありがとうございます。ですが、やはり私はまだまだです。イザベラ殿のように初級の魔法でゴーレムを倒すなど、私にはとてもできません。もちろん、私の得意魔法である氷魔法でも……」

「ふふ。謙遜なさらずとも良いのですわよ? オスカー様なら、数年以内には可能になりますから」

「ははは、これは手厳しい」

 オスカーは苦笑いをした。
 数年以内には、イザベラと同じことが可能になる――。
 逆に言えば、この先の一ヶ月や二ヶ月程度では、追いつけないということでもある。
 オスカーはそのことを理解していた。

(だが、それでいい。今は少しでも長く……彼女の側にいたい)

 オスカーは心の中で呟く。
 そして、彼の隣に立つ美しい令嬢を、愛おしむような目で見つめた。
 イザベラ・アディントン。
 思わず見惚れるほどの美貌。
 千年に一人とも言われるレベルの魔法の才能。
 長年難病に指定されていた魔乏病の特効薬を幼少期に開発したり、領地経営に行き詰まっていたシルフォード伯爵領に有益な助言をしたりするなど、実績も十分。
 座学、マナー、ダンスなども安定して高いレベルにあり、主席で王立学園に入学して以降、常に学年首位を独走している。
 まさに完璧超人と呼ぶに相応しい人物だ。

(どうしてでしょうか……。何か、以前とは雰囲気が激変してしまったような気もします……。しかし、私の感性も変わってしまったのか、高飛車で傲慢な彼女もまた魅力的に感じてしまう……)

 オスカーは、自身やイザベラの異変に勘づいていた。
 だが、あえてそのことには触れずに、今日も彼女との時間を過ごすことを選択した。
 否、闇の瘴気に侵された時点で、もう引き返せないところまで来てしまっていたのかも知れない。

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